アルクでは毎年、10月に行われる日本語教育能力検定試験日の翌日にアルク作成の解答を公開し、多くの受験者の皆様にご活用いただいています。この解答を見るためには事前に簡単なアンケートに答えていただくのですが、その結果を分析すると、多くの受験者が苦手とする分野が見えてきましたので、2020年に受験される方のためにご紹介したいと思います。(編集長)
アンケート回答者≒本試験受験者
2019年10月28日~12月10日に行われたアンケートの総回答者数は4,769人でした。これは本試験受験者のどのぐらいをカバーしているのでしょうか。
前回、平成30年度の日本語教育能力検定試験の全科目受験者は6,801人でした。アルクが公開しているのは独自に作成した解答だけですので、アンケートに答えて解答を見ているのは、ほぼ全員、実際に本試験を受験された方と考えて間違いないと思います。そうなると、おおよそ受験者の実に7割の方が、この解答速報にアクセスしていることになります。
さらに、いくつかの属性を見てみると、アンケート回答者と本試験の受験者(本試験の主催団体であるJEESから発表されている情報)の傾向が、おおよそ一致していることが分かります。
Q 性別は?
アルクのアンケート回答者:本試験受験者
【女性】72.7%:71.1%
【男性】27.3%:28.8%
Q 年代は?
アルクのアンケート回答者:本試験受験者
【20代】19.9%:20.9%
【30代】17.9%:16.6%
【40代】23.1%:20.8%
【50代】22.8%:22.7%
Q 今回が何回目の受験でしょうか?
アルクのアンケート回答者:本試験受験者
【はじめて】71.9%:68.5%
【2回目】17.1%:19.3%
【3回目】6.4%:6.9%
【4回目以上】4.7%:4.6%
いかがでしょうか。数値は極めて近似しており、カバーしている人数も含めて考えると、アルクの日本語教育能力検定試験の解答速報の回答者の傾向が、ほぼ本試験の傾向を示していると言っていいでしょう。
本試験受験者が苦手としているものは4つに絞られる
Q:今回の試験について難しかった点、やさしかった点など、受験した感想をご自由にお書きください。
残念ながら、「やさしかった点」について言及している回答はほぼありませんでした。ほとんど全ての回答者が「難しかった点」についてコメントしています。さらに、その難しかった点は、自由記述でありながら、ほぼ4つに集約できることが分かりました。
その4つの点は、多くの本試験受験者が試験終了直後に難しかった・できなかったと感じたところです。逆に言えば、次回、日本語教育能力検定試験を受験する予定の方は、この4つの苦手を克服することが重要になります。
それではこの4つの苦手分野に触れながら、合わせてその克服法についてもご紹介します。
苦手第1位:聴解・音声
「聴解が難しかった」「聴解問題」「聴解試験」「音声」「音声学」「音声が難しかった」「リスニング」……(以上、アンケートに多かった回答から)
実は聴解試験は、できる人は満点に近いスコアが取れ、できない人は全くスコアが伸びないところです。苦手な人に話を聞くと、音声記号や専門用語がたくさん出てくるので、「食わず嫌い」「対策を後回し」にしてしまう人が多いようです。しかし、聴解・音声は他の分野と比べて試験範囲や出題パターンがかなり決まっているので、実は対策はしやすい分野なのです。
まずは基本的なこと(アクセント・イントネーション・調音点・調音法・口腔断面図の見方など)をきちんと理解すること、そのために、特に聴解試験が苦手な方は、本を読むだけではなく、分かりやすい説明の講義(音声)を繰り返し見る(聞く)のが有効です。
苦手克服のためにお勧めする教材は…
『DVD 日本語教育能力検定試験パワーアップ特講』
アルクの検定対策セミナーの人気講師4名が分野別に解説するDVD教材(4枚組)です。
苦手第2位:記述式
「記述式」「記述式問題」「記述式が難しかった」「小論文」「作文」「論文」「筆記」……(以上、アンケートに多かった回答から)
記述式問題は日本語教師としての実践力を見る問題です。本来であれば、受験者一人ひとりに日本語の模擬授業をしてもらい、それを評価できればいいのですが、多くの受験生の授業を評価することが物理的に無理なことから、「実際にどう教えるか」「説明するか」を記述させることで、模擬的に教育現場での対応能力を見ているものです。
受験される方の中には日本語を教えた経験がない方が多いと思われますので、記述式問題を苦手と感じるのは自然なことです。実際に日本語を教えていらっしゃる現職の日本語の先生が有利な分野です。
苦手を克服するためにお勧めする教材は…
『改訂版 日本語教育能力検定試験に合格するための記述式問題40』
一冊を通して「論理的に書く力」を無理なく養える本です。記述式問題対策の決定版。
苦手第3位:試験Ⅲ
「試験Ⅲ」「試験Ⅲが難しかった」「Ⅲが難しかった」「試験Ⅲに聞いたこともない用語が出てきました」……(以上、アンケートに多かった回答から)
本試験の出題要綱では、試験Ⅲは「出題範囲の区分横断的な設問」となっています。試験Ⅰは「出題範囲の区分ごとの設問」ですので、試験Ⅲに対応するためには1問1答的な用語の暗記だけではなく(それがあることが大前提ですが)、その知識を連携させた総合的な理解が必要になります。また、この後の「苦手第4位」にも関係しますが、それを制限時間内で解き終えるために、総合形式の問題に慣れることが必要です。
質の高い問題を数多く解き、しかも単に解くだけではなく、間違えたところをきちんと復習して着実に理解を深めることが大切です。
苦手を克服するためにお勧めする教材は…
『新版 日本語教育能力検定試験合格するための問題集』
本番に備えるための試験対策問題集。詳しい解説が付いた区分別演習問題と聴解CD(2枚)が付いています。
苦手第4位:タイムマネジメント(問題を解くスピード)
「時間が足りなかった」「時間配分が難しかった」「時間がなかった」「時間がない」「問題数が多い」「出題量が多い」「体力を使う試験でした」……(以上、アンケートに多かった回答から)
これは、ここまでご紹介した苦手な「分野」とは性質が違いますが、大変多く寄せられた回答です。タイムマネジメントには「基礎力」と「応用力」が必要です。問題を読んでキーワードの意味がすぐに分かる基礎力と(例えば、「スキミング」と「スキャニング」、「所記」と「能記」、「内の関係」と「外の関係」のようなものの違いが瞬時に頭に浮かぶこと)と、それらのキーワードが散りばめられた長い複合問題を読んで理解し、決められた時間内に最後まで解き終える(問題を読む、理解する、正解を見つける/間違いを見つける)ためのスピードを最後まで持続できることがタイムマネジメントには必須です。
苦手を克服するためにお勧めする教材は…
『改訂版 日本語教育能力検定試験に合格するための用語集』
「基礎力」ならこちら。検定試験の過去問18年分に出ている用語をリスト化し、出題形式や出題回数を徹底分析した用語集です。
『2019年日本語教育能力検定試験合格するための本』
応用力ならこちら。受験に必要な情報や日本語教育についての記事も掲載です。
「日本語教育能力検定試験 合格パック2020」をお勧めする理由
ここまでご紹介した「苦手分野を克服するためのお勧めする教材」すべてと、日本語教師になるのに必要な基礎的内容をカバーした「NAFL日本語教師養成プログラム」を一緒にパッケージにしたのが、現在発売中の「日本語教育能力検定試験 合格パック2020」です。
これまで多くの検定受験者を見てきて、残念な結果に終わってしまう方は、大体以下の3ついずれかに当てはまることが多いです。①学習が続かない、②あれこれ手を付けて回り道をしてしまう、③重要分野・苦手分野が漏れてしまう。
「日本語教育能力検定試験 合格パック2020」の中の「NAFL日本語教師養成プログラム」で計画的に学習を進めれば途中で挫折することもありませんし、必要なものだけを厳選してパッケージにしてありますので回り道せずに、苦手とする人が多い重要分野をしっかりカバーできます。
実は、「日本語教育能力検定試験 合格パック2020」をお勧めする理由はそれだけではありません。皆さんが無事、日本語教育能力検定試験に合格し、日本語を教え始めた時に、必ずいろいろと分からないことが出てきます。それは学習者から聞かれた文法項目かもしれませんし、学校で使っている教材の内容かもしれませんし、クラスが今一つ盛り上がらない理由かもしれません。そんな時に、この教材に立ち返っていただければ、必ずどこかに解決するための答えやヒントがあります。
日本語教育能力検定試験に合格するための教材ではありますが、合格後も日本語を教える時にずっと手元に置いておいて使える「お守り」のような教材であることも、「日本語教育能力検定試験 合格パック2020」をお勧めするもう一つの理由なのです。
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