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学習者数はコロナ前の水準へー「令和5年度 国内の日本語教育の概要」を読む
毎年恒例の「国内の日本語教育の概要」の令和5年度版が発表されました。今年からは、日本語教育の所轄の移管により、文化庁ではなく文部科学省のサイトにアップされています。日本国内の日本語教育の現状を確認しておきましょう。

学習者数は回復、機関数・教師数は大きな変動なし

本調査は2023年11月1日現在で実施した「日本語教育実態調査」の結果になります。国内の日本語教育の状況を把握する上での基本的な資料になります。

まず、日本語学習者数、日本語教師等数、機関・施設等数は、以下のようになっています。(  )は昨年度に対する増加(減少)率です。

日本語学習者数:263,170人(+19.73%)

日本語教師数:46,257人(+5.06%)

機関・施設数:2,727機関・施設(-1.34%)

日本語教師等数と機関・施設数がほぼ変わっていないのに対して、日本語学習者は約2割増えており、その増加が目立ちます。

日本語学習者数はこれまでいちばん多かったのはコロナ前の令和元年度で、277,857人でした。今回の日本語学習者数は、この時に次ぐ過去2番目の多さです。機関・施設等数が変わっていないということは、一機関・施設、教師一人あたりの学習者数も増えていることになります。

法務省告示機関(いわゆる日本語学校)に絞って昨年度と比較してみると、以下のようになります。

告示機関

日本語学習者数:95,875人→122,001人(+27.25%)

日本語教師数:12,702人→13,143人(+3.47%

機関・施設数:697機関・施設→634機関・施設(-9.04%)

※昨年度の日本語教師数は「令和4年度 国内の日本語教育の概要」より

機関・施設数は約1割減っていながら日本語学習者数は27%も増加していることから、各学校の充足率がかなり上昇していることが推測されます。また、日本語教師数の増加が日本語学習者数の増加に追い付いていないことから、日本語教師不足の現状が見て取れます。

ネパール、ミャンマー、スリランカの学習者が急増

日本語学習者を出身地別に見ると、ほぼ全ての国・地域で増加していますが、ここでは上位10カ国・地域について、昨年度と比較してみます。(  )は昨年度に対する増加率です。

1 中国:76,425人(+14.0%)

2 ネパール:37,348人(+45.2%)

3 ベトナム:33,971人(+7.3%)

4 ミャンマー:10,586人(+113.7%)

5 フィリピン:10,227人(+27.4%)

6 インドネシア:8,845人(+20.1%)

7 スリランカ:8,315人(+65.7%)

8 韓国:6,847人(+2.6%)

9 台湾:6,165人(+33.4%)

10 ブラジル:5,593人(+27.4%)

昨年度と比べて、1位中国は変わりませんが、昨年度2位のベトナムが3位、3位のネパールが2位と、順位が入れ替わっています。また、昨年9位だったミャンマーが4位になっています。全体的に中国を除いては非漢字圏からの学習者が増えていることがわかります。また、一時期、日本語学校の学生の多くを占めていたベトナムは、その伸びが鈍化していることがわかります。

日本語教師等の養成・研修の受講者は増加

最後に、日本語教師等の養成・研修について、見てみましょう。

受講者数:31,019人(+8.3%)

担当教師数:5,677人(+15.4%)

機関・施設数:726機関・施設(-2.0%)

機関・施設数は微減していますが、受講者や教師は増えています。

地方公共団体・教育委員会と国際交流協会に絞って昨年度と比較してみると、以下のようになります。

地方公共団体・教育委員会

受講者数:4,517人→5,398人(+19.5%)

担当教師数:568人→796人(+40.1%)

機関・施設数:163機関・施設→161機関・施設(-1.2%)

国際交流協会

受講者数:4,917人→5,267人(+7.1%)

担当教師数:379人→823人(+117.2%)

機関・施設数:153機関・施設→147機関・施設(-3.9%)

日本語教師になるために養成講座に通ったり研修を受けていたりする人は、地方公共団体・教育委員会や国際交流協会で大きく増えています。また、その担当教師数が大きく増えていることがわかります。

「令和5年度 国内の日本語教育の概要」

https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/nihongokyoiku_jittai/kekka/mext_00002.htm

執筆:新城宏治

株式会社エンガワ代表取締役。日本語教育に関する情報発信、日本語教材やコンテンツの開発・編集制作などを通して、日本語を含めた日本の魅力を世界に伝えたいと思っている。

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