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技能実習制度に代わる新制度で日本語能力を重視 ――日本語教育業界に与えるインパクト

政府の有識者会議である「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」は、2123年10月に、外国人の技能実習制度を廃止し、人材確保と人材育成を目的とする新たな制度を創設するためのたたき台を発表しました。たたき台の中では、特に日本語能力の向上の重要性が強調されています。また、この後に行われた11月の会議では、たたき台の修正案が事務局から出されました。ここでは、たたき台と修正案の内容、またその中での日本語教育の位置づけについて見ていきます。

「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」とは

まずは、この有識者会議について説明します。

有識者会議は2022年12月に、政府の「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」の下、技能実習制度・特定技能制度の施行状況を検証し、課題を洗い出した上、外国人材を適正に受け入れる方策を検討し、関係閣僚会議に対して意見を述べることを目的として発足しました。その後、1年をかけて方策の検討が進められてきました。

座長の田中明彦・独立行政法人国際協力機構理事長を含め、15名の委員で構成されています。会は行政・法律・労働関係のメンバーで構成されており、日本語教育を含め教育関係者は入っていないようです。

技能実習制度の問題点と新制度の創設

10月に提出された、たきき台では、日本の現状について「人手不足が深刻化し、外国人が日本の経済社会の担い手となっている」という認識を示し、「外国人材の確保について正面から検討すべき」としています。

また、現行の技能実習制度については、「原則として転籍ができないことや監理団体による監理・支援が十分でない」ことが「人権侵害や法違反の背景・原因となっている」と問題点を指摘しています。

その上で、技能実習制度と特定技能制度を、以下の4つの方向性から見直すべきとしています。

①技能実習制度を解消し新たな制度を創設する。

②新たな制度から特定技能制度へ円滑な移行を図る。

③一定の要件の下で転籍を認め、管理団体・登録支援機関・送出機関を適正化する。

④外国人材の日本語能力を段階的に向上する仕組みを設ける。

わかりやすく言えば、特定技能制度を中心にして、技能実習制度に代わる新しい制度(現在のところ「育成就労(仮称)」)は、特定技能制度の前段階に当たるものに位置づけし直すということになります。そして、人権の観点から指摘の多い転籍の問題を含め制度全体の適正化と厳格化を図るとしていますが、その際に大切な指標が日本語能力になります。

特に転籍については、現在大きな議論になっています。現行の技能実習制度では原則3年間転籍ができないわけですが、たたき台では一定の要件を満たせば就労期間1年後に転籍を認めるとしていました。ところがこれに対して地方からの人在流出を懸念する声に押される形で就労期間を2年間とする修正案が11月に出されています。最終的にどういう結論になるのかが注目されます。

「外国人材の日本語能力を段階的に向上する仕組み」とは

これまでの技能実習制度においては、一部の業務を除いて基本的に日本語能力を求められることはありませんでした。それでは、この新たな制度の中で日本語能力はどのように位置づけられているのでしょうか。

たたき台では、日本語能力を向上させる方策について、具体的に以下のようにまとめられています。

・新制度で就労開始する前にA1相当以上(日本語能力試験N5合格等)または認定日本語教育機関等における相当講習受講

・新制度から特定技能1号移行時にA2相当以上(日本語能力試験N4合格等)

※当分の間は認定日本語教育機関等における相当講習受講によっても可

・特定技能1号から特定技能2号移行時にB1相当以上(日本語能力試験N3合格等)

就労開始時、特定技能1号移行時、特定技能2号移行時、それぞれの段階において必要な日本語力が明示されています。また、日本語支援に取り組んでいることを優良受入れ機関の認定要件にする、日本語教育機関認定法の仕組みを活用して教育の質の向上を図るとしています。前述の転籍においても、その要件の一つに日本語能力が含まれています。

日本語教育業界に与えるインパクト

今回の新しい制度は日本語教育にどのような影響を与えるのでしょうか。

まず、在留資格別の在留外国人の数を確認してみましょう。2023年6月末時点の出入国在留管理庁発表の在留外国人統計によれば、以下のようになっています。

・技能実習:358,159人(前年から+33,219人)

・特定技能:173,101人(前年から+42,178人)

・留学  :305,916人(前年から+ 5,278人)

技能実習と特定技能の人数が非常に大きいことが数字でわかります。現時点での人数もそうですが、前年からの伸び率の大きさにも注目する必要があります。日本の人手不足、労働力不足の状況を見る限り、この傾向今後も続くと思われます。

これまで、日本語教育が大きな対象としてきたのは留学生でしたが、今回の新しい制度は、日本語教師が活躍する場を、就労分野に大きく広げる可能性があると思われます。

たたき台では、「政府は、日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律の施行状況を踏まえつつ、同法の仕組み(認定日本語教育機関や登録日本語教師)を活用し、外国人に対する日本語教育の質の向上を図る。また、政府は、外国人に十分な日本語能力試験等の受験機会を確保するなどの方策を検討する」としています。

技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議

https://www.moj.go.jp/isa/policies/policies/03_00033.html

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