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令和元年度「国語に関する世論調査」

文化庁から、令和元年度「国語に関する世論調査」の結果が発表になりました。外国人の日本語学習、日本語に対する意識、敬語や漢字、新しい日本語表現などについて、今の日本人がどのように考え、使っているか、興味深い調査結果が出ています。(編集部)

「国語に関する世論調査」とは?

文化庁が日本人の国語に関する意識や理解の現状について調査し、国語施策の立案に資するとともに、国民の国語に関する興味・関心を喚起するものとして、平成7年度から毎年実施しているものです。毎秋に発表される調査結果は、年々変化する日本語や言葉・コミュニケーションに対する日本人の考え方が反映されており、大変興味深いものがあります。今回の調査は全国の16歳以上の男女約2000人から回答を得ました。

「国語に関する認識」「外国人と日本語に関する意識」「敬語に関する言葉遣いに対する印象」「平成22年度の常用漢字表改定で追加された漢字の印象」「新しい表現に対する印象や、慣用句等の認識と使用」の5章に分けて調査結果が出ています。

日本語は乱れているか
~言葉は時代によって変わるもの

最初の質問項目は、「国語は乱れていると思うか」「(乱れていると答えた人には)どのような点で乱れていると思うか」「(乱れていないと答えた人には)乱れていないと思う理由」を尋ねています。

結果は「乱れている」と答えた人が全体の6割台半ばに達しますが、過去の調査と比較するとその割合は年々減少しています。20年ほど前の調査では、実に8割台半ばが「乱れている」と答えていました。乱れている点は「敬語の使い方」「若者言葉」の2項目が突出して高くなっています。また「乱れていない」と答えた人の理由は「言葉は時代によって変わるものだと思うから」が全体の4割を占めました。

外国人と日本語に関する意識
~外国人の日本語学習の手助けをしてみたい人が過半数

「外国人と接する機会があるか」「外国人とどのように意思の疎通を図っているか」「やさしい日本語で外国人に対して伝える取組の存在を知っているか」「日本在住の外国人が日本語能力を身に付けるために必要な取組」「外国人に対する日本語学習の手助けについてどう思うか」など、第2章には日本語教育に関係が深い質問が並んでいます。

「外国人と接する機会」が「ある」「時々ある」人は3割弱と少ない数値でした。日本語教師や日本語ボランティアの方々などは日常的に外国人と接していますが、そうでない人は外国人との接点が基本的にはあまりないようです。「外国人との意思疎通」は「身振り手振り」が過半数、「英語などの外国語」「やさしい日本語」が各々4割強でした。その人ができることや得意なことで意思疎通ができれば、どういう手段であってもいいと思いますが、個人的には「やさしい日本語」の認知が少しずつ高まってきていることを感じる調査結果でした。やさしい日本語による災害や行政の情報発信について知っている人も約3割いました。

「外国人が日本語を身に付ける」には「無料の日本語学習の機会の充実」が過半数でトップ、その後に「国や地方公共団体が日本語学習機会を提供」「友人・家族・地域住民などが教える」と続きますが、「友人・家族・地域住民などが教える」の割合が少なくなってきているのはちょっと気になりました。そのような「日本語学習の手助け」に参加してみたいという人は過半数を超え、「特に興味・関心はない」を大きく上回っています。身近な外国人の日本語のサポートをしてみたいという意識が日本社会の中に着実に広がっているのを感じる数値です。

敬語に関する言葉遣いに対する印象
~「先生は講義がお上手ですね」は気にならない人が6割強

ここでは、8つの「誤り」のある敬意表現が気になるかならないかを聞いていますが、「最も気にならない」のが「先生は講義がお上手ですね」という表現でした。

これは日本語教育能力検定試験にもよく出てくるような表現ですが、一般的には目上の人を直接的に「褒める」のは失礼にあたるとされています。しかし、このような目上を褒める表現が現代社会ではあまり気にならなくなってきているのかもしれません。

常用漢字表改定で追加された漢字の印象
~常用漢字でも振り仮名・仮名書き希望

平成22年度に常用漢字表の改定が行われ、漢字が191字増えましたが、それらの漢字についての印象を尋ねています。「漢字を使うことで,意味の把握が容易になる」という評価を受けている漢字がある一方、「読みにくいので,振り仮名を付けるのが望ましい」「読みにくいので,仮名書きが望ましい」という評価を受けている漢字もありました。

「読みにくいので,振り仮名を付けるのが望ましい」は,割合が高い順に,「彼は驚くほど語が豊富だ」(60.9%),「秋の京都を訪ねる」(57.4%),「西欧文明への憧憬」(55.4%)となっています。「読みにくいので,仮名書きが望ましい」は,「彼は驚くほど語が豊富だ」(11.6%),「名誉を損する」(11.5%),西欧文明への憧憬」(11.4%)でした。

新しい表現に対する印象や、慣用句等の認識と使用
~「ガン見」「ガン寝」は気になる

「~活」(「婚活」や「終活」など)、「~ビズ」(「クールビズ」や「ウォームビズ」など)、「~ハラ」(「パワハラ」や「モラハラ」など)、「ガン~」(「ガン見」や「ガン寝」など)、「アラ~」(「アラサー」や「アラフィフ」など)のそれぞれについて、自分が使うか、他人が言うのが気になるかなどを尋ねています。

毎年多くの言葉が新しく生まれ、その多くは消えていきますが、中にはやがて市民権を獲得して辞書に掲載されるような言葉も出てきます。これらの言葉が10年後にどうなっているかを想像するのも楽しいものです。

この中で、「自分は使わないし,他人が言うのも気になる」が3割強と圧倒的に多かったのが「ガン~」でした。ここに挙げられた言葉の中で、「~ビズ」「~ハラ」「アラ~」はそれぞれ、英語の「biz=business(ビジネス)」「harassment(いやがらせ)」「around(おおよそ)」を短くしたものですが、「ガン~」はどこから生まれた言葉でしょうか。これは「ガンガン」という強調を表す意味の若者言葉から来ています。対義語は「チラ見」でしょうか。

「手をこまねく」「敷居が高い」「浮足立つ」などの慣用句の意味は、辞書などで本来の意味とされているものより、それとは異なる意味と捉えているという人のほうの割合が高いという結果が出ました。例えば「敷居が高い」は、本来の意味である「相手に不義理などをしてしまい、行きにくい」よりも、「高級すぎたり、上品すぎたりして、入りにくい」を選んだ人の割合が圧倒的に増えています。まさに言葉の意味が時代とともに変化していることが数値からも分かります。また、本来の言い方である「新規まき返し」よりも「新規まき直し(ネジを巻くイメージ?)」を使い、本来の言い方である「雪辱を果たす」よりも「雪辱を晴らす(屈辱を晴らすとの混同か?)」を使う人の割合が高いことが分かりました。

一つ一つの言葉を生態を見ていくのは大変興味深く、またそのような変化に対してどのような姿勢で臨むのかは、日本語教師一人ひとりが考えなければならないところでもあります。

令和元年度「国語に関する世論調査」の結果について

https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/92531901.html

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