令和3年度の日本語教育能力検定試験は2021年10月24日に行われます。残すところ3カ月を切り、試験勉強にも少しずつ熱が入っていることと思います。ここでは、毎日忙しくてなかなかまとまった勉強時間が取れないという方のために、忙しい人でもすぐできる試験対策に役立つ情報をご紹介します。(新城宏治)
記述式問題が最後の合否を分ける
記述式問題は試験Ⅲの最後、つまり日本語教育能力検定試験全体の最後に出題されます。試験の中で、唯一マークシートの答えを選ぶのではなく、実際に文章を書いて答案を完成させます。そのため、この記述式を苦手としている方、試験対策を最後まで後回しにしている方がたくさん見受けられます。
実は、この記述式問題は全ての人の答案が採点されるわけではありません。マークシートの得点で上位6割に入った人のみが、記述式を採点してもらえる権利を得ます。つまり、マークシートの得点が上位6割に入れなかった場合は、その時点で記述式は採点されない、つまり日本語教育能力検定試験は不合格ということになります。逆に言えば、記述式はマークシートで1次選考に残った受験生の合否を決める最終選考と言ってもいいでしょう。
また、記述式は得点差が付きやすい部分でもあります。1問の配点が20点と大きいこともありますが、過去2年分の試験結果のデータを見ると、標準偏差(点数のばらつき)が一番大きいのが記述式であることが分かります(試験によって満点が異なりますので、配点に対する百分率で比較しています)。
令和2年度標準偏差
試験Ⅲ記述式(16.6%)>試験Ⅱ(14.6%)>試験Ⅰ(11.6%)>試験Ⅲマーク式(10.9%)
令和元年度標準偏差
試験Ⅲ記述式(17.7%)>試験Ⅱ(13.8%)>試験Ⅰ(12.2%)>試験Ⅲマーク式(10.8%)
問題のテーマを予測するのは難しい
実際に過去5年間にどんな問題が出題されたのかを見てみましょう。
【令和2年度】「やさしい日本語」について日本語教育に携わる者としてどう考えるか
【令和元年度】聴解で談話の全体像を把握するのに必要なスキルと教室活動
【平成30年度】作文のクラスでピア・レスポンスに消極的な学生への対応
【平成29年度】レベル別の語彙表やそれに基づいた教材を作ることについてどう考えるか
【平成28年度】お土産を渡す時の言い方で学生がホストファミリーのお母さんから注意されたエピソードとアドバイス
教室活動から日本語のコミュニケーションまで非常に多岐に渡っていますので、次回どんなテーマが出題されるかを予測するのは難しいです。むしろ、どんなテーマが来てもある程度以上の点数は取れるようにしておくことが大切だと思います。
また、令和2年度(前回)の試験から少し形式が変わり、答案の中に特定のキーワードを使うように指定されるようになりました。この形式が令和3年度試験でも踏襲されるかどうかは分かりませんが、キーワードが決まっていればそれを使えばいいのでむしろ書く内容は絞りやすく、受験生にとっては必ずしも悪いことではないと思われます。
合格答案を書くための5大鉄則
ここで、どんなテーマが出題されても必要になる、記述式問題の答案を書くための鉄則をまとめておきます。
①問われていることに答える
まず問題文で問われていることに対する答案を書くのが鉄則です。「当たり前のことじゃないか」と思われるかもしれませんが、実はここがズレてしまう答案が非常に多いのです。書き出しは良くても、書いているうちにだんだんズレていってしまうこともあります。問題文の指示部分に下線を引いて、「何を問われているのか」を絶えず意識しながら答案を書くようにしましょう。
②まず、話の流れを決める
いきなり原稿用紙に書き始めるのではなく、まず話の流れを問題冊子の余白部分にメモ書きしてみましょう。箇条書きでもいいですし、矢印で話の流れをつなぐような形でもいいと思います。最初に答案の大体の設計図を描いてから本番を書き始めるようにしましょう。
③予め型を決めておく
400字という限られた文字数の中で、限られた時間内に答案を書かなければならないので、ある程度の型を決めておいて、その型の中にテーマに沿って自分の考えを埋め込んでいくようなスタイルが効率的です。基本的な型は、
このような流れがオーソドックスだと思われます。
④接続表現を効果的に使う
上記のような流れを分かりやすくするために、接続表現を上手に使うようにしましょう。例えば、上記の型で使えそうな接続表現には、以下のようなものがあります。
- 〇〇において〇〇をするには〇〇が必要である。
- なぜなら~、例えば~、一方で~という意見もある。しかし~
- このような理由から、〇〇において〇〇をするには〇〇が必要である。
⑤原稿用紙の書き方のルールを守る
久しぶりに原稿用紙に手書きで文字を書くと、原稿用紙の使い方に戸惑うことがあります。特に句読点と「」は、間違える人が多いので注意しましょう。
・句読点は行頭に持ってこない→前の行末に入れる
・「は行末に持ってこない→次の行頭に入れる
・」は行頭に持ってこない→前の行末に入れる
以上です。過去問や問題集で何問か解いて慣れておけば、本番でも落ち着いて問題に取り組めると思います。皆さんのご健闘をお祈りします。
令和3年度日本語教育能力検定試験 実施要項
【出願期間】令和3年7月5日(月)から8月2日(月)まで(当日消印有効)
【試験日】令和3年10月24日(日)9:00~16:40
【受験料】14,500円(税込)
【試験地】北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、九州
※都合により変更する場合があります。
※試験地区内での都道府県は選択できません。
【合否結果通知の発表】令和3年12月24日(金)(予定)
詳細:https://www.nisshinkyo.org/news/pdf/F-2021-01-2.pdf
執筆:新城宏治
株式会社エンガワ代表取締役。日本語教育に関する情報発信、日本語教材やコンテンツの開発・編集制作などを通して、日本語を含めた日本の良さを世界に伝えたいと思っている。
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