2023年4月24日、政府の外国人労働者等特別委員会は、特定技能2号の対象分野を大幅に拡大する方針を示しました。これに先立ち、「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」は、技能実習制度の廃止およびそれに代わる新制度の創設を提案していました。今、日本の外国人労働者受け入れに関わる制度が、大きな転換期を迎えています。
特定技能1号と2号の違い
特定技能制度は、労働力となる外国人人材を受け入れることを目的に2019年4月から始まった制度です。特定技能制度には1号と2号があり、1号を終えて、より高い専門性を有すると認められた場合は2号に進むことができます。1号と2号では、それぞれ働ける分野、在留する条件や年数の制限が決まっています。
特定技能1号で働けるのは以下の12分野で、2022年12月末現在約13万人の外国人が働いています。在留期間は、定期的に更新すれば通算5年まで働くことができます。
・介護
・農業
・漁業
・建設
・素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
・造船舶用工業
・航空
・自動車整備
・飲食料品製造業
・外食業
・ビルクリーニング
・宿泊業
一方、特定技能2号で働けるのは、特定技能1号の中の建設と造船舶用工業の2分野に限られており、これまでに資格を取得した人はわずか8人に留まります。特定技能2号は在留年数に限りはなく、また要件を満たせば家族帯同も可能です。
特定技能1号から2号になるには
もともと対象分野極めて限られている特定技能2号ですが、それに加えて1号から2号に進むには分野ごとに非常に厳しい試験をクリアしなければなりません。特定技能1号の在留期限は最大でも5年ですので、2号にならない場合は5年を過ぎてしまえば帰国しなければならないことになります。
そのため現在認められている2分野に、特定技能1号にはあって2号にはない9つの対象分野を加えて全11分野にするというのが外国人労働者等特別委員会の方針です。1号から2号にスムーズに移行できれば、2号は在留年数に限りがありませんので、ずっと日本で生活して働くことも可能になります。これはまさに、人手不足の著しい市場において、労働者を海外から積極的に受け入れるということになります。
なお、12分野のうち介護分野については、介護福祉士の国家試験に合格して「介護」の在留資格を取得できれば無期限就労が可能になるため、今回の対象からは外れています。
4月になってこのような議論が起こってきた背景には、もちろんさまざまな産業で人手不足が深刻であるという実態があるわけですが、それに加えて、特定技能1号が2019年4月から始まっており、あと1年もすれば在留期限の5年を迎える特定技能1号の外国人がどんどん増えていくという実情があります。
労働者受け入れ制度の見直しへ
技能実習制度の廃止および新制度の創設と、特定技能2号の対象分野拡大の動きは、外国人労働者受け入れ制度の見直しという観点から一連の動きとして見ることができます。
技能実習制度は、これまでも技術移転という名目と安価な労働力の確保という実態の乖離が批判されてきましたが、現在の制度を廃止し、(新制度の中身はまだ具体的になっていませんが)新制度に移行する方向で進んでいます。また対象分野を揃えることで制度の整合性を整え、技能実習から特定技能1号、さらには特定技能1号から特定技能2号へのスムーズな移行が検討されていると思われます。
外国人を積極的に受け入れていかなければ、既に日本社会は立ち行かない状況になっており、今後、外国人労働者受け入れに関わる制度が大きく変わっていくことになります。日本で働き、生活する外国人が、地域社会や職場・学校などで日本語でコミュニケーションをし安心して暮らしていくために、日本語教育の専門家である日本語教師の役割はますます重要になってきます。
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