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日本語能力試験と国際交流基金日本語基礎テストの応募者・受験者が大幅増加
2024年8月、国際交流基金から20247月の日本語能力試験の実施概要が発表されました。それによれば、日本語能力試験の海外の応募者が7月の試験としては過去最多、国内の応募者も過去最多、さらに全体の応募者数は1回の試験としては過去最多になったようです。また、同じく国際交流基金の日本語基礎試験の受験者も昨年から大幅に増加しています。具体的な数値を見ながら、その背景を探ります。

20247月の日本語能力試験の応募者は約80万人

20247月の日本語能力試験の応募者は以下の通りです(2024年7月4日時点の速報値)。

海外:506,158人(対前年7月試験比4.5%増)

国内:287,558人(同34.5%増)

合計:793,716人(同13.7%増)

また、海外では次の国・地域で応募者が大きく変動しています。

国(地域)

1位:中国(香港・マカオを含む):172,442人(同3.1%増)
2位:ミャンマー:84,291人(同-18.0%減)
3位:韓国:66,136人(同38.5%増)

地域

1位:東アジア:277,887人(同8.7%増)
2位:東南アジア:166,988人(同-4.8%減)
3位:南アジア:45,461人(同11.4%増)

レベル別では、国内は全てのレベルにおいて応募者が増加しました。増加率だけを見ると、次のようになります。N1(同8.2%増)、N2(同32.7%増)、N3(同41.1%増)、N4(同57.8%増)、N5(同19.7%増)。

海外ではN1とN4の応募者が若干減少しました。増減率だけを見ると、次のようになります。N1(同-3.0%減)、N2(同11.5%増)、N3(同22.5%増)、N4(同-10.2%減)、N5(同7.0%増)。

応募者数増減の背景

次に応募者数増減の背景を見ていきます。まず、減少している国・地域です。

国(地域)では、ミャンマーが大きく減少しました。東南アジアが減少しているのも、このミャンマーの減少分が大きく影響していると考えられます。

ミャンマーは昨年2023年7月のレベル別応募者数ではN467,745人、実にミャンマー全体の応募者の約66%N4が占めており、ミャンマーの受験者数の減少は、N4の受験者全体の減少にも影響していることが伺えます。

次に増加している国・地域を見てみましょう。

中国、韓国が増加していますが、特に韓国の増加率が著しく高くなっています。

韓国の応募者数増加の背景には、2022年以降、韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領と、日本の岸田首相との間で、日韓関係の改善が進められたこともあると思われます。一時期、韓国では中国語を学ぶ人が急増しましたが、政治・経済的な両国間の関係の冷え込みなどもあり、中国語学習者数は減少傾向にあり、代わって日本語学習者が増えつつあるようです。

国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)の受験者の急増

JFT-Basicは、同じく国際交流基金が国内外で実施している試験で、在留資格「特定技能1号」を取得するために合格が必要な試験です。

実は、日本語能力試験のN4レベルも「特定技能1号」の申請に使うことが可能です。ただし、日本語能力試験が年に2回、特定の試験日に実施され、試験結果がわかるまでに時間がかかるのに対してJFT-Basicは年6回、国ごとに設定されるテスト期間に実施され、CBT方式であることから受験日当日に結果がわかり、受験者にとっては非常に使い勝手のいい試験になっています。

2019年の開始以来、「特定技能1号」の在留資格で日本に滞在する外国人は増え続けていますが、その前提の一つになるJFT-Basicの受験者も飛躍的に増えています。

結果が公表されている、2023年5~8月と2024年の同期間の受験者数を、受験者数の多い国・地域について比較してみると、次のようになっています。

国・地域:2023年5~8月→2024年5~8月

インドネシア:9,895人→20,811人(対前年110.3%増)

ミャンマー:7,376人→11,359人(対前年54.0%増)

ネパール:1,508人→6,192人(対前年310.6%増) ※ネパールは202378月に試験が行われなかった特殊要因あり

日本:2,937人→4,090人(対前年39.3%増)

フィリピン:2,220人→3,542人(対前年59.5%増)

スリランカ:1,971人→2,813人(対前年42.7%増)

インド:241人→1,039人(対前年331.1%増)

軒並み1.5倍以上、国・地域によっては数倍以上に増えているところも少なくありません。

ここでミャンマーに注目してみると、日本語能力試験が行われた7月前後の4カ月間に、JFT-Basicの受験者が昨年同時期より実に4,000人近く増加していることがわかりました。

日本語能力試験か日本語基礎テストかを選択する際には、会場、日程、受験料などのさまざまな要因が受験者に影響を与えると思います。日本語能力試験を受験する層が日本語基礎テストに流れたということも想像できるかもしれません。

インドネシアの日本語基礎テスト受験者の急増

今回データを見ていて、インドネシアの日本語基礎テストの受験者が急増していることに改めて驚かされました。

出入国在留管理庁から公表されている「特定技能在留外国人数」の集計によれば、2024年6月現在、「特定技能1号」の外国人数は次のようになっています。
1位:ベトナム(126,740人)
2位:インドネシア(44,298人)
3位:フィリピン(25,303人)
4位:ミャンマー(19,058人)
5位:中国(15,660人)
(以下略)
合計:251,594人

「特定技能1号」取得の前提となるJFT-Basicの受験者数は、今後、インドネシアからの「特定技能1号」での来日者の増加を予兆しているかもしれません。

執筆:新城宏治

株式会社エンガワ代表取締役。日本語教育に関する情報発信、日本語教材やコンテンツの開発・編集制作などを通して、日本語を含めた日本の魅力を世界に伝えたいと思っている。

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