「海外日本語教育機関調査」の最新結果がこのたび発表されました。この調査は海外の教育機関における日本語教育の状況を把握するため、国際交流基金が3年に1回実施しているもの。今回の調査は2021年9月から12月を中心に、世界各地の2万9476機関を対象に行われ、141カ国・地域で日本語教育が実施されていることが確認されました。(編集部)
学習者数の約8割がアジア、上位10カ国・地域の顔ぶれは変わらず
調査結果によると、日本語教育機関数、教師数、学習者数はいずれも前回(2018年度)調査から減少。日本語教育機関数は前回比2.1%減の1万8272機関、教師数は同3.5%減の7万4592人、学習者数は同1.5%減の379万4714人でした。ただし、減少はしたものの、機関数と教師数は過去2番目、学習者数は過去3番目に多い数字でした。
学習者数を地域別に見ると、全体の約8割がアジアでした。国・地域別では上位10位で全学習者の約9割を占め、前回7位と8位の台湾、米国の順位が入れ替わっただけで、顔ぶれに変化はありませんでした。
<学習者の国・地域別上位10>
中国 1,057,318人(前回比+52,693人)
インドネシア 711,732人(前回比+ 2,253人)
韓国 470,334人(前回比-61,177人)
オーストラリア 415,348人(前回比+10,173人)
タイ 183,957人(前回比- 1,005人)
ベトナム 169,582人(前回比- 4,939人)
米国 161,402人(前回比- 5,503人)
台湾 143,632人(前回比-26,527人)
フィリピン 44,457人(前回比- 7,073人)
マレーシア 38,129人(前回比- 1,118人)
大学入試科目の選択者増加を背景に増えた中国、学齢期人口減少の影響を受けた韓国、台湾
前回調査と比べて学習者数が増えた国・地域の1位は中国で5万2693人増、2位はオーストラリアで1万173人増、3位はトルクメニスタンで5606人増でした。中国は中等教育機関での学習者が増えていて、「大学入試の外国語科目に日本語を選ぶ人の増加」が理由に挙がりました。オーストラリアは「一部の州で第二外国語が必修になったこと」、トルクメニスタンは「2015年の二国間関係強化の合意を契機に、日本語教育に力を入れるようになったこと」で増加しました。
一方、学習者数が減った国・地域の1位は韓国で6万1177人減、2位は台湾で2万6527人減、3位はミャンマーで1万6476人減でした。韓国、台湾については「少子高齢化による、学齢期人口の減少」、ミャンマーは「社会の不安定化」が理由として挙がりました。
教育段階別では、約半数が中等教育機関の学習者でした。学校教育における日本語教育は中等教育を中心に堅調だった一方で、学校教育以外(民間日本語学校、企業内研修など)が減少。就労目的などの学習者などで、新型コロナウイルス感染症の拡大で日本渡航が難しくなった影響を受けた形です。
コロナ禍で「留学」「観光旅行」目的は減少
学習目的では、「日本語そのものへの興味」が60.1%、「マンガ・アニメ等への興味」が59.9%で1位、2位。前回と順位は入れ替わりましたが上位2位は同じでした。一方で、前回4位(46.7%)の「日本への留学」、同5位(41.1%)の「日本への観光旅行」は、それぞれ29.3%、34.5%と減少し、コロナ禍の影響が見られました。
今回、初めてオンライン授業の実施状況の調査も行われました。全機関の63%で、対面授業との併用も含めてオンライン授業が行われていることがわかりました。
◆【取材のお願い】2021年度「海外日本語教育機関調査」結果
https://www.jpf.go.jp/j/about/press/2022/023.html
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