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忙しい人のための日本語教育能力検定試験対策法2-狙われやすい5つのトピックを押さえる

令和3年度の日本語教育能力検定試験は2021年10月24日に行われます。残すところ4カ月を切り、試験勉強にも少しずつ熱が入っていることと存じます。ここでは、毎日忙しくてなかなかまとまった勉強時間が取れないという方のために、試験対策に役立つ情報をご紹介します。(新城宏治)

毎年のように出題される時事問題

日本語教育能力検定試験の出題範囲は、5区分(社会・文化・地域、言語と社会、言語と心理、言語と教育、言語一般)に分かれます。文法や音声などの日本語の構造や、教授法や教室活動などの日本語教え方に関する範囲からは毎年多くの問題が出題されますが、それと合わせて、日本語教育に関係する時事問題が毎年のように出題されます。今回はそのような中から、行政の動きを中心に特に検定試験で狙われやすいと思われるトピックをご紹介します。

1 日本語教育の推進に関する法律(日本語教育推進法)

2019年6月に公布・施行された法律。成立には超党派の国会議員で形成された日本語教育推進議員連盟が大きな役割を果たす。

その目的は「日本語教育の推進に関し、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体及び事業主の責務明らかにするとともに、基本方針の策定その他日本語教育の推進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進し、もって多様な文化を尊重した活力ある共生社会の実現に資するとともに、諸外国との交流の促進並びに友好関係の維持及び発展に寄与する」こと。
基本的施策として、「国内における日本語教育の機会の拡充」「日本語教育の水準の維持向上等」「海外における日本語教育の機会の拡充」「日本語教育に関する調査研究等」「地方公共団体の施策」の5つが挙げられている。

日本語教育の推進に関する法律について(文化庁)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/shokan_horei/other/suishin_houritsu/index.html

2 公認日本語教師

先の「日本語教育の推進に関する法律」を受けて、2020年には文化審議会国語分科会で、また2021年には日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議で、名称独占の国家資格を公認日本語教師とする方向で議論が進んでいる。また、合わせて日本語教育機関の3類型として、「留学」「就労」「生活」が挙げられている。

日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kondankaito/nihongo_kyoin/92369001.html

3 特定技能

2019年4月に出入国在留管理(入管庁)が法務省の外局として設置され、同時期に在留資格「特定技能」が新設された。
人材不足が深刻な14業種を対象に5年間で34万5000人の外国人の受け入れを見込んでスタートしたが、各国の手続きの遅れなどもあり、当初の数は見込みの1割程度に留まった。特定技能の在留資格申請には、コンピューターテストの国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)に合格することと、各業種の技能試験に合格することが必要とされている。
特定技能外国人の賃金は日本人と同等以上、分野内での転職可となっている。受け入れ企業または企業から委託された登録支援機関は、受け入れ計画に基づき日本語学習の支援などを行う。
14業種の中でも、大きく人数が伸びている分野に介護がある。少子高齢化が進む日本社会において介護人材の不足は深刻で、以前から外国人人材の受入れが進められてきた。EPA(経済連携協定)によるインドネシア、フィリピン、ベトナムからの候補者の受け入れ以外にも、在留資格・介護、技能実習1・2・3号、特定技能1号など、介護人材の受け入れにはさまざまなルートがある。

4 日本語指導が必要な児童生徒

公立学校における日本語指導が必要な児童生徒の数は、2018年度には初めて5万人を超えた。10年間で1.5倍に増えたが、特にここ数年の伸長が目覚ましい。都道府県別では愛知県が断トツで多く、次に神奈川県、東京都と続くが、全国的には散在化傾向が見られる。外国籍児童生徒の母語はポルトガル語が最多で、中国語、フィリピノ語、スペイン語が続く。一方、日本国籍児童生徒の比較的使用頻度の高い言語はフィリピノ語、中国語、英語の順になる。
日本語指導が必要な児童生徒のうち、特別な指導(強化の補習等)を受けている割合は7割を超える。日本語指導は「特別の教育課程」として位置づけられ、小中学校の学習指導要領によらずに柔軟にカリキュラムを作ることができる。ここ数年で、「特別の教育課程」を受けている児童生徒の割合は増加しているが、日本語指導が必要な児童生徒の伸びには追い付いていない。

5 JF日本語教育スタンダード

国際交流基金が作った、日本語を教える・学ぶときの枠組み。CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)をもとにしており、日本語を通じた相互理解を目標とし、課題遂行能力異文化理解能力を育成する。課題遂行能力は、コミュニケーション言語能力(言語構造的能力・社会言語能力・語用能力)とコミュニケーション言語活動(受容・産出・やりとり)から成る。
レベルはCan-do(~ができる)という形で6レベル(下からA1~C2、Aは基礎、Bは自立、Cは熟達した言語使用者)に分かれる。学習成果は評価表、言語的・文化的体験の記録、学習の成果から成るポートフォリオにまとめる。JF日本語教育スタンダードに基づいた教材として『まるごと 日本のことばと文化』がある。

JF日本語教育スタンダード
https://jfstandard.jp/top/ja/render.do

いかがでしたでしょうか。日本語教育を取り巻く行政や社会の動きから、今後の日本語教育の方向性も見えてきます。日本語教育の最近のトピックを押さえることは、日本語教育能力検定試験のためだけでなく、試験合格後にもきっと役立つと思います。

令和3年度日本語教育能力検定試験 実施要項

【出願期間】令和3年7月5日(月)から8月2日(月)まで(当日消印有効)(予定)

【試験日】令和3年10月24日(日)9:00~16:40

【受験料】14,500円(税込)

【試験地】北海道、東北(宮城)、関東(東京)、中部(愛知)、近畿(大阪、兵庫)、中国(岡山)、九州(福岡)

※地区内での会場は選べません。
都合により変更する場合があります。

【合否結果通知の発表】令和3年12月24日(金)(予定)

詳細:https://www.nisshinkyo.org/news/pdf/F-2021-01-2.pdf

執筆:新城宏治

株式会社エンガワ代表取締役。日本語教育に関する情報発信、日本語教材やコンテンツの開発・編集制作などを通して、日本語を含めた日本の良さを世界に伝えたいと思っている。

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