2023年12月10日(日)に日本語教員試験の試行試験が全国5カ所で行われました。今回の試行試験の結果を踏まえて、2024年秋には日本語教員試験の本試験が実施される予定です。ここでは、試行試験の受験者の声と合わせて、日本語教員試験についてまとめておきます。
日本語教員試験の基礎情報
まずは、2023年6月に行われた第119回日本語教育小委員会の資料から、日本語教員試験の試行試験の概要を確認しておきましょう。
試行試験の目的は「令和6年度以降の日本語教員試験の実施に向けて、試験の運営・実施を通して明らかになる課題の改善、試験問題の開発・分析・改善等を目的として実施するものである。なお、令和6年度以降に実施される日本語教員試験の実施方針及び詳細については、本試行試験の結果等を参考にしながら、別途規定することとする」となっています。試行試験はあくまで課題の改善のためのものであり、ここで明らかになった課題は本試験で改善される、つまり本試験では変更になる可能性があることに注意しましょう。
日本語教員試験は、試験①(基礎試験)と試験②(応用試験)に分かれます。
試験①(基礎試験)
出題数:100問
試験時間:120分
試験②(応用試験)
出題数:音声による出題50問、文章題60問
試験時間:音声による出題45分、文章題120分
日本語教員試験と現行の日本語教育能力検定試験は別物ですが、ここで敢えて日本語教員試験を現行の日本語教育能力検定試験と比べてみます。
・日本語教員試験の試験①(基礎試験)は日本語教育能力検定試験の試験Ⅰと比べると、問題数は同じだが試験時間が30分長い。
・日本語教員試験の試験②(応用試験)の聴解試験は日本語教育能力検定試験の試験Ⅱと比べると、問題数は10問多く、試験時間は15分長い。
・日本語教員試験の試験②(応用試験)の試験2は日本語教育能力検定試験の試験Ⅲと比べると、問題数は20問と記述式問題の分だけ少ないが、試験時間は同じ。
単純に問題数と試験時間だけを比較すると、試験①(基礎試験)はやや緩く、試験②(応用試験)の聴解試験はややきつく、試験2は緩くなる印象です。
試験①(基礎試験)の参考基準は高い
日本語教育小委員会の資料を続けて見ていきましょう。
「本試行試験では、日本語教員試験(本試験)の合格基準についての検証に役立てるため、その基準の参考として「参考基準」を設けることとする」としています。そして、その参考基準は、以下のように定められています。
試験①(基礎試験):必須の教育内容で定められた5区分において、各区分で約7割程度の得点があり、かつ総合得点で約8割程度の得点があること 。
試験②(応用試験):総合得点で約6割の得点があること 。
こうしてみると、試験②(応用試験)と比べて試験①(基礎試験)の参考基準が非常に高いように見えます。どのような試験でも、各区分で7割の正解率をキープした上で、総合得点で8割正解するというのは容易ではないでしょう。
但し、「日本語教員試験(本試験)の合格基準等については、試験の性格、位置付けを踏まえた標準的な合格基準等の在り方について、本試行試験の結果や専門家等の意見を踏まえて改めて検討する」としています。
試行試験の受験者に聞いてみました
実際に試行試験の受験者に話を聞いてみたところ、特に試験②(応用試験)の聴解試験についての多くの意見が聞かれました。
試験②(応用試験)の聴解試験は、日本語教育能力検定試験の聴解試験から形式が大きく変わっていました。簡単に言うと、日本語教育能力検定試験の問題1、2、3、6の内容がミックスされて、問題1として出題されていました。それに、日本語教育能力検定試験の聴解試験の問題4(教師と学習者などの会話)と、問題5(聴解教材)についての問題が、問題2、問題3として出題されていました。
日本語教育能力検定試験の聴解試験は、大問ごとに形式やパターンがまとまっていたので対策を立てやすかった面もあったと思いますが(例えば問題1はアクセントの問題、など)、試行試験の試験②(応用試験)の聴解試験は、さまざまな形式やパターンの問題が混在して出題されるので面食らったといった声が聞かれました。
また、日本語教育能力検定試験の聴解試験は問題によっては2回音声が流れるような問題もありましたが、試験②(応用試験)の聴解試験は基本的に音声が1回しか流れませんでした。さらに、大問ごとの間のポーズの時間が短く(その分、短か目のポーズが数問ごとに入っていました)、全体の問題数も多いため、苦戦した・難しかったといった声が聞かれました。
聴解試験以外については、試験①(基礎試験)は基本的な設問が多く、また試験②(応用試験)の試験2は問題数が大きく減っても時間数が変わらなかったため、大変だったという声はあまり聞かれませんでした。試験②(応用試験)の試験2などは、むしろ時間を持て余したといった受験者の声も聞かれました。
試行試験の受験者には1月に結果が知らされるとともに、試行試験問題の一部は2023年度末(つまり2024年3月末)までに、試行試験結果報告書として公開される予定です。
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