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日本語教師プロファイル渡部真理さんー日本語教師はいろいろな人と出会えて、学べて、世界平和も考える仕事

今回ご紹介するのは、渡部真理さん。日本語学校、大学、企業などで日本語を教えながら、京都府のボランティア日本語教室ネットワーク「京都にほんごRings」*1の代表も務めていらっしゃいます。渡部さんにこれまでの活動や、今後の展望についてお話を伺いました。

京都への縁はアメリカで

――日本語教師になったきっかけを教えてください。

実は東京で生まれ育ったのですが、学生の時に短期留学でアメリカに行きまして、そこで将来の夫となる男性に巡り合ったんです。夫は京都の人でした。卒業後、旅行会社に就職したんですが、遠距離交際を続け結局ゴールイン。退職して、京都に移り住むことになりました。

日本語教師の仕事を知ったのは子どもが小学生の時でした。下の子が中学に入るタイミングで日本語教師になろうと思い、2年計画で日本語教師養成講座に通い始めました。日本語教育能力検定試験も受けることにしました。でも、その頃、日本語教師ってあまり認知されていなくて、舅に「その年で試験?」とか「日本語教師なんて」と言われ、逆に絶対に受かってやろうと。それで1回で合格しました。だから、今思えば、合格できたのはおじいちゃんのおかげですね。

――日本語を教え始めたのは?

それが、友だちが電信柱に日本語教師募集の張り紙があったよと教えてくれて、面接を受けに行って採用されました。でもそこが治外法権のような場所で…。理事長は日本語学校の他にレストランも経営していて、お店が忙しくなると、学生を呼び出して教室からお店に連れて行っちゃうんです。それから私たち教師への給料は、理事長のお財布から出されるんですが、白紙の領収証にサインさせられて。変だな、変だなと思いながら、そこで教えていたのですが、さすがにおかしいと思って理事長に直訴したら、その日に解雇されてしまいました。

――ええ!ちょっと信じられないような話ですね。

でも、解雇されたということを家族に言いにくくて、その後しばらく偽装出勤していました。朝、いつものように家を出て、デパートをブラブラしたり。だからリストラされたサラリーマンの気持ちがよくわかります。

その後、家の近くにあった日本語学校、関西語言学院の門をたたきました。実はその時、学院では教師を募集していなかったのですが、自分がアメリカで留学生として受けた恩を外国人学生に返したいという思いをつづった長い手紙を書きまして。それでなんとか面接をしてもらい採用されました。その学校で、現在に至るまで教えています。ここでの授業が私の日本語教師としての軸というか血肉になっていると思います。

ボランティア教室との出会い

――ボランティアを始めたのは?

ボランティアをやっていた友人の日本語教師が、JICAで海外に行くことになり、代わりにやってよと頼まれたことがきっかけです。初めは、ボランティアねぇ、養成講座の元も取ってないのに…という気持ちでした。でも実際にそのボランティア教室「宇治国際交流クラブ日本語教室」に行ってみるとスタッフのみなさんが素晴らしくて衝撃を受けました。皆さん、謙虚でエレガントで知的で、人のために全力で尽くすという、崇高なものを見てしまったのです。なんでもはっきり言うわきまえない女だった私は、そこの皆さんからは野蛮に見えたと思います(笑い)。ここでは16年間、人としても学ばせてもらい、学習者からも多くの学びがありました。

――渡部さんが現在代表をされている「京都にほんごRings」について教えてください。

「京都にほんごRings」は、日本語支援のボランティア活動を行う京都府の22の団体と個人が加盟しているネットワークです。本部は京都府国際センター*2にあります。設立は2002年。設立を呼び掛けた方はRingsを作ってまもなく外国へ行き、現在はタイで日本語を教えています。設立の理念は「ボランティア教室がネットワークという集合体になれば、情報共有ができて支援者にも学習者にもメリットがある。そこで信頼されて行政とも連携するようになれば、さらにみんなを幸せにする活動ができるのではないか」とのことです。実は今回のインタビューのために本人に確認しました。そうしたらこんなに真面目な理念でちょっと驚きました。彼はいつも「みんなでゆるーく輪になってつながっていこうね」と話していたので。来年で設立20周年なんですが、のらりくらりとゆるーくやってきたから続いたんじゃないかと思っています。でも実際に京都府とも連携ができるようになって、設立の理念に近づいている気がします。

――具体的にはどのような活動をされていますか。

まずメーリングリストを作って情報の共有をしています。そして各団体から代表者が集まって年4回定例会を行います。基本的な活動は、例えば「日本語を学びたい学習者がいるんだけど、どこの教室に行けばいいですか」というときに紹介するとか、「教室を立ち上げたい人がいるんだけど」というときにサポートする等です。これまで「やさしい日本語グループ」「こどもサポートチーム」「研修チーム」などがあり、日本語ボランティアの養成講座も実施しています。また、京都府では京都市を中心とする南部には日本語教室が多いのですが、中部・北部には外国人は多いのに日本語教室が少ないという現状があるので、要望を受けてそんな場所への支援も行っています。

初めの頃はRingsがここまで大きくなるとは思っていなかったのですが、ずっと続くというのはやっぱり意味があったんですね。最近はコロナ禍で、会議がオンラインになって、逆に役員会が頻繁に開けるようになっちゃって、Ringsの仲間がまるで家族のようです。

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ボランティアから仕事の輪も

――現在は、ボランティアの活動と職業としての日本語教師の仕事を並行して行っている形ですか。

そうですね。お金をいただいて日本語を教える方も、いつも3つか4つ並行してやってますし、それにプラスにほんごRingsの活動もやっています。宇治のボランティア教室やRingsに関わったことから仕事が広がったという面もあったんです。今教えている京都大学農学部の日本語教室に繋がったのもその例です。Ringsというように、まさにどんどんご縁がつながっていくなあと思っています。

ただ仕事として日本語教師をやることと並行してボランティアをすることに少し葛藤もありました。日本語学校の先輩に、そうやってボランティアで教える人がいるから、自分たち日本語教師の時給が上がらないんだなんて言われて、悩んだり。でもね、日本語学校とボランティアの日本語教室は全く別次元のものなんです。日本語教室に来ている人は学校に通えるような状況ではない。高い授業料を払えるような環境じゃない人たちで、そういう人は山ほどいるんです。それに日本語教室は勉強だけでなく癒しの場所にもなっているんですよね。

――渡部さんが今後やっていきたいことについて教えていただけますか。

京都大学の仕事があと1年ほどで定年になるので、そうしたらRingsのほうにもっと軸足を置いて、ボランティアの底上げをやっていきたいと思っています。なんて言うとちょっと偉そうですが。今は私が知っていることは何でも紹介したいと思って、教え方の悩みを聞く「ちょっぴり上達ラボ」というのを満を持して始めました。

2010年には、学習者への話しかけや褒め方の役に立つかと思い、民間認定のカウンセラー1級の資格も取りました。いろいろなことに繋げてくれた恩返しとしてRingsに還元したいと思っています。

学習者が日本語教室に来るということは日本語を勉強したいからなんです。だからこの活動に関わった以上はボランティアといえども日本語教育の知識なしで活動するのは学習者に対して失礼だと思っています。それにこの活動をすると外国人への理解が深まります。一般の人は外国人を「○○人は」って一括りにしがちだったり、偏見を持ったりすることもあるかもしれません。そんな時に私達は、一般の人と外国人との溝を埋める存在になれると思っているんです。

そんな風に思うのは、私自身がアメリカでちょっとした差別を経験したからかもしれません。ですから同じように差別されて傷つく外国人を減らしたいんです。私たちは日本人とか、○○人っていう以前に同じ人間ですから。

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学習者の立場に立って考えることが一番たいせつ

――これから日本語教師になる人に伝えたいことはありますか。

日本語教師って教える形も学習者も様々で、際限なく勉強が必要なんですが、その分刺激に満ち満ちた仕事です。いろいろな人と出会えて、学べて、世界平和まで考える、そんな仕事。様々な経験を糧にして想像力のある教師になってほしいです。私が知る限り80歳ぐらいまで問題なく教えられると思います。

私が以前の職場の先輩や関西語言学院の学院長に言われた言葉も付け加えておきます。

「もし渡部さんが学習者の立場だったら、どう教えられたいですか。言葉は気持ちの表現なのでどんな気持ちで使うのか意識させてください」

「あなたのこれまでの人生を50分の授業にぶつけてください」

これらの言葉は私の教師としての指針にもなっています。

取材を終えて

愛とユーモアと外国人への思いに溢れた京都の東女(あずまおんな)、渡部さん。どうしてそんなに外国人への思いが強いのですかと聞くと、ご両親の影響かもしれないとおっしゃいます。お父様は商売人で一歩家の外に出たら、目が合った猫にでも挨拶をすると言うお人柄、お母様には、お天道様が見ているからいつでも正直に生きなさいと教えられたそう。そしてお母様は戦後生まれた混血児への差別に反対して、何度も新聞やラジオへの投書を繰り返していたそうです。日本語を教える以前に「まっとうに生きる」ことが何より大切とおっしゃっていました。

取材・執筆/仲山淳子

流通業界で働いた後、日本語教師となって約30年。5年前よりフリーランス教師として活動。

*1:「京都にほんごRings」https://www.kyo-rings.net/

*2:「京都府国際センター」https://www.kpic.or.jp/

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