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ちょっとした工夫が効く!初級日本語テキストの使い方② -残り数分でもう1回!ドリル練習のアレンジ-

「文型導入⇒基本練習⇒応用練習」と進める初級日本語クラスの授業。形通りやるのが鉄則と思われがちな基本練習もちょっとした工夫で変化をつけることができます。前回に引き続き、日本で働く人、生活する人のための初級日本語テキスト『アクセス日本語』(アルク)を例に、初級では欠かせないドリル練習の使い方をご紹介します!

前回:ちょっとした工夫が効く!初級日本語テキストの使い方① -扉イラストと登場人物

予定より早く終わりがちなドリル練習

春からようやく留学生が入国できるようになり、日本語学校は大忙し。7月から日本語教師としてデビューしたという方もいらっしゃるのではないでしょうか。新人の先生の多くが担当することになるのが初級クラスの授業です。毎回の授業準備のために考えることがたくさんありますね。まずは新しい語彙の確認、次にその日学習する文型の導入「どんな場面で導入しようか」頭を悩ませることも多いでしょう。学習者が文型をしっかりと理解してくれれば、その後の会話練習もスムーズに進みます。休み時間などに自分が教えた文型や表現を使って、学習者が何か話してくれればうれしいですよね。実際のコミュニケーションに使える練習をしようと、会話練習、応用練習の準備にもさらに力が入るのではないでしょうか。

それでは、その前の段階である基本練習はどうでしょうか。「文型導入」で新しい文型を習った後には必ずその文型の形を変えて正しく言ったり書いたりするための基本練習を行います。いわゆるドリル形式の練習で、テキストに問題が載っています。例えば、アルクの初級日本語テキスト『アクセス日本語』第7課に以下のような練習があります。

これは「AはBより(形容詞)です。」という比較の文を学習した後の練習です。このテキストでは音声を聞いて、空欄の言葉を書き取るという練習を中心にしていますが、他の初級テキストでは音声はついていなくて、イラストを見て文を完成させるというパターンもよくあります。音声を使わずにこのような問題を練習する場合には、まず時間を与えて文を考えさせましょう。その後全体で答え合わせをし、コーラスで文をひとつずつ読むという流れで進めます。イラストを見て意味と文の構造を考えるので、空欄の言葉を書き取る練習よりも難易度の高い問題です。しかし、まじめに勉強する人が多いクラスなら、習ったばかりの文型を知っている語彙を使って練習するので、この段階でつまずく人は少なく、「あれ、予定していた時間よりずっと早く練習が終わっちゃった」ということも珍しくありません。

時間が余った!1回やった問題の活用法

45分の授業で、10分も15分も時間が余ってしまうとしたら、授業の進め方や教案を見直す必要があると言えますが、このような基礎練習の部分で2,3分早く終わってしまうことはあり得るでしょう。そんなときにちょっとアレンジを変える方法を考えておくと、同じ問題を使って1回、2回余分に練習ができそうです。例えば、先ほどの練習であればどんな方法が考えられるでしょうか。

・音声の後についてリピートさせる

・音声を文の途中まで聞かせて、残りを言わせる

・テキストを閉じイラストだけをランダムに見せて、文を言わせる

・「2月は11月より寒いです」と言った後、「8月は…」と言って続きを言わせる

クラス全体、ペア、一人で、教室の右側に座っている人で、など予想しにくいパターンで指名するだけでもクラスの雰囲気が少しぴりっとします。教師が指名するだけでなく、学生同士でやらせてもいいですね。さらに、「一分間で」と時間を区切ってスピード感を出すことも可能です。滑らかさ、流暢さも意識させてみましょう。どれも特別珍しいやり方ではなく、慣れた先生なら自然に組み合わせて練習問題に様々なアレンジを加えている方法です。

変化をつけてフォーム練習をもう一度

初級前半の中盤ぐらいになると動詞のフォームの勉強が始まり、「て形」「ない形」「辞書形」などの練習が必要になってきます。

『アクセス日本語』第10課「ちょっと待ってください」のて形の練習部分です。「買ってください」「待ってください」という音声を聞き、て形を書き取るという問題です。単調な練習なので、学生が飽きてしまいがちです。しかし、1回やっただけではなかなかて形を定着させることはできないので、ここでも少し目先を変えて何度も繰り返すことが大切です。

・音声を聞いてその通りに動作をさせる

・「きいてください」と聞いて、ます形「ききます」を書かせる

・音声を聞いて、そのて形の拍数をカウントさせる

ドリル練習を「つまらない」「退屈だ」と感じるのは、「考える」という要素が少ないからです。もちろん自動的に言葉が口をついて出るようになるということも必要なので、ドリル練習は欠かせません。それが十分できたら、少しだけハードルを上げてみましょう。音声を聞いてその通りに動作をするのはTPR(全身反応教授法)と呼ばれるもので、「〜てください」では導入の段階で使っている先生も多いかもしれませんね。ゲーム感覚で楽しくやってみてはいかがでしょうか。また、「ます形」から「て形」や「ない形」を作ることができるようになっても、案外それぞれのフォームからます形を思い出すことができないということは多いようです。いつもと逆の方向から練習することで学生に刺激を与えることもできますね。

さらに、動詞の活用練習の際に、拍をカウントする練習を取り入れてみてはいかがでしょうか。日本語の「拍(モーラ)」の感覚を身に付けるのはなかなか難しいことです。しかし、拍は「きて(来て/着て)」「きいて(聞いて)」「きって(切って/切手)」など、アクセントと共に意味の分別に関わってきます。また、Ⅰグループの動詞の活用には、撥音便や促音便が現れます。正しく活用できているか、書いて確認する方法もありますが、「聞いて」「3」、「来て」「2」、「切手」「3」のように、数字だけ言ってもらうとスピーディーな練習になります。

最近はコミュニケーション重視のテキストが増えてきて、「実際のコミュニケーションの中で使える」ということに教師の意識が向いています。しかし、新しく習った文型を会話の中でスムーズに使えるようになるには単調に思える基本練習、ドリル練習も避けては通れないものです。しっかりと練習して自動的に口から出るようになった表現は、実際のコミュニケーション場面でも使いやすいはずです。ぜひ基本練習にもちょっとした味つけをして、学生の意識を引き付ける方法を毎日の授業に取り入れてみてください。

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