2022年から日本語教師の勉強を本格的に始めよう、日本語教師としてデビューしてみようと、今から計画を立てていらっしゃる方も多いと思います。ここでは、これから日本語教師を目指す人向けに、改めて「どんな人が日本で日本語を学んでいるか」について考えてみたいと思います。日本語教師にとって何より大切なことは、日本語を教える相手である学習者のことをよく知ることです。(編集部)
どんな人が日本に在留しているか
まず、どんな外国人が日本に在留しているかを見てみましょう。出入国管理庁は毎年2回、6月と12月に在留外国人数についての統計を発表しています。現時点で公表されている最新の2021年6月の数値を見てみましょう。
https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00017.html
2021年6月末現在における在留外国人数は282万3565人でした。この数は日本の総人口の約2.2%に当たります。2020年末に比べて6万人以上減少しましたが、これは2020年から続いている新型コロナウイルスの影響で、外国人の入国制限が断続的に行われているからです。
国・地域別の上位は以下のようになっています。
1 中国 約75万人
2 ベトナム 約45万人
3 韓国 約42万人
4 フィリピン 約28万人
5 ブラジル 約20万人
6 ネパール 約10万人
7 インドネシア 約6万人
8 米国 約5万人
9 台湾 約5万人
10 タイ 約5万人
この中で、前年末より増加したのはベトナムとネパールだけで、他の国・地域は軒並み減少しました。2019年末まで在留外国人の数は年々増加して過去最高を記録していましたが、2020年の年明けから始まった新型コロナウイルスの流行により2020年6月に減少に転じ、以降減少幅が徐々に大きくなっています。
在留資格別での上位は以下のようになっています。
1 永住者 約82万人
2 技能実習 約35万人
3 特別永住者 約30万人
4 技術・人文知識・国際業務 約28万人
5 留学 約23万人
永住者が前年末より人数を増やした一方、特に留学が前年末より5万人以上減少しました。また、このランキングには入りませんが、特定技能は前年末の1.5万人から2021年6月には2.9万人と大きく増加しました。なお、特定技能は2021年9月にも数値が発表されていますが、その数は3.8万人とさらに大きく増加しています。新型コロナウイルスの水際対策で新規に外国人が入国できない中で、他の在留資格から特定技能への切り替えが進んでいるものと思われます。
もちろん日本に在留する全ての外国人が日本語を学んでいるわけではありませんが、国籍や在留資格別の規模や増減は、まず押さえておきたいところです。
どんな人が日本語を学んでいるか
次に、日本国内で日本語を学んでいる人について見てみましょう。文化庁が毎年発表している「国内の日本語教育の概要」が参考になります。2020年11月末現在の調査が直近の数値になります。なお、この調査は学校などの機関にアンケートを取って集計している機関調査です。そのため、学校等に通わず独学で日本語を学んでいる、あるいはオンライン等でプライベートで日本語を学んでいるような人の数は含まれていないものと思われます。
https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/nihongokyoiku_jittai/r02/
「国内の日本語教育の概要」によれば、日本語学習者数は約16万人となっており、それまでずっと右肩上がりで伸びてきた学習者数が、前年より大きく減少しました。ここの数に現れている学習者の属性は、法務省告示機関(日本語学校)、大学などの留学生が約6割を占めており、それ以外の在留資格で日本に滞在して日本を学ぶ人の数はあまり反映されていない可能性があります。
国・地域別の上位は以下のようになっています。こちらの傾向は、出入国管理庁が発表している在留外国人数と大きくは変わらないようです。
1 中国 約5.4万人
2 ベトナム 約3.6万人
3 ネパール 約0.9万人
4 ブラジル 約0.6万人
5 フィリピン 約0.6万人
6 韓国 約0.6万人
7 インドネシア 約0.5万人
8 台湾 約0.3万人
9 米国 約0.2万人
10 タイ 約0.2万人
統計からだけでは見えてこない日本語学習者
「国内の日本語教育の概要」で、留学生の日本語教育についてはおおよその規模感が見えてきますが、それ以外の在留資格で日本に滞在している人たちの日本語教育の実態については、あまり分かりません。例えば、留学生より在留している人数の多い技能実習生や、急増している特定技能の在留資格を持つ人たちの日本語教育の実態については、「国内の日本語教育の概要」だけでは、あまりよく見えてきません
そもそも日本語学習者は多種多様であり、国籍や在留資格といったデモグラフィックな数値だけでは見えてこない面がたくさんあります。例えば、現在大きなテーマとなっている年少者の日本語教育、介護や看護の現場で働きながら介護福祉士や看護師の国家資格取得を目指している候補者の日本語教育、夜間中学・高校で行われている日本語教育など、日本語教育の実践は日本社会のさまざまなところに広がっており、それぞれの現場でそれぞれの背景を持って日本語教育が行われています。
これまで毎年のように増加してきた在留外国人がここ2年ほどは新型コロナウイルスの影響で減少していること、しかし一律に減少しているわけではなく国・地域や在留資格などによって増加しているところもあること、そこには日本語教育のニーズがあり社会のさまざまなところで日本語教育が広がり見せていることなどを、現在の日本語教育の実態・前提として踏まえておくことが必要かと思います。
その上で日本語教師にとって大切なことは、それぞれの教育現場の背景を理解した上で、目の前の一人一人の日本語学習者に真摯に向き合い、日本語学習者が抱えている日本語コミュニケーション上の課題が少しでも解決されるように力を尽くすことではないかと思います。
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