登録日本語教員の経過措置についての前提
今回いただいた質問で最も多かったのは、登録日本語教員の経過措置に関するものです。経過措置については、既に『登録日本語教員の登録申請の手引(文化庁国語課)』の5ページに「登録日本語教員の資格取得に係る経過措置」のフローチャートがありますので、それをもとに考えたいと思います。
経過措置でポイントになるのは、以下の4点です。
- 現職者かどうか
- 日本語教育能力検定試験に合格しているかどうか
- 日本語教師養成講座を修了しているかどうか
- 学士号を持っているかどうか
まずは、ご質問者の状況を上記の4点で整理してみましょう。
Aさんからの質問「これから日本語を教え始めるのですが……」
Q:大学の副専攻にて日本語教師養成の単位を修了して2022年3月に大学卒業しました。2022年4月から2024年の3月まで一般企業に勤めておりますが、2024年4月から日本語学校の専任として勤めます。その際、登録日本語教員になるにはどのルートになるのでしょうか?
①現職:〇
②検定:×
③養成:〇
④学士:〇
A:Cルートになる可能性が高いように思われます。その場合は応用試験の合格が必要です。また申請は、現職者の条件である「1年以上の勤務」後になるのではないでしょうか。
Bさんからの質問「自分が学んだ養成講座は認められますか?」
Q:海外の大学で学んだ日本語教員養成講座の学士などは日本で認めてもらえるのでしょうか? 認められなかった場合、再度試験を受けて合格すれば良いのでしょうか? 独学では難しいですよね。
A:養成講座については、「現行告示基準教員要件に該当する養成課程等を修了し」となっており、どの養成講座が該当するかは「令和5年度中に文部科学省が確認を行い、それぞれの養成課程等の一覧を公開する」となっています。これから公開される一覧でご確認ください。
Cさんからの質問「自分のキャリアは経験として認められますか?」
Q:高卒で日本語教師養成講座を受講、2016年に日本語学校に勤務しましたが解雇になり、その後、現在まで専門学校で留学生に日本語を教えています。専門学校は「大卒」が必須ではないため働けていますが、そのキャリアは経験としてカウントされるのでしょうか。そして、登録日本語教員になるためにはどのようなルートを進めばいいのでしょうか。
現職:〇
検定:×
養成:〇
学士:×
A:現職者の定義は、一定期間の間に「法務省告示機関で告示を受けた課程、大学、認定日本語教育機関で認定を受けた課程、文部科学大臣が指定した日本語教育機関で日本語教員として1年以上勤務した者」となっています。
Cさんは「留学生に日本語を教えている」とのことですので、その専門学校の課程が法務省の告示課程であるならば、経験として認められるはずです。その場合、Fルートになる可能性が高いように思われます。基礎試験と応用試験に合格すれば、実践研修は免除されると思われます。
Dさんからの質問「日本語教育能力検定試験に合格したのに……」
Q:2023年12月に日本語教育能力検定試験に合格し、2024年1月に日本語教師養成講座(文化庁指針420時間準拠)を修了しましたが、日本語教員の経験がなく、「現職者」にあたりません。この場合、Cコースになるようですが、「検定試験合格」は登録には関係ないのでしょうか。
現職:×
検定:〇
養成:〇
学士:?
A:Dさんは日本語教師の経験はないとのことですので、現職者でなければ、日本語教育能力検定試験合格による経過措置はないようです。そのため、もし学士号をお持ちであればCルートになると思われます。
日本語教育能力検定試験合格のメリットを生かすのであれば、先に1年以上の経験を積んだ上で登録申請をするということになります。その場合は、2023年の日本語教育能力検定試験に合格されているとのことですので、E-2ルートで講習Ⅱを受講して修了認定試験に合格すれば、基礎試験も応用試験も実践研修も免除されると思われます。
Eさんからの質問「海外在住者はどうすればいい?」
Q:私は日本で13年日本語教師として働き、そのうち4年は教務主任を務め、現在海外に移住し、日本語教師として働いています。日本語教師養成講座420時間を受講し、日本語教育能力試験にも合格しています。海外で日本語を指導する日本語教師が登録日本語教員になるにはどうすればいいのでしょうか。
現職:〇
検定:〇
養成:〇
学士:〇
A:2019年以降に日本語教師の経験があり、日本語教育能力検定試験に合格されているのであれば、いつの日本語教育能力検定試験に合格しているかにもよりますが、E-2またはE-1ルートにより、講習を受けて修了認定試験に合格すれば、基礎試験、応用試験、実践研修が免除されると思われます。
講習はオンラインで行われると思いますし、登録日本語教員の登録もオンライン申請になると思われますので、海外在住の方でも登録日本語教員になれると思います。
執筆:新城宏治
株式会社エンガワ代表取締役。日本語教育に関する情報発信、日本語教材やコンテンツの開発・編集制作などを通して、日本語を含めた日本の魅力を世界に伝えたいと思っている。
※アルクでは、7月中に日本語教員試験の概要や対策法がわかる試験ガイドの発行を予定しています。第2回以降、詳細をお伝えしていきますので乞うご期待!
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