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日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議5 ――現職日本語教師に対する経過措置

文化庁で2022年5月31日から月1回程度のペースで開催されている「日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議」は、日本語教師の国家資格の法制化に向けた詳細を検討する有識者会議です。2020年~2021年に「日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議」が取りまとめた「日本語教育の推進のための仕組みについて(報告)」をベースとしながら、日本語教員の国家資格などについて具体的な検討を進めています。

日本語教師の国家資格に関する議論

2022年10月25日(火)に第5回会議がオンラインで行われ、「有識者会議における検討の方向性に関する事項(たたき台案)」=全体プログラムの中で、今回は主に黄色下線部分について議論されました。

1.日本語教師の質の維持向上に関する仕組みの創設について

(1)制度設計の背景・経緯

(2)日本語教師の質の維持向上を図るための仕組み全体の方向性

2.日本語教育機関の認定制度に関すること

(1)認定の基準

(2)認定の手続き

(3)認定を受けた日本語教育機関に関する情報の公開(定期報告を含む)

(4)認定を受けた日本語教育機関の評価(自己評価、第三者評価等)

(5)認定基準に関する経過措置

3.日本語教師の国家資格に関すること

(1)筆記試験

(2)教育実習の実施機関

(3)指定日本語教師養成機関

(4)日本語教員の登録に関する経過措置

4.その他検討事項

なお、3.の(2)~⑷については第4回会議でも検討されました。

新しい筆記試験の概要が明らかに

今回の会議では、事務局から筆記試験についてのたたき台が提案されました。以下にポイントをまとめます。

(試験の基本的な性格等)

日本語教育に関する基礎的な知識及び技能(3領域、5区分、15下位区分及び50項目に基づく必須の教育内容を踏まえたもの)、日本語教育に必要な知識及び技能の応用について確認し、証明するための資格の要件として筆記試験を実施する

(試験の内容等)

試験の構成は二つの区分とする。筆記試験①は日本語教育の実践につながる基礎的な知識を測定する試験、筆記試験②は現場対応能力につながる基礎的な問題解決能力を測定する試験とする。筆記試験①は原則として、出題範囲の5区分ごとの設問により、日本語教育の実践につながる基礎的な知識及び技能を測定するものとする。筆記試験②は、出題範囲複数の領域にまたがる横断的な設問により、基礎的な問題解決能力を測定するものとする。併せて、基礎的な知識、技能及び基礎的な問題解決能力について、音声を媒体とした出題形式で測定するものとする。

出題形式については、筆記試験①、筆記試験②ともに多肢選択式とする。

(合否判定

指定日本語教師養成機関の修了者は筆記試験①を免除される仕組みとされていることから、筆記試験①と筆記試験②はそれぞれで合格基準を設定し、独立して合否判定をする。

現在行われている日本語教育能力検定試験と重なる部分も多いのですが、異なるところとしては、

・筆記試験①②が多肢選択方式、つまりマークシート形式とされているところ

・筆記試験①②で各々合否判定が出されるところ

があります。全てマークシート形式になれば、現在、日本語教育能力検定試験の試験Ⅲに含まれている記述式問題がなくなることになりますが、このことの是非については、会議の場で複数の委員から「慎重に判断すべき」との意見も出されていました。資格取得において必修となる教育実習との関係性と合わせて、今後、更なる検討がなされることと思われます。

現職日本語教師に対する経過措置

今回の会議の中で、特に注目度が高かったのは現職日本語教師に対する経過措置についてです。たたき台の中では、現在の状況は以下のように捉えられています。

日本語教師の資格取得から登録に当たっては、これまでの日本語教師の養成の教育内容、既存の民間試験の出題範囲や受験者及び合格者の状況、現職者の実務経験年数等の状況、養成、日本語教師の勤務形態に加え、コロナ禍における2年半にわたる留学生の入国制限の中で日本語教師の確保が困難な状況となっている現状などを踏まえ、制度開始時の日本語教師の質的・量的な確保配慮しつつ、一定の要件を満たす現職日本語教師等について、円滑に登録日本語教員としての登録を受けられるよう、また、日本語教師の学び直しの観点もあわせて、筆記試験や教育実習の免除を含めた経過措置を設ける。

・過去に受けてきた養成課程の教育内容や合格した日本語教育能力検定試験の出題範囲考慮する

・日本語教師としての実務経験や勤務形態を考慮する

・コロナ禍において日本語教師が不足している状況の中で質量両面から日本語教師を確保することを考慮する

とのことです。

第4回会議で事務局から提示された「登録日本語教員の資格取得ルート(イメージ)【たたき台】」*1については、「検討中」という但し書きが付いた上で改定版が提示されました。たたき台では、登録日本語教員になるためのルートが前回会議の8つから6つに集約され、かなりすっきりとした図になりました。この中で、現職日本語教師の経過措置に関係するのはDEFルート、また現職日本語教員ではないものの既に日本語教師養成講座などを修了している方に関係するのはCルートになります。

【現職日本語教師の場合】

Dルート:

法務省告示校などの一定の質が担保された機関に一定期間以上勤務している人は、実務的な経験を有することから教育実習が免除されることを検討する。但し、日本語教育能力検定試験に合格していない場合は、筆記試験①と筆記試験②に合格しなければならない。

Eルート:

また、平成12年以前に日本語教育能力検定試験に合格している人は、講習Ⅰを修了することで筆記試験①が免除されることを検討するとしている。

Fルート:

さらに、平成12年以降に日本語教育能力検定試験に合格している人は、講習Ⅰ、Ⅱを修了することで筆記試験①②が免除されることを検討するとしている。

日本語教育能力検定試験はこれまで何度か改定されており、今回の試験の基本的な性格で示されている「3領域、5区分、15下位区分及び50項目に基づく必須の教育内容を踏まえたもの」とは、平成12年「日本語教育のための教員養成について」(文化庁日本語教員の養成に関する調査研究協力者会議)、及び平成31年文化審議会国語分科会報告で示された基礎的な知識及び技能としての「必須の教育内容」を指しています。平成12年以前と以降では日本語教育能力検定試験の出題範囲が異なっていることから、合格者の扱いも違ってくることになりますが、経過措置期間であれば、日本語教育能力検定試験に合格した現職日本語教師は、講習を受けることで新しい筆記試験の一部が免除される方向で検討がなされています。

【現職日本語教員ではないものの既に日本語教師養成講座などを修了している人の場合】

Cルート:

指定日本語教師養成機関と同等と認められる現行の日本語教師養成課程を修了していれば、筆記試験①は免除される可能性があるとしています。この「指定日本語教師養成機関と同等と認められる」とは、その養成機関が「必須の50項目」*2を既に実施しているかどうか判断基準になります。

なお、講習Ⅰおよび講習Ⅱの内容については、次回の会議で具体的に検討されることになりました。

「日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議」を傍聴しよう

「日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議」は、事前に申し込めばオンラインでの傍聴が可能です。傍聴に関するお知らせは、文化庁のホームページの「新着情報」に、会議実施日の数日前から掲載されます。募集期間が短いので、関心がある人は定期的に文化庁のホームページを小まめにチェックするようにしてください。

*1:

登録日本語教員の資格取得ルート(イメージ)【たたき台】」は、以下の「資料2:質の維持向上の係る仕組みの方向性(養成課程、実習)」の3ページをご覧ください。

https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kondankaito/nihongo_kyoin/93778502.html

*2:

必須50項目は以下の記事をご参照ください。

https://shop.alc.co.jp/blogs/nj-news/20210401-kentei-youkou

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