日頃から日本語を教えていて、日本語については人一倍敏感な日本語教師の皆さんでも、意外と勘違いしている日本語というものはあるものです。ここでは読み間違えやすい日本語をチェックしてみましょう。
クイズ番組などにもよく出題される言葉
日常的によく使われている言葉でも、いざとなると読み方に迷うものがあります。言葉は変化するものですので、あまり「正しい」「正しくない」といった規範主義的な考えにとらわれることなく、あくまで参考知識として持っているといいと思います。もし学習者から読み方を聞かれたら、「正しい」ほうを教えてあげましょう。
- 出生率 〇しゅっしょうりつ しゅっせいりつ
- 農作物 〇のうさくぶつ のうさくもつ
- 早急 〇さっきゅう そうきゅう
- 貼付 〇ちょうふ てんぷ
- 重複 〇ちょうふく じゅうふく
- 続柄 〇つづきがら ぞくがら
- 茨木県 〇いばらきけん いばらぎけん
- 定礎 〇ていそ じょうそ
- 御用達 〇ごようたし ごようたつ
- 肉汁 〇にくじゅう にくじる
同字異音異義語
あまり聞きなれないかもしれませんが、「同字異音異義語」とは、同字=形は同じ、異音=音は異なる、異義=意味も異なる言葉のことです。例えば、次のような言葉です。
・朝早く市場へ行って魚定食を食べた。
・為替市場では円高が進んでいる。
魚や野菜などの具体的な商品を取引するところは「いちば」、為替・金融・労働などの場合は「しじょう」と読みます。日本語には、このような言葉がたくさんありますので、学習者が戸惑うところでもあります。日常的に使われるこのような言葉を集めてみました。読み方を考えてみてください。
【問題】
- ゴミは分別して出すこと。/会社の上司は思慮分別がある。
- 風邪で寒気がする。/寒気が南下して雪が降る。
- 彼には芸術家の気質が流れている。/父は職人気質の頑固者だ。
- 年金で細々と生活する。/細々と親の世話を焼く。
- 会社の人事部に配属になった。/上司の左遷は人事ではない。
- 海岸で初日の出を拝む。/明日は連休の初日だ。
- 大きな利益を生む商品。/縁結びのご利益のある神社
- 学生から人気のある先生。/夜は人気のない商店街。
- 背筋を鍛えるトレーニング。/背筋を伸ばして先生の話を聞く。
- 社長が自ら謝罪をした。/結果は自ずから明らかになる。
いかがでしたでしょうか。10は送り仮名の違いで区別できるかもしれませんが、こうして見てみると紛らわしいですね。
【解答】
- ぶんべつ/ふんべつ
- さむけ/かんき
- きしつ/かたぎ
- ほそぼそと/こまごまと
- じんじ/ひとごと ※ひとごとは「他人事」とも書きます
- はつひ/しょにち
- りえき/(ご)りやく
- にんき/ひとけ
- はいきん/せすじ
- みずから/おのずから
カタカナ語
カタカナ語を声に出すときに多いのは、語末の濁音がなくなってしまう現象です。コミュニケーション上はほとんど問題はありません。
〇バッグ バック 例:ハンドバッグ、トートバッグ
〇ベッド ベット
〇バッジ バッチ
〇キューピッド キューピット
〇バドミントン バトミントン
〇ハイブリッド ハイブリット
逆に元々濁点がないのに、濁点を付けてしまいがちな言葉もあります。前後の音や、他の言葉に影響を受けているものと思われます。
〇アボカド アボガド
〇人間ドック 人間ドッグ
いかがでしたか。日頃はあまり意識していない言葉でも、改めて見てみるといろいろな発見があります。なぜ読み方が変わってきているのか、どんな意味の違いがあるのかなど、考えてみるのも面白いものです。
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