出入国在留管理庁によれば、令和5年(2023)末現在における在留外国人数は、341万992人となり、前年末(307万5,213人)に比べ、33万5,779人(10.9%)増加しました。令和4年(2022)年末に、在留外国人数は初めて300万人を超えましたが、その後も増加の勢いは増すばかりです。在留外国人数の増加の背景を考えます。
国籍・地域別内訳
まずは国・地域別で見た場合の上位10カ国・地域と、前年末からの増減率を見てみます。
(1) 中国 821,838人(107.9%)
(2) ベトナム 565,026人(115.5%)
(3) 韓国 410,156人( 99.7%)
(4) フィリピン 322,046人(107.8%)
(5) ブラジル 211,840人(101.2%)
(6) ネパール 176,336人(126.5%)
(7) インドネシア 149,101人(150.8%)
(8) ミャンマー 86,546人(153.9%)
(9) 台湾 64,663人(112.9%)
(10) 米国 63,408人(104.3%)
こうして見ると、韓国を除いた全ての国・地域で前年末から増加していることがわかります。
また、増加率で見ると、ミャンマーの153.9%、インドネシアの150.8%、ネパールの126.5%の増加が目立ちます。この結果、前年末で10位圏内に入っていなかったミャンマーが、台湾、米国を抜いて8位になりました。
在留資格別内訳
次に在留資格別で見た場合の、前年末からの増減率を見てみます。
(1) 永住者 891,569人(103.2%)
(2) 技能実習 404,556人(124.5%)
(3) 技術・人文知識・国際業務 362,346人(116.2%)
(4) 留学 340,883人(113.4%)
(5) 特別永住者 281,218人(97.3%)
(6) 家族滞在 266,020人 (116.7%)
(7) 定住者 216,868人 (104.8%)
(8) 特定技能 208,462人 (159.2%)
(9) 日本人の配偶者等 148,477人 (102.4%)
(10)特定活動 73,774人 (88.5%)
特に目を引くのは、特定技能の159.2%、技能実習の124.5%などです。コロナ禍が明けて、深刻化している人手不足を補うために、就労関連の在留資格による入国が増えていることが数字になって現れています。
育成就労から特定技能につながる制度設計
現在、就労関連の外国人の受け入れを更に増やす方向での法整備が進められています。
2024年3月15日、政府は技能実習制度を廃止して、新たに育成就労制度を創設するための関連改正法案を閣議決定しました。今後、国会での審議を経て、成立すれば2027年にも新制度が始まります。
何かと問題の多かった技能実習制度から、育成就労制度では一定の条件の下での転籍を認めることなどの改善が盛り込まれました。また、育成就労で受け入れる職種は、その後の特定技能1号と同じ分野になり、これによって育成就労は外国人労働者の受け入れの第一段階として位置付けられることになります。そして、その後の特定技能1号、更にその後の特定技能2号につながる制度設計が考えられています。
2024年3月29日、政府は特定技能の対象に、新たに4分野(自動車運送業、鉄道、林業、木材産業)を追加することを閣議決定しました。また、2028年度までに、現在20万人の特定技能による外国人在留者を、実に82万人にまで増やすという方針も決定しました。
日本社会で外国人が活躍する場が広がり、その規模も拡大しています。人手不足が深刻とは言え、大切なことは単に数だけを追うのではなく、きちんと内容の伴った受け入れと環境整備を進めることかと思います。その際には、育成就労、特定技能1号、特定技能2号などの各段階において、仕事上でも生活面でも必要なレベルの日本語能力が担保されていなければなりません。例えば、新たに追加された分野の中に自動車運送業がありますが、タクシー運転手には、かなり高いリスニング能力が求められるように思います。
日本語教師にとっても、非常にインパクトの大きい動きとして注目したいと思います。
令和5年末現在における在留外国人数について(出入国在留管理庁)
執筆:新城宏治
株式会社エンガワ代表取締役。日本語教育に関する情報発信、日本語教材やコンテンツの開発・編集制作などを通して、日本語を含めた日本の魅力を世界に伝えたいと思っている。
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