日本語を教えるのは大好きだけど、自分でも新しい外国語を勉強してみたいとなんとなく考えている皆さま、春になって各国から新入生が到着する季節です。忙しい授業と業務のスキマ時間にあいさつや簡単なフレーズだけでも覚えてみませんか。学習者に「えっ、先生、〇〇語わかるの?」と、親しみを持ってもらえるかもしれません。今回の記事では、英語、中国語、韓国語以外の、気になる外国語4つをまとめてみました。
①インドネシア語
インドネシア語の強みは何と言っても母語話者の数です。インドネシアの人口は約2.7億人で、世界第4位。そして、アジア言語の中でも学びやすいものの一つだと言われています。文字はアルファベットで、日本人にとって難しい発音は少なく、だいたいローマ字読みで通じます。文法もシンプルです。
日本語としても通じるインドネシア語で最も有名なものはやはり「オランウータン」でしょうか。「オラン(orang=人)」、「ウータン(hutan=森)」で、「森の人」という意味です。ちなみに「日本人」は「オランジュパン(orang Jepang)」です。
もうひとつご紹介すると、旅行雑誌の名前で耳になじんだ「ジャラン」もインドネシア語です。「ジャラン」は「通り」という名詞で、繰り返すことによって「旅行する、ぶらぶらする」という意味になります。日常的には特に何を買うわけでもなくショッピングモールなどをぶらぶら見て回ることを「ジャランジャラン」するということが多いようです。
中等教育で日本語が取り入れられているため、日本語学習者が多く、アニメなどの人気から日本留学したいというインドネシア人は以前からたくさんいましたが、最近は日本で働くインドネシア人の増加も注目されています。EPAによって2008年からインドネシア人看護師・介護士の受け入れが始まり、特定技能「介護」の在留資格で来日する人も多く、インドネシア人スタッフが活躍する施設も各地で目立ってきています。
『改訂版 キクタンインドネシア語【入門編】』アルク
阿良田麻里子著 2,200円(税込)
②ベトナム語
現在、在留外国人の中で中国に次いで2番目に多いのがベトナムです。ベトナム人というと技能実習を連想する人が多いかもしれませんが、それ以外にも留学、特定技能、高度人材などさまざまな形で日本に住んでいる人がいます。「教室の半分くらいはベトナム人」という日本語学校の話も時々聞きますね。
旅行先としても人気があることから、ベトナム語はアジア言語の中では日本人によく学習されている言語だと言えます。ただ、「発音が難しい」とあきらめる人もいるようです。主な原因は中国語の4つでも大変だという声調がベトナム語には6つあること。それだけに日本語学校の教師募集で「ベトナム語が少しできます」というのはアピールポイントになるかもしれません。それに、発音が難しいとは言っても、「シンチャオ!(こんにちは!)」「カムオン(ありがとう)」などの短い言葉であれば通じないということはありません。まずは耳で聞いたとおりに繰り返してみることです。
日本語教育では中国や台湾などを「漢字圏」といいますが、広い意味ではベトナムを含めることがあります。それは、中国語から入ってきた漢字由来の「漢越語」が多いことが理由で、「同意(ドンイー)」「意見(イーキエン)」など、どの漢字がどの発音に対応しているかがわかると語彙が覚えやすくなり、ベトナム人が日本語を、日本人がベトナム語を学習するときに力を発揮します。ベトナム人に日本語を教える際の知識として覚えておいて損はないはずです。
『キクタンベトナム語【入門編】』アルク
吉本康子/今田ひとみ著 2,200円(税込)
③ポルトガル語
ポルトガル語の中でも、日本語教育の中で存在感が強いのは日系人が話すブラジル・ポルトガル語です。1990年の入管法改正により、多数の日系人が来日し、定住するようになりました。その後、バブル経済の崩壊やリーマンショックなどの影響によりブラジルに帰国する人も増えましたが、群馬県大泉町のようにブラジル人コミュニティのある町もできました。日系人は家族の帯同が可能なので、両親とともに来日する子どもたちの日本語教育が必要とされています。
ポルトガル語の一番短いあいさつは「オイ!」、日本語ではちょっと失礼な感じがしますが、英語の「Hi」と同じような言葉です。後ろに相手の名前をつけて、「オイ、マリオ!」のように親しみを込めて呼びましょう。
また、ポルトガルといえば、古くから日本と交易があり、「カルタ」「タバコ」「カッパ(雨合羽)」など、すでに外国から入った言葉だとは意識されないぐらい日本語に定着した言葉がたくさんあるのは有名なことですね。
『改訂版 キクタンブラジル・ポルトガル語【入門編】基本500語レベル』アルク
福森雅史著 2,530円(税込)
④スペイン語
欧米言語の中で今最も勢いのあるスペイン語。スペインといえば太陽の輝く情熱の国、サッカー、フラメンコ、サグラダファミリアなど日本人を引き付ける魅力にあふれていますね。
そして、スペイン語母語話者は中国語、英語に続いて世界第3位!日系人の多いペルーなど南米諸国で使われている言語です。ポルトガル語と同じく、地域日本語教室や日系人児童がいる小学校で日本語を教えるときに役に立ちそうです。
巻き舌が印象深いスペイン語ですが、母音は日本語と同じく5つで英語やドイツ語に比べるとなじみやすいかもしれません。スペイン語と日本語の発音は少し似ているので、まったく別の言葉なのにスペイン語に聞こえる日本語の言葉があるようです。例えば、ニンニクを意味するスペイン語は「アホ」なんだそうです。スペイン語で料理を習ったらちょっと混乱しそうですね。
『改訂版 キクタンスペイン語【入門編】基本500語レベル』アルク
吉田理加著 2,200円(税込)
そのほかにも、最近ドラマが人気のタイ語、視力検査の記号のような文字を使うミャンマー語、母語話者は日本語習得が早いと言われるモンゴル語、地理的に日本と昔からつながりのあるヨーロッパ言語ロシア語など、世界は本当にたくさんの言語であふれています。「勉強しよう!」と構えずに、気軽に語彙やフレーズを丸覚えすることから始めてみてはいかがでしょうか。
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