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日本語教師プロファイル北琢磨さんー人との関りを大切に、言語の楽しさを知って

 

今回の日本語教師プロファイルでは、東京両国にある「東京明生日本語学院」の学院長であり、日本語教師養成講座1 も担当されている北琢磨さんにインタビューさせていただきました。北さんと言えばX(旧Twitter)やYouTubeでご存じの方もいらっしゃるかと思います。日本語教育、とくに日本語学校をとりまく状況が大きく変わる2024年、日本語学校の当事者としてどのように考え、進めていらっしゃるのか興味深くお話を伺いました。

 

デンマークでの経験と、大学の先生の一言で日本語教師の道に

――日本語教師になったきっかけを教えてください。

私は、学生時代、優柔不断 というか、特に何をするって 目的がなかったんですが、一つのきっかけと言えるのが、デンマークに文化交流のために1ヶ月留学したことです。 大学2年生の時でした。英語を使う練習になるなと思って行っただけだったんですけど、 ある時、日本について紹介するという授業がありまして、柔道を教えたり、書道を教えたり、学生たちで担当を決めてやってたんですけど、 それが全部終わった後に、そういえば日本語ってどうしてこんな風に文字が多いのとか、どういう文法 なのっていろんな人に聞かれて答えられなかったことです。それでちょっと興味を持ちました 。

帰国後、3年生でゼミを決めなければという時、今まであまり接点のなかった先生から「北君、日本語教師に向いてるんじゃないの?」って言われたんです。今でもどうしてだったのか分からないのですが。私は文学部で、日本語学をやってるゼミもあったし、 音楽に関係するゼミもあったりして、音楽とか楽しそうだからやろうかなって思っていたんですけど、その先生の一言で、のほほんと日本語教育を取ることに決めました。

そうしたら、実はその先生は退任なさって、別の先生の下で勉強することになりましたが。3、4年で日本語教育の副専攻も取れたので、大急ぎで取りました。でも副専攻だと、就職活動では主専攻の学生に負けるだろうなと思って大学院に進みました。そこで論文を 書きながら日本語学校で非常勤として教え始めました。実践も知っておいたほうがいいだろうと養成講座にも通いました。

―大学院に通いながら養成講座もですか?

はい、大学院の方で理論を学んで、養成講座は実践という感じでした。養成講座は教育実習が充実してるので必要だろうと思って。大学院での専攻は、言語学全般なんですけど、特に音声学で、音声指導の方までやっていました。

日本語学校で教えてきて

 

――大学院を終えてからは、日本語学校ですか。

大学院時代も日本語教師はやっていたので、そのまま続けようと思った時に3.11が起きました。大学院の卒業式もなくなってしまって。日本語学校では、学生が帰国してしまい、私はまだ新人だったので自宅待機という形になりました。実はしばらくして学生は 戻ってきたらしいんですけど延々と待機と言われ、必要とされていないんだなと思いそこは辞めました。

それでこのまま続けても学生はいないんだろうと思い、だったら海外で教えられるようになろうと思って韓国語を習い始めました。そしたら運よく非常勤先を見つけたんです。それで韓国語も習いつつ、また日本語を教え始めました。それ以降、大学のティーチャーアシスタントをしたり、プライベートレッスンをすることもありますが、基本的には日本語学校で教えてきました。

――日本語学校ではどのような学生さんが多かったのでしょうか。

最初の学校は中国人のみの学校だったんですね 。それで中国の学生に対する教え方をいろいろ考えながらやりました 。次の学校は 多国籍の学校でそこから中国の学生向けじゃないものを考えなきゃいけなくなり、またベトナムの学生が2013年ぐらいから急に入ってきて、その頃常勤を始めたのでベトナム人学生対策というか中国の学生とはまた全然違うんだな と思いました。

 ――音声学がご専門ということですが、ベトナム人学生が増えて音声指導はやりがいがあったのではありませんか。

そうですね。初めはとまどいました。その頃なかなかベトナム語話者に関する情報がなく、「やゆよ」とか「ざ」とか典型的な発音の苦手さに直面して、教えつつ論文を引っ張り出してきて探してということはやっていました。でも、その頃から発音指導が専門のくせに発音指導をあんまりしなくてもいいんじゃないかという考えにもなってきました。 日本人のカタカナ英語もそろそろ許してほしいと思うのと同様に、ベトナム人日本語があってもいいんじゃないかとその頃思い始めました。

――今の学校はどんな学生さんが多いのでしょうか。

コロナの前までは 中国、 ベトナムの学生が多かったですが、今は ウズベキスタンとロシアと中国の学生が多いです。

――現在は日本語学校の校長と養成講座を担当されているんですね。

はい、養成講座は2016年からですけど、その時から音声学を担当していて、また隣接領域や教授法系、コースデザイン等の科目を担当しています。今年度は忙しくて養成講座だけなんですけど、日本語学校の授業も去年は、持っていました。代講を頼まれればやりますし。

日本語教育の法制化について

――日本語学校の当事者として、今回の一連の日本語教育の法制化についてどのように感じていらっしゃいますか。

日本語学校が文部科学省に認定され、日本語教師が国家資格になるのはすごくいいことだと思います。でもそのために自由度がなくなるのはちょっと問題かなぁとも思います。これをやらなきゃいけない、あれをやらなきゃいけないということが多く。国としては日本語学校に変な学校になってほしくないという思いが強いんだろうなと言う印象を受けています。真っ当な学校にするために、いろいろがんじがらめにした結果、面白味が減ることのないようにしてほしいです。

少し前のことですが、ある研修会でいろんな学校が特色をホームページにアップして見られるようにするということが話題になった時に、「それだとなかなか土台に上がれない学校とかも 出てくるんじゃないか。大きな学校に負けちゃって、うちは潰れちゃうんじゃないか」と質問した人がいたんです。すると登壇者の方が、大きな日本語学校であっても海外から見ればどこも同じなので、日本語学校がそれぞれの特色を出していったほうがいいとおっしゃったんです。それがすごく印象に残りました。

就労目的だったり生活目的だったり、 今なら当たり前にそうやって考えてますけど、当時は全然考えてなかったこと なんですね 。その発言は凄く面白くて、自分の日本語教育 みたいなのがあっていいんだなと思いました(実際にやろうと思ったら、かなり大変だ? ということには気づきましたが)。

認定日本語教育機関への準備

――現在、校長や教務主任をやってらっしゃる方は、カリキュラム作りが大変なんじゃないかとお察しするのですが。

そうですね。ただずっと情報は追っかけていたので、日本語教育の参照枠だったり、Can-doだったりは、少しは勉強している気がします(足りませんが)。うちの講師陣も少しずつ慣れてきたのかなって感じです。うちは現在、初級教科書に『いろどり 生活の日本語』(国際交流基金)を使っているんです。その前は『文化初級日本語』(凡人社)でした。

 『いろどり』にしようと思ったのは 教科書が無料っていうのが一番だったんですけどね。留学生だって生活するじゃないか。だから生活の日本語は必要だと。

――『いろどり』にするとなった時に先生方の反応はいかがでしたか。

こういう教科書 なんですとか、ネットにはこうやって行動中心主義を説明している方がいらっしゃいますよとか、スライドも見せつつ、ちょっとずつ慣れてもらって。初めは「どうやればいいんですか」なんて言われましたが、今ではあんまり言われないですね 。ただ『いろどり』だと書くことが少ないので、そこは別の教材をプラスしています。各国語版が豊富なので悪くないと思っています。

今学校で教えている先生方はうちの養成講座の卒業生がほとんどなので、私が養成講座の講師もやっていますし、あの人が言ってるんだからみたいに、それほど抵抗感がないようです。

――今回の日本語教育の参照枠の考え方に沿ったカリキュラム作りはそれほど新しいことをやるという感じではないということですね。

特に初級に関してはそうですね。ただ全体のカリキュラム像ということになると、2年でB2コースまで設定しなきゃいけないというのが分かりつつも難しいと思います。 

登録日本語教員へ

――所属している先生方に関してはいかがでしょうか。

今うちにいらっしゃる先生方は大体Cルート2で応用試験のみ必要だという方々です。もともとうちは日本語教育能力検定試験対策講座をやっていて、 応用試験の勉強はそれに結構近いので、 こんな感じになるでしょうねとお話しています。一緒に見て勉強しようねって話をしたりとかしてますし。養成講座でこちらが積極的に授業をやってるのを、講師はみんな知っているのであんな感じで応用試験の勉強させてくださいと言っています 。

最初は、登録日本語教員になるのに自分はどのルートだろう? って一瞬不安にはなったようですけど、 私たちがしっかりルートはこれですよっていうのを見せていますので。うちの養成講座は必須の50項目を抑えていて、経過措置のやつも乗っかるので基礎試験は必ず免除になります 。

人との関りを大切に、言語の楽しさを知って

――これから日本語教師になりたい人に一言お願いします。

目の前に転がっている日本語を楽しんでくださいっていう風に言おうかなと思いました。 例えばなんでこんな言い方するんだろうとか。この発音面白いとか、これ何かの役に立つかも? でもいいですが、日本語教育に関係せずとも日本語って面白いなっていうところからスタートして、言語って面白いなと思ってもらえるといいと思いました。

それから、多分これから教師になると、どんな仕事でもね、辛い時ってあると思うんですけど、人との接点を楽しんでほしいなと思います。 日本語を教える仕事ですけど、学習者がいないとできない仕事なので、人との楽しみ方っていうのかな、それを楽しんでもらいたいなと思っています。結局学習者がいないと教材作るにしてもできないし、学習者と話してその人と楽しむというかその人と一緒に成長するでもいいですし、人との関りを大切にしてほしいなと思います。

――これからやっていきたいことは?

教師の研修に携わるということでしょうか。日本語教育振興協会で運営委員の一人として初任者研修を担当させてもらったり、勤務校で養成講座も担当しています。

それから自分の経験や知識を形として残したいなとは思っています。それでXでは「#音声学の沼」というハッシュタグをつけて残しています。いろんな日本語教師の先輩方などでも、ああ、あんなことを言っていたなとか、結構いいこと言っていた、それはいらなかったな等あると思うんですが、たとえいらなかったことでも残しておくことが必要じゃないかと思っています。

そして日々の気づきを楽しむことですかね。これから日本語教師を目指す方への一言でもいいましたが、日本語の面白さに気づくということです。「#何でも教材化」というハッシュタグとして使っていますが、駅で見たポスターなんかで「は」と「が」の勉強に使えそう! と思ったらすぐに写真を撮って、アップする等やっています。日本語とは関係なく、ただ料理の写真を載せる「#ぽよん」もやっています。

  1. 東京明生日本語学院には夜間の420時間日本語教師養成講座と公共職業訓練としての日本語教師養成講座があります。後者はハローワークでの申し込みが必要です。
  2. 登録日本語教員資格取得ルートのうち、現職者で必須の50項目に対応した課程修了者に対応するルート。
取材を終えて

日本語学校の校長である北先生ですが、お話してみると全く固い雰囲気のない方でした。Xのプロフィールにあるモットー「明日からがんばる 今日はちょっとだけがんばる」にも共感することしきり。日本語教師として日々の気づきを楽しむという姿勢も大切だなと思いました。

取材・執筆:仲山淳子

流通業界で働いた後、日本語教師となって約30年。7年前よりフリーランス教師として活動。

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