今年3月まで公立高校の英語教員をされていた黒沢 毅先生。6月上旬に着任し、7月中旬から始まった3学期からは8年生から12年生(中学2年生から高校3年生)までの授業を単独で指導されています。今回は、主に11年生と12年生のことについてです。日本語を学ぶオーストラリアの高校生はどんな生徒たちなのでしょうか。
10年生からの日本語授業は通年での選択
「月末には学校で飲み会?教師としての働きやすさ」でも書きましたが、本校では7年生と8年生は、1年4学期あるうちのどこか1学期で10週間の日本語を必修として取ります。僕が担当している8年生も、7年生の時にどこかで日本語の勉強をしていますが、日本の高校生に当たる本校の12年生6人、11年生8人、10年生23人は、日本語を通年で選択して学んでいます。そのため、10年生にもなるとほとんどの生徒たちはひらがな、カタカナ、そして基本的な漢字は読み書きできますし、初歩的な日常会話も問題なくできる生徒が多くいます。そんな中、日常的に日本語を使う機会が校外にはほとんどありませんので、日本語ネイティブとして、授業の中でいかに日本語に接する機会を多く作るかが大切になってくると思います。
個性あふれる高学年の生徒たち
本校は、僕が3月まで勤務していた公立高校と姉妹校提携をしています。そのため毎年7月末から10日間程度、日本の高校生20名を受け入れています。日本語の授業はもちろん、他教科の授業にも参加してもらいつつ、バディ宅にホームステイをしながら普段の学校生活を送ります。最初はぎこちなかった生徒たちが、日本語と英語でのコミュニケーションを通して絆と理解を深めあい、みんなで涙を流しながら抱き合って別れを惜しんでいるシーンを見ると、こちらも胸が熱くなります。
10年生から12年生たちは日本のアニメや漫画が好きで日本語を始めた生徒たちも多いのですが、やはりこうした姉妹校の生徒の受け入れを望んで日本語を選択したという生徒たちが多いようです。同時に、本校からは隔年で日本旅行を実施しています。姉妹校訪問とホームステイだけでなく、それまで授業で学んだ日本の都市や観光名所を実際に訪れたり、教科書や動画などで学んだ食べ物を実際に味わってみたり、ホテルではなく旅館の布団のうえで雑魚寝をしてみたりと、オーストラリアではなかなか経験できないそうした文化体験全てが彼らにとっては貴重な財産となっていることは言うまでもありません。
さて、そんな本校の高等部の生徒にはユニークな面々が揃っています。
卒業した12年生の中には、学校主催の旅行で2度日本を訪れ、家族旅行でも日本へ行くほど日本が好きで、将来は日本で英語を指導してみたいと思っている生徒もいました。また、日本のアニメやゲームが大好きな生徒は少なくありません。そして、そうした日本のアニメや漫画で覚えた日本語を教室で使って喜んでいる生徒、また、習字をやるたびに「変形双五角錐」や「高足蟹」、「琵琶鱒」など、ネイティブにとっても難しい漢字を探してきてはネイティブの僕の反応を楽しんでいる生徒もいます。
6月からは、3週間に1曲のペースで日本語の歌を導入してきました。彼らの日本語の発音練習はもとより、仮名を素早くリズムに合わせて正確に読めるためのトレーニング、新出漢字の学習、内容理解、そしてもちろん、みんなで楽しむことを第1の目標としてやってきました。そしてこれまでに「海の声」、「上を向いて歩こう」、「ベストフレンド」、「やさしさに包まれたなら」、「残酷な天使のテーゼ」などは、どれもみんな上手に歌えるほどになりました。中には「残酷な天使のテーゼ」を何も見ずに歌える生徒もいるくらいです。感心します。
Short Exchange Programで一時帰国
最後に、そんな11年生と10年生の数名を引率し、12月中旬から一時帰国をすることになっています。生徒たちはホームステイをしながら日本の高校で2学期末の学校生活を体験します。隔年実施している日本旅行とはまた異なり、日本の高校生と一緒に10日間の学校生活を共にしながらバディ宅でのホームステイをする経験は、たくさんの気づきと学びを得られる貴重なものとなるはずです。
彼らが日本語の授業で学んできた内容が実際の日本の生活で生かされ、今回学んだこと、そして気づいたことを教室に持ち帰り、授業で学ぶモチベーションとしてくれること、また、クラスメートや後輩たちにも、それらをバトンタッチしてくれることを期待しています。10日間という限られた時間ではありますが、間もなく、そうした彼らの成長を間近で見ることができるであろう半年ぶりの一時帰国が楽しみでなりません。
黒沢 毅(くろさわ・たけし)
神田外語大学外国語学部英米語学科卒業後、米国ミズーリ州カンザスシティ・グランドビュー高校にて日本語教師として勤務。帰国後複数の高校に勤務。埼玉県の公立高校で英語教師をしているときに姉妹校でもあるオーストラリアのシャロームカレッジに20名の生徒を6回引率。その縁から、日本の高校教師を辞め、2019年から日本語教師としてシャロームカレッジで勤務している。
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