2022年2月24日、ロシア軍は突如、ウクライナに軍事侵攻しました。多くのウクライナ国民が隣国ポーランドをはじめ、ハンガリー、モルドバ、ルーマニア、スロバキアなどのヨーロッパ各地に逃れています。日本でも岸田首相が「人道的な観点から対応する」と言明。今後日本に逃れてくるウクライナの人たちが日本語や生活面で困らないよう、ウクライナ学生支援会(JSUS)を立ち上げ、クラウドファンディングを始めた代表の平岡憲人さん(大阪・清風情報工科学院校長)に話を聞きました。
100人を受け入れ、日本語教育を行うことを目指す
編集部:今回、なぜウクライナ学生支援会(JSUS)を立ち上げ、クラウドファンディングを始めたのですか。
平岡:第二次世界大戦後、世界各地で紛争はあり、その度に多くの避難民が発生しました。しかしこれまで日本は、そのようなことが世界のどこかで起こっても、どこか他人事のように感じていたように思います。
編集部:これまでの紛争とは何が違うのでしょうか。
平岡:日本とウクライナには、福島とチェルノブイリ、広島・長崎とプーチンによる核恫喝という共通点があります。そのウクライナが蹂躙されるのを目にして、何かしなければと考えました。避難民となった人たちの支援をすることも、ウクライナへの貢献の一つです。
編集部:具体的にはどのような活動を行うのでしょうか。
平岡:趣旨に賛同してくださった日本語学校(3月末現在、全国約25校)のグループで、NGOと連携し、日本に避難したウクライナの避難民に対して、日本語教育の無料提供を行います。そのためには、日本までの渡航費や日本での生活費・住居費などの支援が必要です。
編集部:どのぐらいの規模を想定していますか。
平岡:できるだけ多くの避難民の方々を支援したいのですが、目標は100人です。少なくとも初期の学生は、自分のことだけでなく後続の避難民のリーダーや世話役となれる人を選ぶ予定です。クラウドファンディングで集める支援金の最終目標は6000万円ですが、最初に10人を受け入れるために300万円を集めます。
編集部:実際に避難民の方々の受け入れに当たってはいろいろな困難があると思いますが、現在直面している課題は何ですか。
平岡:コロナの影響で飛行機の便数が減っている上に、ロシア上空は飛べないようなこともあり、日本に来るまでの渡航費が高騰していることです。また、日本に来るにしても、例えばまずはウクライナからポーランドに抜けて、ワルシャワの学校で一旦受け入れてもらい、そこから飛行機で来日するということになると、どのタイミングでチケットが取れるかなど、さまざまな不確定要素があります。
日本語学校だからできること
編集部:今回はウクライナの人道危機に際し、平岡さんがまず手を挙げ、それに全国の日本語学校が賛同しました。日本社会における日本語学校の役割をどう考えますか。
平岡:日本語学校は、法令に基づき、外国人を留学生として受け入れ教育を行う学校です。日本語学校は日本語をゼロから教えられることはもちろんですが、それだけでなく、外国人が円滑に日本社会に定着する様々なノウハウをもっている専門集団です。生活のサポート、社会ルールの教育、メンタルケア、進学指導、さらには犯罪に巻き込まれないように注意したりと、まるで日本における父親・母親のような役割を果たしています。
編集部:そのような専門集団は他にいませんね。
平岡:ウクライナ避難民に対して、我々のこれまで培ってきた経験が役に立つのではないか、いや我々以上に受け入れに通じた専門家集団はないと考えた結果、少しでもウクライナの人たちを支援したく今回このプロジェクトを立ち上げることにしました。
編集部:ここ2年ぐらいはコロナの影響で日本語学校は非常に厳しい環境に置かれ、国から十分な支援もありませんでしたが、ここにきて改めて日本語学校の役割や価値が見直されていますね。
平岡:同様に日本語教師も、これまでは社会的な評価を十分に受けてこなかった面もあるかと思います。しかしウクライナ避難民の受け入れに当たっては、日本語教師の役割に、改めて社会的なスポットライトが当たるのではないかと思います。
編集部:コロナといいウクライナといい、日本語教師は世界情勢に大きな影響を受けますね。
平岡:それが日本語教師という仕事の魅力ではないでしょうか。日本語教師は、世界の動きを肌身で感じながら、他の誰にもできない不可欠で専門的な仕事です。ぜひ多くの日本語教師の皆さんが、今回のウクライナ支援でも活躍してくださることを期待しています。
編集部:本日はありがとうございました。
★クラウドファンディングについてはこちらから
https://camp-fire.jp/projects/view/568504
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