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日本語指導が必要な子どもたちの最新状況

 

令和5年度の「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」および「外国人の子供の就学状況等調査」がまとまり、文部科学省から発表されました。子どもたちを巡る日本語教育の状況を確認しておきます。

日本語指導が必要な子どもたちは約7万人に

「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」は文部科学省が隔年で行っている調査で、公立小・中・高等学校等における日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等を教育委員会を通して調査しているものです。調査項目は、以下の通りです。

(1)日本語指導が必要な児童生徒の在籍状況

(2)日本語指導が必要な児童生徒等の判断基準等

(3)日本語指導の状況

(4)日本語指導における「特別の教育課程」の実施状況

(5)日本語指導の内容

(6)日本語指導が必要な生徒の進路状況

調査によって明らかになったポイントをまとめます。

日本語指導が必要な児童生徒数は69,123人(前回調査から18.6%増)、うち外国籍の児童生徒数は57,718人(同21.2%増) 、日本国籍の児童生徒数は11,405人(同6.7%増)と、いずれも増大しました。 日本語指導が必要な児童生徒数はここ10年ほどの間は毎年増え続けていますが、特に今回の18.6%増はこれまでにない伸びでした(前回は14.0%増、前々回は16.3%増)。

日本語指導が必要な児童生徒の言語別在籍状況は、ポルトガル語が20.8%で最も多く、次に中国語の20.6%となっています。 ポルトガル語が最多という傾向は以前から変わりませんが、中国語がかなり肉薄している状況がわかります。

高校でも「特別の教育課程」が導入されたが……

次に指導の状況ですが、日本語指導が必要な外国籍の児童生徒のうち、学校において「特別な配慮に基づく指導」を受けている人数は52,176人(90.4%)でした。また、「特別な配慮に基づく指導」を受けている児童生徒に占める「特別の教育課程」による日本語指導を受けている人数および割合は、義務教育段階では外国籍の児童生徒が37,500 人(77.7%)、日本国籍の児童生徒が6,809 人(72.5%)でした。また、令和5年度から高等学校においても「特別の教育課程」が認められることになりましたが、こちらは外国籍の生徒が215人(5.5%)、日本国籍の生徒が30人(6.2%)と、かなり低い数値になりました。

ちなみに「特別な配慮に基づく指導」とは、在籍学級や放課後を含む学校で行われている何らかの日本語指導のことを指し、児童・生徒の教材にルビを振ることや、在籍学級でのボランティアによる入り込み指導なども含まれます。

最後に進路状況ですが、 日本語指導が必要な中学生等の高等学校等への進学率は90.3%(前回は89.9%)、日本語指導が必要な高校生等の中退率は8.5%(前回は 6.7%)、大学等への進学率は46.6%(前回は51.8%)となっています。

不就学の可能性のある子どもは約8,600

「外国人の子供の就学状況等調査」は文部科学省が毎年行っている調査で、学齢相当の外国人の子どもの就学状況や地方公共団体(教育委員会を含む)における就学促進の取組状況を把握するための調査です。

ここでは住民基本台帳に登録されている人数と、市町村教育委員会から報告のあった人数を比較することで、学校に通っていない不就学の可能性のある子どもの人数がわかります。

それによれば、令和5年度の住民基本台帳における小学校相当・中学校相当の合計人数は約15万人、その中で「不就学」が970人、「就学状況把握できず」が7,199人、参考として住民基本台帳と市町村教育委員会から報告のあった人数の差(つまり教育委員会で把握できていない人数)が432人、合わせて8,601人が「不就学の可能性のある子どもの人数」として報告されました。ちなみに、令和4年度のこの数値は8,183人で、前回より「不就学の可能性のある子どもの人数」は増えていることがわかります。

今後に向けて

2019年に成立した日本語教育の基本法ともいうべき「日本語教育の推進に関する法律(日本語教育推進法)」では、基本理念として「外国人等に対し、その希望、置かれている状況及び能力に応じた日本語教育を受ける機会の最大限の確保(第3条)」が謳われ、基本的施策として、その冒頭に「国は、外国人等である幼児、児童、生徒等に対する生活に必要な日本語及び教科の指導等の充実その他の日本語教育の充実を図るため、これらの指導等の充実を可能とする教員等の配置に係る制度の整備、教員等の養成及び研修の充実、就学の支援その他の必要な施策を講じるものとする(第12条)」と、子どもの日本語教育の充実を挙げています。

崇高な理念の下、文部科学省および市町村教育委員会により実態把握はかなり進んできているように思えます。そして、各学校や先生方が全国各地でさまざまな奮闘努力をされていることは想像に難くありません。しかし、如何せん増え続ける日本語指導が必要な子どもたちの数に、現場の対応が追い付いていないようにも見えます。

国は2024年に特定技能の受け入れ枠を「5年間で82万人」とする閣議決定を行った上で、改正入管難民法を成立させて、家族呼び寄せが可能になる特定技能2号への道筋を作りました。このようなことを背景に、今後ますます日本語指導が必要な子どもたちは増えていくでしょう。「教員等の配置に係る制度の整備」「教員等の養成及び研修の充実」「就学の支援その他の必要な施策」が、今後具体的にどのように講じられるのか、注目していきたいと思います。

執筆:新城宏治

株式会社エンガワ代表取締役。日本語教育に関する情報発信、日本語教材やコンテンツの開発・編集制作などを通して、日本語を含めた日本の魅力を世界に伝えたいと思っている。

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