2023年の日本語教育界の大きな話題の一つは、登録日本語教員ではないでしょうか。現在日本語を教えている人やこれから日本語教師になることを考えている人向けに、登録日本語教員になることのメリット、登録日本語教員になるためのルート、今後のスケジュールについてなど、登録日本語教員に関する情報をまとめておきます。
登録日本語教員を目指した方がいい?
2023年5月に日本語教育機関認定法が成立しました。これは、在留外国人が増加し多文化共生社会が発展する中で、日本語教育を担う専門性を持った日本語教師が質的にも数的にも十分ではないという現状認識から定められた法律です。
この法律により、認定日本語教育機関で教えるには登録日本語教員にならなければならなくなりました。
認定日本語教育機関とは、現状の告示機関制度の下で留学生を受け入れて日本語教育を行っている日本語学校はもとより、就労や生活といった分野においても、その日本語教育課程が文部科学大臣によって認定された機関です。
今後、認定日本語教育機関が増えていくとともに、認定日本語教育機関で教えるには登録日本語教員の資格を持っていることが就労条件の一つになることから、これから日本語教師を目指す人は登録日本語教員の資格を取ることのメリットは大きいと思われます。
どうすれば登録日本語教員になれる?
これから日本語教師を目指す方が登録日本語教員の資格を取得するには、大きく2つのルートがあります。1つは養成機関ルート、もう1つは試験ルートです。
養成機関ルートは、登録日本語教員養成機関(養成講座の「座学」に当たる部分を担う機関)や登録実践研修機関(養成講座の「教育実習」に当たる部分を担う機関)を経た上で、日本語教員試験の応用試験に合格するというルートです。
試験ルートは、養成機関を受講せずに、日本語教員試験の基礎試験と応用試験に合格するルートです。但し、この場合も実践研修(実習)は受けなければなりません。
既に教えている人はどうしたらいい?
既に日本語を教えている人のためには経過措置が設けられます。この経過措置のルートがちょっと複雑なのですが、日本語教育能力検定試験の合否および合格の時期、養成課程修了の時期および養成課程の内容などによって、細かく分かれています。
簡単に説明すると以下のようになります。
1)既に日本語教育能力検定試験に合格している人は?
合格したのが2002年以前の試験の場合は、講習Ⅰ(7.5時間)と講習Ⅱ(15時間)を受けて、各々の講習修了認定試験に合格すれば、登録日本語教員として登録ができます。
合格したのが2003年以降の試験の場合は、講習Ⅱ(15時間)のみを受けて、講習修了認定試験に合格すれば、登録日本語教員として登録ができます。
但し、いずれの場合も「現職者」であることが条件です。
2)既に養成課程を修了している人は?
「必須の50項目」対応の養成課程を修了している場合は、日本語教員試験の応用試験に合格すれば、登録日本語教員として登録ができます。
「必須の50項目」対応前の養成課程を修了していても、「5区分の教育内容」を実施している養成課程の場合は、講習Ⅱ(15時間)を受けて講習修了認定試験に合格し、さらに日本語教員試験の応用試験に合格すれば、登録日本語教員として登録ができます。この場合は、「現職者」であることが条件です。
修了した養成課程が「5区分の教育内容」にも該当しない場合は、講習Ⅰ(7.5時間)と講習Ⅱ(15時間)を受けて各々の講習修了認定試験に合格し、さらに日本語教員試験の応用試験に合格すれば、登録日本語教員として登録ができます。この場合も、「現職者」であることが条件です。
ここまで何度も「現職者」という条件が出てきましたが、ここで言う「現職者」の定義は、2019年4月1日~2029年3月31日の間に法務省告示機関で告示を受けた課程、大学、認定日本語教育機関で認定を受けた課程、文部科学大臣が指定した日本語教育機関(認定を受けた日本語教育機関が過去に実施した課程)で日本語教員として1年以上勤務した者となっています。
また、養成課程修了の場合は、学士以上の学位が必要です。
養成課程を修了された方は、自分が修了した養成課程が上記のどれに該当するのか不明な方も多いと思います。これについては、文化庁が各養成課程の確認を行い、どの養成課程がどのルートに該当するのかの一覧を令和5年度中(つまり2024年3月31日まで)に公開することになっていますので、それまでお待ちください。
3)検定試験にも合格せず、養成課程も修了していない人は?
日本語教員試験の基礎試験と応用試験の2つの試験に合格する必要があります。詳細は、文化庁が作成したフローチャートをご確認ください。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/kikan_toroku_wg/wg_05/pdf/93963401_05.pdf
「現職者」でない人は?
過去に日本語教育能力検定試験に合格したり、「必須の50項目」対応以前の養成課程を修了したりしているが、「現職者」ではない人はどうしたらいいでしょうか。
「現職者」の定義が前述した通り、2019年4月1日~2029年3月31日の間に所定の機関で日本語教員として1年以上勤務した者となっていますので、法務省告示の日本語学校などで日本語教員としてのキャリアをできるだけ早くスタートさせるのがいいと思います。
今後のスケジュール
日本語教員試験の試行試験が2023年12月10日に全国5カ所で実施されます。この試験問題の一部は2023年度末(つまり2024年3月末)までに、試行試験結果報告書として公開される予定です。
2024年は、認定日本語教育機関や登録実践研修機関・登録日本語教員養成機関の申請期間があり、その後、認定日本語教育機関の認定、登録実践研修機関・登録日本語教員養成機関の登録が行われ、2024年度中に登録日本語教員の登録が始まる予定です。
順調に進めば、2025年春からは認定日本語教育機関で登録日本語教員が教えることになるでしょう。
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