10月の日本語教育能力検定試験まであと少しとなりました。「記述式問題」は試験Ⅲの最後にある問題です。記述式問題で高得点を取るための解答のコツを知りたい、またどのように準備しておいたらいいのか知りたい、という方のために、今回は記述式問題の解答法、注意点、対策などについて考えてみたいと思います。(編集部)
記述式問題とは?
まずは記述式問題とは何なのか、おさらいしてみたいと思います。記述式問題は問題に対する解答を論述形式で、原稿用紙に400字程度、手書きで作成し提出します。例年、試験Ⅲの最後に出題され、試験Ⅲの100点満点のうち、20点の配点となっています。試験Ⅰ、Ⅱ、Ⅲのマーク式解答の得点で上位6割に入った人の解答のみが採点対象となります。
記述式問題で問われることは、言語にかかわる事象や教育実践の方法・内容に対する考え、主張です。唯一の正解を求められているわけではなく、考え・主張を論理的に正確な日本語を使って書くことができるかを測る問題となります。
解答作成の際のポイント
では、解答作成の際、どんなことに注意して作成するといいか、挙げてみたいと思います。
1 何を問われているのか、しっかり把握する
「問題をよく読み、いったい何を問われているかを把握することが大切」と言うと、何を当たり前のことを、と思うかもしれません。しかし、試験中はどうしても焦って問題を読んでしまいますし、もし慌てていなくても「何を問われ、何を答えるのか」を思い込みで把握してしまったり、問いとはズレた解答を作成してしまったりするのは、ありがちなことです。
『改訂版 日本語教育能力検定試験に合格するための記述式問題40』(アルク)では「問題をよく読み、問われている部分に下線を引き、さらに問題用紙の余白に問われていることをメモする」ことをおすすめしています。そこまでしたほうがいいぐらい、「問われていることを読み違える」「把握したつもりで問いとはズレた解答をしてしまう」というのは起こりがちだと認識しておいたほうがいいでしょう。
2 書き始める前に解答の流れをメモ
400字程度の解答ではありますが、記述式問題の特徴の一つは「手書き」ということです。パソコンで入力するように、途中にやっぱりこれを挟もう、と気軽にできませんし、あまり何度も書いたり消したりして文章を直すのは効率的ではありません。そこでおすすめなのは、何をどんな順番で書くか、いわゆるアウトラインをまずはメモしておくことです。論理的に書く力を測られますから、「主張→根拠→再度主張」などの型にある程度はめて全体の流れをメモし、一貫性のある文章を書く準備をしてから実際に書き始めるのが効率的です。
3 原稿用紙に書くときの注意点
実際に原稿用紙に書くときですが、論述文ですので「です・ます」体ではなく「だ・である」体で書いたほうがいいでしょう。誤字脱字、原稿用紙の使い方、にも気を付けましょう。よくある質問に、冒頭は一マス空けたほうがいいか、段落は分けたほうがいいか、というものがあります。一マス空けたから・空けなかったから減点、段落を分けたから・分けなかったから減点ということはあまり考えられませんが、『記述式問題40』では400字程度という長くない文章ですので、一マス空けない、段落も分けない書き方をおすすめしています。文字数は例年、400字程度の指定ですので、380字以上は書いたほうがいいでしょう。
試験前の準備、対策
次に、試験前に準備しておいたほうがいいこと、対策として考えられることを挙げてみたいと思います。
1 解答するタイミング、解答に使う時間を考えておく
試験Ⅲの解答時間は120分です。そのうち、どのぐらいの時間を記述式問題に使うのか、戦略的に考えておく必要があります。記述式問題以外の問題は80問ですので、仮に記述式問題に20分使ったら80問を100分で、30分使ったら80問を90分で解く必要があります。もし、記述式問題以外を90分で余裕を持って解けるようなら、しっかり30分使って解答するのもよいでしょう。もしくは、20分で記述式問題を解答できるよう、訓練しておくという方法もあります。
どちらにするかは、それぞれで選べばいいと思いますが、時間配分については予め計画しておき、「記述式問題に5分しか取れなった」「記述式問題に40分使ってしまって他の問題を解く時間が取れなかった」という事態は避けたいものです。
記述式問題は試験Ⅲの最後にありますが、必ずしも最後に取っておく必要はなく、「途中まで解いたところで記述式問題に切り替える」「問題だけ先に読んでおく」「解答の流れのメモまで先にやっておく」などの方法も可能です。過去問を解くときに、自分に合ったペース、解答順を見つけておくと落ち着いて試験に臨めると思います。
2 論理的に考える訓練をする
先にも挙げましたが、読む相手に論理的に伝わる文章として、例えば「主張→根拠→再度主張」のようなパターンを知っておくのは有効です。そして、ささいなことでもいいので、日ごろから「主張→根拠→再度主張」というパターンで考える訓練をするといい練習になります。例えば、「小学生がスマホを持つことについてどう考えるか」「会議はオンラインのほうがいいか、対面のほうがいいか」「一人暮らしの人は夕飯を作ったほうがいいか買ったほうがいいか」など、書かなくてもいいので「〇〇〇と考える→なぜなら〇〇だからだ。‥‥‥」と、頭で考えるのは、記述問題の訓練としておすすめの方法です。
3 試験の出題範囲の内容について、しっかりとした知識を身に付ける
これも何を当たり前のことをという事柄ですが……今年度の記述式問題でどんな問題が出るのかは当然ながらわかりません。「言語事象」「教育実践の方法・内容」について、時にはキーワードが示され、それについて説明しながら解答を作成しなければなりません。ですので、キーワードとして出た用語について、ふんわりとした知識でなく、自分の言葉で説明できるぐらいの知識を持っておく必要があります。日本語教育の専門用語を理解していなければ問題の意図を正確に読み取れない場合もあるので、試験の出題範囲の内容や用語をそれぞれの関連も含めて理解しておくことが記述式問題の対策にもなるのです。
記述式問題の解答作成は、「感想文」などとは違うということを意識して、人に論理的に伝える文章を作ることが大切ですが、それにはやはり練習が必要です。勉強仲間と解答を読み合い意見を言い合ったり、一度書いたものを、時間を置いてもう一度客観的に読んでわかりやすいか確認したりするのもいいでしょう。論理的に書けるというのは日本語教師になってからも役立つ技術ですので、試験に向けてぜひ身に付けていっていただければと思います。
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記述式対策の決定版! 解答作成のノウハウを「講義編」で解説、手順に沿って自分でも書いてみる練習を「実践編」で行えます。40問の問題例を通して、教育現場での事例もつかむことができます。
★『日本語教育能力検定試験 対策問題集』
新出題範囲準拠! 仕上げとしておすすめの問題集です。
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