ここでは、令和5年度の日本語教育能力検定試験を受験される方向けに、その傾向と対策について考えます。近年の日本語教育の状況に関する時事問題は、毎年、数値等が変化するために対策が立てにくく、多くの受験者が頭を悩ますところです。ここでは、日本語教育に関する数値(概数)をまとめておきます。出典のURLも載せてありますので、興味のある人は出典にも目を通してみてください。
海外・国内の日本語学習者数
まずは日本語教育の規模を知る上で基本となる学習者数を押さえておきましょう。
海外の調査は国際交流基金が定期的に行っています。「2021年度 海外日本語教育機関調査」によれば、日本語教育実施国・地域は141カ国・地域、日本語学習者は約380万人となっています。国別では学習者が多い順に中国、インドネシア、韓国、オーストラリア、タイ、ベトナムとなっています。また、学習段階別学習者数では中等教育機関が全体の50%を占めています。学習目的別では多い順に「日本語そのものへの興味」「アニメ・マンガ等への関心」「歴史・文学への興味」となっています。
https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/result/survey21.html
日本国内の調査は文化庁が毎年行っています。「令和3年度 日本語教育実態調査」によれば、日本国内の学習者は約12万人となっています。もっともこれは新型コロナによる入国制限の影響がまだ残っていた頃の数値です。2023年7月に令和4年度の同調査結果が出ましたが、ここでは学習者数は21万人と大きく改善しています(ただし、令和4年度の結果は最近過ぎるので検定試験で問われるかどうかは難しいところです)。令和3年度では、機関別では法務省告示機関(留学生を受け入れる日本語学校)が661機関と最大になっています。また、教師の約半数はボランティアが占めています。
https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/nihongokyoiku_jittai/r03/93753802.html
日本で働く外国人の数
日本人の少子化が進む一方、在留外国人の数は毎年増え続けています。
法務省出入国在留管理庁の「令和4年末 在留外国人統計」によれば、在留外国人数は約307万人と初めて300万人を超えました。前年末から11%増加しています。国籍・地域別では、多い順に中国、ベトナム、韓国となっています。また、在留資格別では、多い順に「永住者」「技能実習」「技術・人文知識・国際業務」「留学」となっており、新型コロナの後の留学の大幅な回復ぶりが目立っています。
https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00033.html
また、外国人労働者の数については、厚生労働省が令和4年10月末に「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ」を出しています。それによれば、外国人労働者数は約182万人と過去最高を記録しています。前年から9万人の増加です。国籍別では多い順に、ベトナム、中国、フィリピンとなっています。また、在留資格別では、身分に基づく在留資格、専門的・技術的分野、技能実習の順になっています。身分に基づく在留資格の中には「永住者 」「日本人の配偶者等 」「永住者の配偶者等 」「定住者」が含まれます。また、専門的・技術的分野の在留資格には、「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」などが含まれます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_30367.html
なお、外国人労働者をめぐるホットなトピックには、技能実習制度と特定技能制度の整理があります。技能実習制度は1993年創設され、技術移転による国際貢献が当初の目的とされる一方、人手不足解消のための安価な労働力確保という側面もあります。一方、2019年に創設されたのが特定技能制度であり、労働力となる外国人の受け入れを目的に、拡大の方向で議論が進んでいます。
日本語指導が必要な子供の数
文部科学省の「令和3年度 日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」によれば、日本語指導が必要な児童生徒数は約5.8万人となっており、前回調査から14%増加しています。このうち、日本語指導が必要な「外国籍」の児童生徒数は約4.7万人、言語別では多い順にポルトガル語、中国語、フィリピノ語となっています。また、日本語指導が必要な「日本籍」の児童生徒数は約1万人となっています。日本語指導が必要な子供たちには、「特別の教育課程」が認められています。「特別の教育課程」を受けている児童生徒は外国籍では91%、日本籍では88%に上ります。
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/31/09/1421569_00003.htm
執筆:新城宏治
株式会社エンガワ代表取締役。日本語教育に関する情報発信、日本語教材やコンテンツの開発・編集制作などを通して、日本語を含めた日本の良さを世界に伝えたいと思っている。
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