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日本語教育能力検定試験の“新”出題範囲対策2~言語と社会

令和4年度日本語教育能力検定試験は2022年10月23日(日)に行われます。2022年7月4日(月)から出願受付も始まりました。出願期間は2022年8月1日(月)まで(当日消印有効)です。受験される方は早めに出願を済ませましょう。ここでは令和4年度の日本語教育能力検定試験の出題範囲に新しく追加された項目を中心に解説していきます。

「令和4年度日本語教育能力検定試験受験案内(願書)」が発売されました

「令和4年度日本語教育能力検定試験受験案内(願書)」は株式会社凡人社のホームページから購入できます。また、全国の主要書店でも6月下旬から順次販売されています。取扱書店は、販売元の株式会社凡人社でご確認ください。出願締切の間際には受験案内が売り切れることもありますので、お早めにご購入ください。定価は400円です。

https://www.bonjinsha.com/wp/post_id-15138.html

令和4年度の試験から何がどう変わるのか

令和4年度日本語教育能力検定試験から、「必須の教育内容」(文化庁)に基づいて出題されるようになります。

令和4年度日本語教育能力検定試験 出題範囲

http://www.jees.or.jp/jltct/range.htm

「必須の教育内容」とは、文化庁が「日本語教育人材の在り方について(報告)改訂版」(平成31年)において、日本語教師の養成における教育内容として示したものです。文化庁では平成12年に日本語教員養成における教育内容(平成12年教育内容)を示しており、「必須の教育内容」はこの枠組みを踏襲しています。令和3年度までの旧出題範囲も「必須の教育内容」と同様に「平成12年教育内容」に基づいています。つまり令和3年度の試験も令和4年度の試験も元(平成12年教育内容)は同じなので、出題内容が全面的に変わるというではありません。

とは言うものの、「必須の教育内容」を詳細に見ていくと、令和3年度までの出題範囲の「主要項目」にはなかったものが示されています。その中で、出題範囲の5区分の中の「言語と社会」には、以下の項目が新しく立てられています。

コミュニケーションストラテジー

今回はこの「コミュニケーションストラテジー」について考えてみます。ただ、この「コミュニケーションストラテジー」はこれまでの日本語教育能力検定試験でも何度も出題されていますので、これまでも重要項目であり、これからはより一層重要な項目になると捉えればいいと思います。

「コミュニケーションストラテジー」とは何か

日本語教育は学習者の日本語コミュニケーション能力を育成することを主な目的としています。このコミュニケーション能力には、文法などの形式的な正しさや、相手や場に応じて調整できる社会言語学的な能力だけではなく、言語を運用する能力も含まれます。

日本人でも、いわゆる“コミュ力”(コミュニケーション能力)が高いと言われる人は、日本語の知識が豊富にあるというよりは、その日本語を上手に使いこなして相手とスムーズにコミュニケーションをとって、相手のことを理解したり、自分の意見を相手に伝えられたりする人のことを指すと思われます。

そういった人たちのコミュニケーションの取り方を見ていると、ストラテジーを上手に使っていることに気づきます。ストラテジーとは一般的に「方略」と訳されますが、「手段」などと訳すと分かりやすいと思います。つまり、どういう「うまい手段」を使ってコミュニケーションを成功させているか(乗り切っているか)ということです。

コミュニケーションストラテジーには、以下のようなものがあります。

回避:分からない(自信がない)単語や言い方を使わない

言い換え:分からない(自信がない)ときに、別の単語や言い方を使う

母語使用・意識的転移:分からない(自信がない)ときに、母語などを使う

援助要請:分からない(自信がない)ときに、助けを求める。辞書を使う。

ジャスチャー:分からない(自信がない)ときに、言葉ではなくジェスチャーや非言語で示す

JF日本語教育スタンダードの考え方

JF日本語教育スタンダードは、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)をもとに国際交流基金が作った、日本語を教える・学ぶときの枠組みです。日本語を通じた相互理解を目標とし、課題遂行能力異文化理解能力を育成するとしています。課題遂行能力は、コミュニケーション言語能力(言語構造的能力・社会言語能力・語用能力)コミュニケーション言語活動(受容・産出・やりとり)から成りますが、この語用能力とストラテジーは深く関係します。

国際交流基金(JF)と株式会社NHKエデュケーショナルが共同制作し、2022年2月末から全世界に放送されている「ひきだすにほんご Activate Your Japanese!」という日本語教育番組については、以前に日本語ジャーナルの記事でも紹介しましたが、この中のメインコーナーである「スアン日本へ行く!/Xuan Tackles Japan!」というドラマも、ストラテジーが柱になっています。ベトナム人の女性が、日本での仕事や日常生活で出合うコミュニケーションの問題をさまざまなストラテジーを駆使して乗り越え、成長していくというドラマです。

この番組ではストラテジーを「よりよいコミュニケーションをするために(あなたの)日本語をうまく生かす工夫」と紹介していました。また、ドラマの中では、言語知識の不足を補う補償的なものだけでなく、「(初対面の相手とうまく話をしたい時は)質問をして相手に話してもらう」「(相手の話が聞き取れない時は)効率的に聞き返す」など、さまざまな実践的でポジティブなストラテジーが紹介されていました。

このように、「コミュニケーションストラテジー」は、これから増えるであろう日本で働きたい・生活したいという外国人に身に付けてもらいたい能力であり、日本語教師が授業において強く意識しておく必要がある能力でもあります。そのため、日本語教育能力検定試験の新しい出題項目にも立てられているのではないかと思われます。

JF日本語教育スタンダード

https://jfstandard.jp/top/ja/render.do

令和4年度受験予定の方は計画的な準備を

令和4年度の日本語教育能力検定試験を受験される予定の方は、まずは実施団体である日本国際教育協会(JEES)のウェブサイトを確認しましょう。試験日はもちろんですが、出願し忘れることのないよう、特に出願期間については注意しましょう。皆さんのご健闘をお祈りします。

日本国際教育支援協会(JEES)日本語教育能力検定試験

http://www.jees.or.jp/jltct/index.htm

執筆:新城宏治

株式会社エンガワ代表取締役。日本語教育に関する情報発信、日本語教材やコンテンツの開発・編集制作などを通して、日本語を含めた日本の良さを世界に伝えたいと思っている。

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