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今後の日本語教育を見据えたカリキュラムのつくり方②ーコースフレームワークとモジュールボックス
カリキュラムを一から構想するとき、具体的にどこから手をつければいいでしょうか。カリキュラム編成の考え方はわかったけれども、作業手順がわからない、ということもあるでしょう。そういう場合にぴったりの方法が「令和45年度 文化庁委託「日本語教育の参照枠」を活用した教育モデル開発事業【留学分野】」で日本語教育振興協会チームによって開発された「コースフレームワーク」と「モジュールボックス」というツールを利用する方法です。具体的な使い方を見ていきましょう。(竹田悦子・内田さつき/コミュニカ学院)

まずは「トリセツ」をダウンロード

文科省のHPから、まず、「留学(「コースフレームワーク」と「モジュールボックス」を活用したカリキュラムの作り方の例)というPDFをダウンロードしてください。 

この文書が、「コースフレームワーク」と「モジュールボックス」の使い方のいわばトリセツであり、これに従って作業を進めていけば、参照枠に沿ったカリキュラムづくりができるという、なかなかのスグレモノです。時々、「→詳しい説明は〈報告〉p. 〇~〇」とあるので、必要に応じて、同じく文科省のHPから、「留学(「日本語教育の参照枠」を活用した教育モデル開発事業【留学】〈報告〉)」をご覧ください。 
https://www.mext.go.jp/content/20240723-mxt_nihongo02-000036709_8.pdf

どこかで「モジュールボックス」の話は聞いたことがある、一度開いて覗いてもみた、でも、これ、どうやって使うの? これでカリキュラムがつくれるの?? となって、また閉じてしまった、という方も少なくないでしょう。一人で報告書と「使い方」を読んで作業を進めるのはしんどいな、と思われる場合は、文科省の普及事業でも「モジュールボックス」を使ったカリキュラム編成の研修が行われており、今後もあるので、可能なら参加いただくといいと思います。 

カリキュラム作成のステップは

上記「使い方」の16頁にあるカリキュラム作成手順は以下の通りです。 

カリキュラム作成の手順の【例】 

ステップ1:教育理念の確認と明文化 

ステップ2:コースフレームワークを参考にコースの枠組みを決定 

ステップ3:モジュールボックス「基本10モジュール」から重点項目を選定 

ステップ4:学習段階ごとに具体的な活動を検討 

ステップ5:モジュールボックスを活用して「日本語教育の参照枠」と照合 

ステップ6:「日本語教育の参照枠」Can doを活用しながら評価表を作成 

ステップ1で理念を確認し、明文化されたものがなければ、書き起こしますが、理念は単なるお題目ではなく、何を目指そうとしているのかの表明です。ここをゆるがせにしては、整合性あるカリキュラムは成立しません。カリキュラム作成にあたる先生方がチームでディスカッションを重ね、納得のいくものにしましょう。 

ステップ2で最長2年間のコースの枠組を作りますが、ここは対象となる学習者層やニーズ、出口としての主な進路に応じて、各校の特徴が出るところです。主たる対象の属性によっても想定される学習時間はかなり異なります。学期ごとにきれいにA1、A2、B1、B2と進んでいく必要はありません。一口にB2を目指す課程と言っても、B2に少し差し掛かったレベルから、B2はほぼ十全でC1に近いレベルまでいろいろです。入口も漠然と「N5レベル」と言っても、募集条件や選抜方法によってはPreA1からA2ぐらいまで幅が出ます。カリキュラムには何とでも書けますが、絵に描いた餅では意味がありません。ここはぜひ、学習者の顔を思い浮かべながら、現実的に無理のないコースを組まれることをお薦めします。 

ステップ1と2を終えて、3と4の作業に入ったあたりで、またしても、今やっていることを書くのか、新しくつくるべきか、と迷われると思います。前述の話と矛盾するようですが、ここまで来たら、それはどちらでもだいじょうぶです。なぜなら、すでに「今あるもの」の本質的な棚卸しが始まっているので、生かせるものは生かすという考え方でも小手先の改変に陥ることはないでしょう。 

手を動かして、書き始めることが大切

このステップ1から6の各段階は必ずしも直線的に進むとは限らず、一度先に進んでもいくつか前のステップに後戻りすることもあるかもしれません。これまで当たり前のように思っていた学校や自分自身の方針や考え方への問い直しが起こっているわけですから、むしろ、行ったり来たりは当然のことです。この1から6のプロセスを経たのちに、やっと「では、具体的な教材は何を使う? オリジナルでつくる? 既存の教科書を使う?」という話が出てくるはずです。少なくともステップ4までが終わるまでは、「教科書は?」という心の声が聞こえても、ぐっとこらえて踏みとどまっていただきたいと思います。 

ステップ3と4では、実践を重ねてきた先生方の知識と経験がものを言います。最初は多少戸惑ったとしても、とりあえず、手を動かして何か書き始めてみることをお薦めします。手を動かしているうちに、「ここにこれが必要だな」「こっちを先にしたほうがいいかな」「やっぱりこうしよう」とアイデアが浮かんで、シートが埋まってくるはずです。具体的な活動が思い浮かばない、という場合は、モジュールボックスの各モジュールを開くと、「学習活動例」が出てきます。また、「使い方」の3043頁には、A1からB2までの各レベルごとに優先するモジュール例と、対応する「主な授業活動」の例と、それぞれ1週間分のカリキュラムの例がCan-doや時間割入りで出ています。これはあくまでも一例であって、どんな食材(Can-do)を使ってどんなメニュー(活動)にするか、また、同じメニューでもどんなレシピ(手順・方法)を取るかは先生方次第です。 

作業はできるだけチームで

ここまで来ると、かなり具体的にカリキュラム作成のイメージが浮かんでくるのではないでしょうか。とにかく大切なのは、頭の中だけで考えるのではなく、手を動かしてみることです。実際に手を動かしてカリキュラムを書き始めようとしたときに、「コースフレームワーク」と「モジュールボックス」が威力を発揮し、強力な助っ人になってくれることでしょう。その際、一人で孤独にやるのではなく、できるだけチームでわいわい話し合いながら進めましょう。その作業はチームの信頼や連帯感を高めてくれるでしょう。そして、このような本質的な問い直しを経て、チームで完成させたカリキュラムはその機関での実践のよりどころとなるでしょうし、そのような筋の一本通ったカリキュラムを持つ学校が増えていくことで、業界全体の質も上がっていくと思います。パラダイムの転換期に居合わせた私たちの責任は重大です。後からふりかえったときに、あの時に踏ん張ったから、しっかりしたカリキュラムの土台が出来た、と胸を張れるように、この大仕事を楽しみながらチャレンジしていきましょう。 

【セミナーのご案内】

「日本語教育の参照枠」に沿ったカリキュラム編成① ~モジュールボックスを使って構想する教育の理想~(概要編)

日時:2024年11月29日(金)20:00-21:30
対象:国内の日本語学校の教師・関係者でカリキュラム作成に携わる方
講師:竹田悦子(コミュニカ学院顧問)、内田さつき(コミュニカ学院校長)
形式:オンライン(ZOOM)
参加費:無料
詳細・申込:https://20241129-alcnihongo.peatix.com

※②実践編は満席につき締め切らせていただきました。

プロフィール

内田さつき
コミュニカ学院校長。2001年よりコミュニカ学院勤務。教員養成や『読む力』シリーズの出版に関わる。文部科学省委託主任教員研修実施委員、日本語教育学会支部活動委員、ビジネス日本語教育研究会幹事。外部の多様な機関と連携しながら、学生が社会に主体的に発信できる力を養うための授業実践を行っている。四人の男子の母として育児と仕事の両立に奮闘中♪

竹田悦子
コミュニカ学院顧問。高校英語教諭を経て、1990年よりコミュニカ学院勤務。カリキュラム改訂や『読む力』シリーズの出版に関わる。『「日本語教育の参照枠」活用のための手引き』協力者として留学分野の事例を執筆。「『日本語教育の参照枠』を活用した教育モデル開発・普及事業〈留学〉」に参加。ノンフィクション出版翻訳にも携わる。奥田純子基金*の運営に奮闘中♪

*奥田純子基金 https://sites.google.com/communicainstitute.com/yumekikin

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