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「技能実習制度」から「育成就労制度」へ
2024年614日に、「育成就労制度」の創設を盛り込んだ改正入管難民法が参議院で可決、成立しました。これまで何かと批判の多かった「技能実習制度」に代わり、新しい制度がスタートします。ここでは、「技能実習制度」から「育成就労制度」への変更点、またその中での日本語教育の位置づけについて見ていきます。

 

技能実習制度の問題

技能実習制度は今から約30年前の1993年に創設されました。その規模は年々拡大し、現在では、ベトナムからを筆頭に、約40万人の技能実習生が日本に滞在しています。

技能実習制度の元々の目的は技術移転による国際貢献でしたが、実質的には特に製造業界において、人手不足解消のための安価な労働力確保として利用されるという負の側面がありました。

特に製造業の製造ラインにおいて技能実習生は不可欠な存在であり、もはや技能実習生なしでは日々の業務が成り立たないというところも少なくありません。その一方、低賃金や長時間労働、さらには結果として技能実習生の失踪など、これまでさまざまな問題がニュースなどでも伝えられてきました。また、借金を負って来日するケースや、そこに介在する悪質なブローカーなど、構造的な問題も指摘されてきました。

これらの問題の要因の一つに、技能実習生は転籍ができないということがあります。つまり、労働条件にさまざまな問題や不満があったとしても、技能実習生は職場を変えることができない弱い立場に置かれています。

育成就労制度で何が変わるか

そのようなさまざまな問題点の解消と、人手不足の激しい分野での人材確保を目的として、育成就労制度は成立しました。技能実習制度から育成就労制度への主な変更点は以下の通りです。

【技能実習制度】

目的:国際貢献

在留資格:技能実習1号、2号、3号

在留期間:最長5年

転籍:原則不可

【育成就労制度】

目的:人材確保

在留資格:育成就労

在留期間:3年

転籍:やむを得ない場合や本人の意向による転籍が可能

目的が「国際貢献」から「人材確保」となり、また、原則不可であった転籍が可能となっています。法案では、以下のようになっています。

転籍の際には、転籍先において新たな育成就労計画の認定を受けるものとし、当該認定は、①やむを得ない事情がある場合や、②同一業務区分内であること、就労期間(1~2年の範囲で業務の内容等を勘案して主務省令で規定)・技能等の水準・転籍籍先の適正性に係る一定の要件を満たす場合(本人意向の転籍)に行う。

育成就労から特定技能へのキャリアパス

今回の育成就労制度では、その後に続く特定技能とのつながりも見逃せないポイントです。

育成就労制度では、特定技能と対象となる職種・分野を原則一致させることになっています。特定技能では現在、以下の16分野が認められていますので、同様の分野が育成就労でも対象となります。

介護、ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、自動車運送業、鉄道、林業、木材産業

これにより、育成就労→特定技能1号→特定技能2号のスキームができることになります。育成就労で3年間、特定技能1号で5年間のキャリアを積んだ後、特定技能2号になれば年限なしの日本滞在や家族の呼び寄せなどが可能になります。

※介護分野に関しては、特定技能終了後も「介護」の在留資格への切り替えが可能なため、特定技能1号のみで、特定技能2号は用意されていません。

2024年3月、政府は特定技能の受け入れ枠を「5年間で82万人」とすることを閣議決定しています。今後、特定技能、育成就労を含めた外国人受入れの大幅な拡大のための環境整備が進んでいます。

求められる日本語能力

ここで日本語能力について確認しておきましょう。

現在、特定技能の在留資格を得るためには、一定の日本語力が必要とされています。その日本語力を測るテストが国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)です。特定技能では、このテストでCEFRA2(日本語能力試験N4相当)レベルにあることを証明し、さらに各分野の試験に合格することが必要になっています。

それでは、特定技能の前段に当たる育成就労では、就労時にどのような日本語力が求められるのでしょうか。ちなみに、前制度の技能実習では、就労開始時には「介護」を除けば日本語力は特段、求められていませんでした。

法案には、以下のように記されています。

育成就労計画の認定に当たって、育成就労の期間が3年以内であること、業務、技能、日本語能力その他の目標や内容、受入れ機関の体制、外国人が送出機関に支払った費用額等が基準に適合していることといった要件を設ける。

育成就労生の受入れに当たって受入先は育成就労計画を提出する必要がありますが、そこには、日本語能力の目標や内容について明記することとなっています。

育成就労制度創設の前に1年をかけて検討してきた「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」では、「外国人材の日本語能力を段階的に向上する仕組みを設ける」とし、具体的には、以下のような提案をしています。ここで言う「新制度」=「育成就労制度」です。

・新制度で就労開始する前にA1相当以上(日本語能力試験N5合格等)または認定日本語教育機関等における相当講習受講

・新制度から特定技能1号移行時にA2相当以上(日本語能力試験N4合格等)

当分の間は認定日本語教育機関等における相当講習受講によっても可

・特定技能1号から特定技能2号移行時にB1相当以上(日本語能力試験N3合格等)

就労開始時、特定技能1号移行時、特定技能2号移行時、それぞれの段階において必要な日本語力が明示されています。その証明としては日本語能力試験、または認定日本語教育機関で相当講習を受講することとしています。

※出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律案概要(令和6315日閣議決定)(法務省出入国在留管理庁)

https://www.moj.go.jp/isa/content/001415280.pdf

執筆:新城宏治

株式会社エンガワ代表取締役。日本語教育に関する情報発信、日本語教材やコンテンツの開発・編集制作などを通して、日本語を含めた日本の魅力を世界に伝えたいと思っている。

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