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外国人に東北のニュースを届ける!河北新報「やさしい日本語ニュース」の取り組み

東北地方の新聞社である河北新報は、外国人に東北の魅力を発信する「やさしい日本語ニュース」というサイトで記事を提供しています。このサイトの記事は宮城県国際化協会(MIA)の日本語講座に携わる鈴木英子さんが監修に協力し、作られています。今回は、漢字テキスト『どんどんつながる漢字練習帳 初級』『同中級』(アルク)の著者でもある鈴木さんにお話を伺いました。

「やさしい日本語ニュース」の立ち上げのきっかけは?

-「やさしい日本語ニュース」は2021年から始まっていますが、立ち上げのきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

宮城県国際化協会(MIA)の日本語サポーターとしても活動していらっしゃる、河北新報の記者の上田さんという方がいるのですが、ある日その上田さんから、「西日本新聞が業界の先駆けとして『やさしい日本語ニュース』に取り組んでいる。河北新報もやりたいと思っているので協力してもらえないか」と連絡がありました。

その話を聞いた時、「やさしい日本語」についてはボランティアの養成講座で話したりはしてきましたが、漢字のように特別意識してきたものでもないし、専門家ではないので私には無理だと思いました。

その後、直接、上田さんに会って話を伺ったのですが、上田さんは「日本語初級レベルの外国人を対象に、身近な話題に触れることで宮城や東北を好きになってもらいたい」という思いをお持ちでした。そして、西日本新聞の記事などを参考に、実際に上田さんが通常の記事を書き換えた二つの記事を見せてもらいました。それを読んだところ、どちらの記事も初級レベルとしては難しくて、「これでは中上級レベルだと思います」とコメントしたら上田さんはがっかりされていました。

改めて上田さんの書かれた記事を読んで気付いたのですが、それは私がこれまでやってきた活動は、「やさしい日本語」を学ぶことにもつながっていたということでした。例えば次のようなことです。

・長年、地域教室の初級クラスを担当したことで、初級で学習する文法や語彙、習得過程について理解できるようになっていた

・東北中国帰国者支援・交流センターの授業でNHKの「NEWS WEB EASY」の記事を使い続けたことで、やさしい日本語の文体や表現の仕方になじんでいた

・漢字教材を作成してきたことで初級から中上級レベルの語彙が判断できるようになっていた

不思議なのですが、上田さんが書かれた記事を読んだら、難しい語彙やこれはちょっとわかりにくい表現、というものがスーっと浮かび上がって見えてきたんです(笑)ですので、専門家ではないけれど、これまで培った知識や経験が役に立つかもしれない…と考え直して、監修のお手伝いをすることに決めました。

上田さんには、「初級者を対象とした、やさしい日本語ニュースは『だいたいこんな感じで』という感覚的なものではできないと思うこと」、「やるとなれば新聞社が出したものとして文字に残ることになるので、しっかり準備して臨む必要があること」をお伝えしました。そしてMIAの方からの助言もあって、まずは記事の書き換えの練習をしていくことになりました。

その後、4カ月ぐらいかけて1、2週間に1度程度、上田さんに通常の記事を初級レベルに書き換える練習をしてもらうことにしました。上田さんが書き換えられた記事を毎回私が見て、コメントと書き換え案を送ります。あーでもない、こーでもない、とやりとりしたことは私にとっても、非常に勉強になり、現在まで続くスタイルとなっています。

――実際にアップしている記事もそのスタイルで作成しているのですね。鈴木さんが直接書き換えたほうが早いのではないか、などとも思ってしまうのですが……

やはりそれは河北新報の記事だから、河北新報の記者が書かなくてはならないんです。それに、記者として、これをみんなに読んでもらいたいという熱い思いで書かれている記事ですから、その思いを届けるためにも、やはり記者の視点で書き換えられるのが結果としていいものになると思います。

上田さんは、「最初は文体を『ですます調』に直し、漢字に振り仮名を付ける程度に考えていたが大間違いでした。新聞記事の書き方そのものについて改めて学んでいます」とおっしゃっていました。現在は次の方が担当されていますが、その方も「わかりやすく書くための修練の場として貴重な経験になっています」とおっしゃっています。

記事の内容が伝わるようにやさしく書き換えるのはとても難しいことで、私も1つの言葉や表現に何時間も悩んだり考え続けています。でも、やはり手をかけて、思いを込めて作ったものは、AIにはできない人の温もりがあると感じていますので、丁寧に考えながら監修に時間をかけています。

監修者として常に意識するのは「誰に何を伝えたいのか」という目的

――そのような思いがあるんですね。なかなか大変な作業だと思うのですが、どのようなことを大切にして取り組んでいらっしゃるのでしょうか。

そうですね、監修者としては、この「やさしい日本語ニュース」は初級レベルの学習者の視点に立って、その方々に何を伝えたいかを大切する、ということを目的としてしっかり持つことです。

上田さんが書き換えられた記事を読むと、取材した相手の気持ちや臨場感を大切にされていることがよくわかります。すると、私もそうした温もりが学習者に伝わるように細かくこだわりたくなります。プロが書き換えたものですから、私が細かくコメントしたり案を出したりすることに気が引ける思いもあるのですが、そんなときはいつも、初級レベルの学習者に「この記事で伝えたいことが伝わるのか」「この記事を読んでよかった、面白かった、いろいろなことを考えることができた、と思ってもらえるか」、ということに立ち戻って、そのためなら遠慮せずにコメントや案を出すことが大事だと思い直しています。

それから、私だけの感覚で書き換えるのはよくないので、語彙や文法レベルなどをどうするかなど、書き換えるための原則を決めて共有することも大切だと思っています。

――具体的には、どのような原則で書き換えを行っているのですか。

語彙や文法は、初級の主要テキストのいくつかに出てくるものや、旧日本語能力試験の出題基準3、4級をリスト化して、その範囲内で書き換えるようにしています。ただ、テキストは日常生活で使われる語彙がほとんどなので、新聞で使われる社会・経済などでの語彙は不足するため、必要に応じてリストに入れるようにしました。

N3以上の語彙を使う必要があるときは文の中で説明したり、カッコ内に説明を補足したりします。文の構造は、複雑な長文にはならないように調整します。書き換えるとどうしても不自然になる場合もあるので、その場合は無理に書き換えず、辞書で調べてもらう方法を取りました。

――書き換えを進める中で気付いていったことや、苦労した点はありますか。

いくつも書き換えていく中で気付いたのは、元の記事の流れのままに書き換えると、展開がよく見えなくなることがあるので、文の順序を入れ替えることが必要な場合もあるということです。また、文を付け足す必要があることもあります。例えば「こいのぼり」という言葉を読めば、日本人ならその形や何のためのものか、などはすぐイメージできますが、「やさしい日本語ニュース」に載せるときには、外国人向けに、まず「こいのぼり」がどんなものなのかの説明から入る必要があります。

一番苦労したのは新聞独特の「リード文」ですね。新聞はリード文で概要を説明し、その後、本文で詳細を述べるのですが、「やさしい日本語ニュース」で学習者にとって伝わりやすい記事を目指すなら、本文だけのほうがいいのです。「リード文と本文」が新聞の型なので、そこが記者の方の戸惑われたところでしたが、時間をかけて納得していただき、現在は「本文」だけの構成となっています。

「楽しく学び合う」ためのワークシート

――「やさしい日本語ニュース」には記事ごとにワークシートも付いていますね。

はい、ワークシートはニュースを読んで、学習者と支援者が楽しく話してもらうために作成しています。学習者からは、「自分で読んで勉強できるので、とてもうれしい」という声も聞いています。ワークシートは記事の読解問題として作っているのではなく、その話題について話すには内容をある程度、理解しておく必要があるので、話すための準備として用意しています。

ワークシートは「やってみましょう」「書きましょう」「話しましょう」という項目で構成しています。まずは「やってみましょう」の〇問題で、記事の中から必要な情報を探して確認できるようにしています。その後、「書きましょう」では全体を読んで話の流れや大まかな内容をつかめるようにしています。地域の教室では「書く」ということに負担を感じる学習者もいるので、ゲーム感覚で取り組めるように虫食いにして、記事の中から答えを探しながら大意をつかめるようにしています。

その次の「話しましょう」では、記事に関連した話題で問いを2つ出しています。「やってみましょう」「書きましょう」で内容を理解したら、「話しましょう」で自分の考えを話したり、他の人の考えを聞いたりすることで、学習者は視野を広げ、理解を深めていくことができます。

「話しましょう」の2つの問いはあくまで例で、ここからどんどん話題を広げてもらえることを期待しています。この活動を通して学習者は日本語を話して、使って覚えていく。支援者も学習者と話すことで共に学び、成長していけると思っています。

実際に支援者からは、「学習者が自分の思いや体験を積極的に話そうとするので、クラスが活性化している」「学習者のレベルに合わせて話題を広げていくことができるので楽しく使っている」という声が届いています。こうした声は、私たちにとって大きな励みになっています。

――これから「やさしい日本語ニュース」を読んだり、ワークシートを使ったりする方たちに向けて、メッセージをお願いします。

東北に住む学習者に向けて、遠い場所にある全国ニュースではなく、「東北」のニュースをやさしい日本語で届けているわけですが、身近な地域の情報なので、読んでみて「行ってみたい、食べてみたい、見てみたい」と思えば行動に移してもらうことができます。楽しみながら身近なニュースに触れることで、住んでいる地域への親しみや関心を深め、日本語の運用力や考える力まで付けていってもらうことができたら、とてもうれしいことです。

また、東北以外にお住まいの方々にも、東北のことを知っていただくよい機会だと思っています。「話してみよう」の話題は地域を問わず、楽しく対話活動を行うことができるように工夫していますので、是非、ご活用ください。

ニュースを監修するときも、ワークシートを作っているときも、どう作ったら「みんなで楽しく学び合えるか」を考えながら取り組んでいます。学習者も支援者も「楽しい!」という気持ちで学び合うことができるものを目指して、これからも携わっていきたいと思います。

――たくさんの人に、利用いただきたいですね。今日はどうもありがとうございました。

kahoku.news

★鈴木さんが携わった漢字テキストはこちらから↓

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