日本語教員試験は3つの試験で構成されている
日本語教員試験は基礎試験と応用試験があります。また、応用試験は聴解と読解の2つに分かれています。つまり、日本語教員試験は、基礎試験、応用試験(聴解)、応用試験(読解)の3つ試験で構成されているということになります。
また、サンプル問題(https://www.mext.go.jp/content/20240524-mxt_nihongo02-000036014_2.pdf)が公開されていますので、これを見ると、大体どのような問題が出題されるかのイメージがつかめると思います。
これらの情報をもとに対策を考えてみたいと思います。
基礎試験はテキストの内容を漏れなく理解する
【基礎試験の基礎情報】
試験時間:120分
出題数:100問
合格基準:必須の教育内容で定められた5区分において、各区分で6割の得点があり、かつ総合得点で8割の得点があること。
出題内容:基礎試験では、日本語教育を行うために必要となる基礎的な知識及び技能を区分ごとに出題する。
区分ごとの出題割合: 「社会・文化・地域(約1~2割)」「言語と社会(約1割)」「言語と心理(約1割)」「言語と教育(約3~4割)」「言語(約3割)」
基礎試験でポイントになるのは、「合格基準の高さ」です。どのような試験でもそうですが、初めて受ける試験で8割の得点を取るためには、試験の出題内容を完全に理解しておく必要があります。かつ、各区分で6割以上の点数を取らなければならないことになっていますので、全分野漏れなく準備を進めることが必要です。
一方、サンプル問題を見る限り、問題自体は決して難しくはないように思います。ほとんどが、一般的なテキストに書かれている内容から出題されています。
ここから考えられるのは、皆さんがお持ちのテキストを中心とした対策です。テキストに出ている用語・内容を漏れなく理解すること。ノートにまとめる、単語帳を作るなど、学習スタイルはさまざまでいいと思いますが、最終的にテキストの内容を全て理解できたか(覚えられたか)どうかを自己チェックし、忘れていたものは再度確認するようにしましょう。これを何度も繰り返し、試験日までに知識を確実なものにしておくのがお勧めです。
応用試験(聴解)は形式に注意
【応用試験(聴解)の基礎情報】
試験時間:50分
出題数:50問
合格基準:(応用試験の)総合得点で6割の得点があること。
出題内容:応用試験の一部は聴解問題とし、日本語学習者の発話や教室での教師とのやりとりなどの音声を用いて、より実際の教育実践に即した問題を出題し、問題解決能力や現場対応能力等を測定する。
応用試験(聴解)は、今回の日本語教員試験において注意が必要なところです。
日本語教員試験は日本語教育能力検定試験(以下、検定試験)と比べられることが多く、応用試験(聴解)は検定試験の試験Ⅱと比較されますが、検定試験より問題数が10問増え、試験時間が20分長くなっています。単純に考えれば、受験者の負担が増えていると言っていいでしょう。
それに加え、サンプル問題を見る限り、試験の形式が日本語教育能力検定試験とは異なる部分があるようです。もちろん、全く異なる問題が出題されるわけではありませんが、受験される方は試験当日に試験問題を目にしたときに、少々戸惑われるかもしれません。
応用試験の出題内容では「教育実践」という文言が強調されています。教室内外での学習者とのやりとり、そこでの誤用訂正やフィードバックなどの問題が多く出題されるかもしれません。音声学の知識に加え、「教育実践」を意識した準備を進め、どのような形式の問題が出題されても自信を持って答えられるようにしておきましょう。
応用試験(読解)は問題を数多く解く
【応用試験(読解)の基礎情報】
試験時間:100分
出題数:60問
合格基準:(応用試験の)総合得点で6割の得点があること。
出題内容:応用試験では、基礎的な知識及び技能を活用した問題解決能力を測定するため、教育実践と関連させて出題することとする。
応用試験(読解)は検定試験の試験Ⅲと比較されますが、検定試験より問題数が減り、かつ記述式問題がありません。ただし注意が必要なのは、出題内容です。応用試験(聴解)と同様、「教育実践」という文言が強調されています。教室内外での学習者とのやりとり、授業資料などをもとにした授業の振り返り、職員室での教師同士のやりとりなどの問題が予想されます。
こういった問題は現職の先生方には有利かと思われます。現職の先生方は日頃の授業実践の中で、「こういった授業の進め方でうまくいった」「こう説明をしたら学習者からこんな質問が出た」など、さまざまな経験値をお持ちですので、そこから答えを導くことが可能な問題も多いと思います。
一方、まだ日本語を教えた経験が少ない、あるいは全くないという方にとっては、実際の日本語の授業の流れがイメージしにくいかもしれません。そういった方にお勧めしたいのは、教育実践に関わる問題をたくさん解くことです。問題を解く中で、模擬的にではありますが、さまざまなタイプの授業実践に触れることができますし、選択肢の中から正解を選び、解説を読むことで、授業に関わる知識が自然と蓄積されていくと思います。もちろんそこで、知識があやふやなところがあれば、テキストに戻って確認するようにしましょう。
受験される方の中には、日頃の日本語の授業準備やお仕事、家事などでお忙しい日々をお過ごしの方も多いと思います。試験日までの残り日数を確認しながら、計画的に試験準備を進めていただければと存じます。皆さんの合格を、心からお祈りしています。
執筆:新城宏治
株式会社エンガワ代表取締役。日本語教育に関する情報発信、日本語教材やコンテンツの開発・編集制作などを通して、日本語を含めた日本の魅力を世界に伝えたいと思っている。
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