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日本語教師プロファイル後藤理恵子さん―人生はいくらでもやり直せる!

今回ご紹介する後藤理恵子さんは、看護師として働いた後、英語教師、日本語教師となった異色の経歴の持ち主です。現在はご自分のスクールも持ちつつ、専門学校でも教えられています。後藤さんに二つの言語を教える際に大切にしていることや、これから目指したいことについてお話を伺いました。

30歳で英語を学び始め、42歳で英語教師に

――語学教師になるまでの経歴を教えてください。

高校を卒業して看護学校に進み、病院や整形外科のクリニックで看護師として働いていました。でも30歳になった時に「私って一生ナースしかできないのかなぁ。」って思ったら、突然自分の人生がつまらなく思えてきて。何か別のことをやりたい!って思ったんです。でも特別な何かがあるわけでもなく、とりあえず英語でも勉強しようかと。実はそれまで英語は、洋楽や映画が好きなぐらいで、どちらかと言うと苦手な分野だったんですけど、英文法を基礎から勉強し直したら面白くなってのめりこみました。それで看護師をしながら夜間の大学に入学し、英語学という英文法を研究する学問に出会いました。その大学には日本語学科もあって、英語学科と共通した科目もありました。日本語教師になるとは全く考えていませんでしたが、何かの足しになるかもと思って日本語学系の単位も取りました。

――それですぐ語学教師に?

いえ、大学卒業後も看護師は続けていて、英語は趣味程度になってしまいました。けれど英語との接点はなくしたくないのでTIMEを読んだり、映画を見たり、時には翻訳の下請けの仕事をしたりしていました。そんな時、翻訳の先生が英検1級を持っていれば強みになるし自信が持てるよと勧めてくれました。それで英検1級を受けてみたら合格。調子に乗って英語学校でアルバイトで教えるようになりました。これが42歳の時です。
でもいざ教え始めたら、英検1級を持っているからといって教えられるものでもなく、どうやって教えていいのかわかりませんでした。自分自身は英文法中心にやってきて、そのやり方が絶対だというビリーフがありましたが、それが通じなくて。学習者のニーズに全く答えられていないと落ち込んでしまいました。なんとかしたい!という気持ちから、とうとう看護師を辞めて、CELTA*1の講座に通い始めました。初めは英語を教えることはアルバイト感覚だったのに(笑い)。
CELTAを取得後、CELTA保持者しか登録できないエージェントを紹介してもらい、英語教師として登録しました。

英語と日本語、二つの資格を得て

――それからどうして日本語教師に?

はい、CELTA保持者だけのエージェントに登録したのはいいのですが、実はそこは英語を教えられるのは英語ネイティブのみというルールがあったんです。それで英語の仕事はまったく来なくて…。そうしたらある時、そのエージェントから「実は外国人社員に日本語を教えられる人を探しているんだけれど、君、日本人だったよね。日本語ネイティブだよね。やってくれないか」という話が来たんです。学習者はアイルランド人で英語で教えられる人がほしいということでした。大学で日本語関連の授業をとっていたとはいえ、日本語を教えるとは全く思っていなかったので、悩みに悩みました。エージェントの方に「大丈夫、大丈夫。君にはCELTAがあるから。そこで学んだことを使えば日本語も教えられる」なんて言われて。もちろんそれだけでは足りないので、慌てて日本語教師養成講座に通い、日本語教育能力検定試験も受けました。

――英語と日本語、両方の資格を手にしたわけですね。

そうですね。両方の資格を得たことで、自分の「教える」ということが強化された気はします。
それ以降、企業の外国人社員には英語を使った間接法で日本語を教えてきました。また、そのエージェントのルールも少し緩くなり、企業のTOEICクラスでも教えることができるようになりました。英語教師兼日本語教師として活動することになったわけです。

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間接法、そして文法

――英語と日本語の両方を教えるメリットはありますか。

そうですね。CELTAというのは直接法なのですが、日本語を間接法で教えてみて、自分にしかない強みを発見できたことがよかったと思います。どういうことかというとCELTA式の直接法の中にピンポイントで媒介語を使うことによって、より早く、効果的に教えられることに気づいたのです。間接法と言っても、かつての学校教育での英語のように、ずーっと先生の日本語を聞かせ続けるものではありません。授業は基本的に目標言語(英語の授業なら英語、日本語の授業なら日本語)で行うけれども、必要な部分だけに効果的に媒介語を使うというやり方です。また学習者によって直接法にするか間接法にするか決めることもできます。媒介語に頼りすぎる学習者もいますので。そういう部分での選択肢を持てるというのも強みの一つですかね。

――日本語教育というとまず直接法と考えられていて、養成講座でもそれしか教えない場合が多いですが、オンライン授業がこれだけ広がって、初級の学習者に直接教える機会が増えた今、間接法にもっと目が向けられてもいいですよね。

ええ、私も全くそのように考えています。
もう一つ重視しているのは文法です。外国語を学ぶ時に文法をちゃんと学ぶことは、面倒くさいけれども実は一番の近道です。きちんと土台を作っておけば言葉を入れ替えるだけで文を無限に作れるようになるんです。正しい文が作れるようになったら自動化するまで反復練習します。音読やシャドーイングも文法訳読法で構文を理解していることが大事です。理解できていない文をいくら繰り返しても何にもならないんです。
英語でも日本語でもブロークンなままで構わないという人はそれでいいと思いますが、上を目指したいなら正確な文法は絶対に必要だと思っています。

英語日本語医療

――ご自身のこれからについてはいかがですか。

2019年に自分の語学スクール「R‘s English School」を立ち上げました。これは老後も働ける場所を作りたかったのと、自分がこれまでやってきたことの集大成の場としてでした。企業研修や専門学校で「自由にやってください」と言われてもシラバスやカリキュラムは決められています。それとは別に自分のやり方で自由にやってみたいという思いがあったんです。それで場所を借り、ホームページを作り、対面でレッスンを始めました。しかし数か月で、このコロナ禍。残念ながら、物理的な場所としての教室は閉めることになりそうですが、オンラインでは続けていきます。現在も日本語を学んでいる外国人の生徒さんと英語を学んでいる日本人(実は日本語教師の方です)の生徒さんがいますので。
それから2021年3月からは専門学校の専任として仕事をすることも決まりました。留学生のTOEICクラスを担当しますが、この学校は海外とつながりを持つ専門職の育成に力を入れている学校です。ですからここで「やさしい日本語」のワークショップをしたりして日本と外国をつなぐ人材育成にも関わりたいと思っています。
さらに、自分のスクールを作った時の構想として、医療現場で「やさしい日本語」を広めることと医療従事者の英語力をあげるという目標がありました。最終的に、今まで自分がやってきた英語と日本語と医療を掛け合わせて何かしたいというのが希望です。

常に自分自身をアップデートすること

――これから語学教師になろうと思っている人に何かアドバイスはありますか。

えーと、ではまず日本語教師になろうと思っている人へ。何かしらの語学に真剣に向き合ってみてください。自ら学ぶことで学習者の気持ちに寄り添うことができます。それから教室でもオンラインでも教師のやり方を観察することで自分自身の授業に活かすことができるんです。(反面教師の場合もありますが。)
もしどの言語を選んでいいかわからないなら英語をお勧めします。英語を学べば教育に関する情報は2倍になります。世界のいろいろな情報を得ることができますから。
それから英語の教師になろうと思っている人には、英語ができるだけでは英語は教えられないと言いたいです。当たり前ですが。日本人も日本語ができるからと言って、日本語が教えられるわけではないですよね。
どちらの教師になるにしても、常に自分自身をアップデートすることが重要です。いろいろな人の先行研究を見て、何が行われていて、何が効果的と言われているのかを知ること。そして目の前の学習者に何が必要なのか見極めることが大切だと思っています。

取材を終えて

後藤さんが英語を学んでいた頃に知り合った方の中には70代、80代の方もいて、60歳で英検1級に合格したり、78歳でフランス語の勉強を始めたりした方もいたそうです。もう年だから単語が覚えられないなんてそんな方たちの前では言えなかったと。何歳からでもやり直せるという言葉に勇気をもらって、私も英語を勉強し直そうかなと思いました。

取材・執筆/仲山淳子

流通業界で働いた後、日本語教師となって約30年。5年前よりフリーランス教師として活動。

*1:Certificate in English Language Teaching to Adult ケンブリッジ大学英語検定機構に認定されている英語指導資格。

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