令和3年度の日本語教育能力検定試験は2021年10月24日に行われます。本番まで残すところ1カ月半となりました。ここでは、毎日忙しくてなかなかまとまった勉強時間が取れないという方のために、忙しい人でもすぐできる試験対策に役立つ情報をご紹介します。(新城宏治)
統計数値はポイントを絞って押さえる
日本語教育能力検定試験で毎年のように出題されるものに、日本語教育と日本社会に関係する最近の出来事や、それに関連して官公庁などが発表している統計数値を尋ねる問題があります。このような日本語教育関連の動きや統計数値に関する問題を苦手としている人が比較的多いようです。
このような問題を苦手だと感じていらっしゃる方には、数字のみを丸暗記するのではなく、その背景にある日本社会や日本語教育の動きを理解した上で、その流れの中でポイントとなる大まかな数字をつかんでおくことをお勧めします。また、あまり細かい数字をたくさん覚えるのではなく、ポイントを絞って大事なことを中心に押さえておくのがいいのではないかと思います。試験はマークシート形式の4択問題ですので、細かい数字まで暗記していなくても、自分のイメージに近い選択肢が選べれば正解にたどり着けます。
また、統計数値は毎年、あるいは隔年など定期的に更新されます。今回改めて、最新のデータを確認しておきましょう。
よく出題される統計数値
日本語教育能力検定試験では、よく出題される統計数値の範囲も大体決まっているようです。これまで多く出題されてきたものには、国内外の日本語教育に関すること、児童生徒の日本語教育に関すること、外国人統計に関するものなどがあります。
【世界の日本語教育の状況】
出典:国際交流基金「2018年度海外日本語教育機関調査(速報値)」
https://www.jpf.go.jp/j/about/press/2019/dl/2019-029-02.pdf
世界の日本語教育に関してはより詳細なデータもあるのですが、あまりに詳細過ぎると全体像が見えなくなってしまうので、まずはこちらをざくっとご覧になることをお勧めします。
ポイント
・世界の日本語学習者は約385万人(前回調査で一時減少したが、再び増加)
・国別では、1位中国、2位インドネシア、3位韓国。アジアの学習者が8割以上
・日本語教育機関数(約1.8万機関)と日本語教師数(約7.7万人)は続伸(過去最多)
・142国・地域で日本語教育を実施(過去最多)
・教育段階別では中等教育が半数近くと最も多い
より詳細を確認されたい方は、以下をご覧ください。
https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/result/survey18.html
【国内の日本語教育の状況】
出典:文化庁「令和2年度国内の日本語教育の概要」
https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/nihongokyoiku_jittai/r02/
令和2年(2020年)度は新型コロナウイルスの影響を大きく受け、日本国内の日本語学習者が大きく減少した年になりました。調査は2020年11月1日現在の数字です。
ポイント
・日本語学習者数、日本語教師数、日本語教育機関数が全て前年に比較して減少
・特に日本語学習者数の減少幅が大きく、約27万人→約16万人の減少
・中でも法務省告示機関(日本語学校)が減少数の過半数を占めるなど影響が大きい
【児童生徒の日本語教育】
出典:文部科学省「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(平成30年度)」
https://www.mext.go.jp/content/20200110_mxt-kyousei01-1421569_00001_02.pdf
本調査は2年ごとに行われ、前回調査の発表が2年前の9月下旬であったことから、近日中に新しい調査結果が発表されるかもしれません。しかし、その新しい調査結果が反映されるとしても、来年以降の試験になります。
ポイント
・日本語指導が必要な児童生徒数は年々増加。外国籍約4万人、日本国籍約1万人、合計約5万人
・日本語指導が必要な外国籍の児童生徒数は母語別で多い順に、ポルトガル語、中国語、フィリピノ語
・日本語指導が必要な外国籍の児童生徒の在籍人数別市町村数は、5人未満(約42%)、30人以上(約27%)と両極化。
【国内の外国人登録者数】
出典:法務省「令和2年末現在における在留外国人数について」
https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00014.html
これまで毎年在留外国人数は増え続けてきましたが、令和2年は新型コロナウイルスの影響を受け、8年振りに前年末に比べて在留外国人数が減少しました。
ポイント
・在留外国人数は約288万人、前年末に比べて約4.6万人減少
・国籍・地域別ではベトナムのみ増加し、1位中国、2位ベトナム、3位韓国の順に
・在留資格別では「留学」が約-19%、「技能実習」が約-8%と大きく減少
ぜひリンク先の情報にも目を通してみてください。日本語教育の現在の状況、日本社会の動きと日本語教育との関係が見えてきます。日本語教育は新型コロナウイルスの影響を大きく受け続けています。日本語教育能力検定試験でも、このあたりのトピックも出題されるかもしれません。
令和3年度日本語教育能力検定試験 実施要項
【試験日】令和3年10月24日(日)9:00~16:40
【受験料】14,500円(税込)
【試験地】北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、九州
※都合により変更する場合があります。
※試験地区内での都道府県は選択できません。
【合否結果通知の発表】令和3年12月24日(金)(予定)
詳細:https://www.nisshinkyo.org/news/pdf/F-2021-01-2.pdf
執筆:新城宏治
株式会社エンガワ代表取締役。日本語教育に関する情報発信、日本語教材やコンテンツの開発・編集制作などを通して、日本語を含めた日本の良さを世界に伝えたいと思っている。
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