7月にJR四ッ谷駅前の真新しいビルの13階に外国人在留支援センター(略称:フレスク)がオープンしました。センターには外国人の就労支援や法律相談を担う8機関が集まり、外国人・企業双方からの相談に応じています。新型コロナウイルス感染症の拡大が日本人はもちろん、外国人の雇用にも大きな影響を与えている今、交通の便がいい東京の中心に分かりやすい相談窓口ができました。
外国人受入れの基本方針・施策をまとめた総合的対応策
そもそもこの外国人在留支援センターの構想は、2018年12月に「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」によって取りまとめ・決定された、「外国人材受入れ・共生のための総合的対応策(以下、「対応策」)」に見られます。これは、日本の外国人受入れに関する基本的な政府方針で、外国人材を適正に受け入れ、共生社会の実現を図ることにより、日本人と外国人が安心して安全に暮らせる日本社会の実現に寄与するということを目的にして作られています。
この対応策がまとめられた背景には、既に多くの外国人の存在なしには構造的に成り立たなくなっている日本社会や日本経済の状況があります。この対応策がまとめられて以降、外国人受入れに向けて2019年4月には新しい在留資格「特定技能」の創設、6月には日本語教育推進法の国会成立・施行と、日本語教育にも大きな影響を与える動きが加速していきました。
この「対応策」は、2019年6月の「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策の充実について」、同12月の「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(改訂)(以下、「改訂対応策」)」と、定期的に内容を改訂・拡充してきましたが、この度2020年7月に「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(令和2年度改訂)(以下、「令和2年度対応策」)」が発表されました。
東京・四谷に外国人在留支援センターがオープン
「対応策」では「多文化共生総合相談ワンストップセンター」、改訂対応策では「外国人共生センター」といずれも仮称で呼ばれていたものが、「令和2年度対応策」では「外国人在留支援センター」と仮称が取れ、7月6日に新宿区のJR四ッ谷駅前にオープンしました。残念ながら、当初あった「共生(共に生きる)」という文字は「支援(助ける)」という文字に代わってしまいました。
外国人在留支援センター、英文名はForeign Residents Support Center(略:FRESC/フレスク)です。センターでは、外国人からの相談対応、外国人の活用を目指す企業の支援、外国人支援に取り組む地方公共団体支援などの取組をワンストップで行うことになっています。開所当日は森法務大臣がセンターの視察に訪れました。
センターには外国人の就労支援や法律相談を担う8機関が集まり、外国人・企業双方からの相談に応じています。具体的には留学生や高度外国人材の受入れ促進、外国人材・家族の人権擁護や法律トラブル、査証相談、労働基準・労働安全衛生などに関する相談です。特に今は、新型コロナウイルス感染症の影響で職を失った外国人からの相談が多いと思われます。
「令和2年度対応策」の中の日本語教育の充実
「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」に話を戻します。7月に発表された「令和2年度対応策」を見てみましょう。日本語教育については以下の5つの項目が、また関連して「外国人の子供に係る対策」「特定技能試験・特定技能制度」について述べられています(緑字部分)。なおこの一部は、同じ7月に閣議決定された、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2020」の中でも触れられています。
①「生活者としての外国人」に対する日本語教育の充実(地域における日本語教育環境を強化するための総合的な体制整備、日本語教育の推進に関する法律に基づく地方公共団体の基本方針の作成の促進等)
→6月に閣議決定された「日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針」において、「国は日本語教育推進施策を総合的に策定・実施、必要な法制上・財政上等の措置を講ずる。地方公共団体は地域の状況に応じた日本語教育推進施策を策定・実施する」とされています。
②日本語教室未設置の地域における日本語教室開設に向けた支援の強化
→「対応策」において「日本語教室空白地域の解消支援等」とされていたものです。
③日本語教師の資質・能力を証明するための新たな資格である公認日本語教師(仮称)制度の整備
→7月に「日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議」が文化庁に設置され、公認日本語教師の法整備に向けて具体的に動き出しています。
④外国人人材との効果的なコミュニケーションを行う上でのポイントやその学ぶ手法の調査等
⑤日本語教育を行う機関のうち、日本語教育の水準の維持向上を図る上で必要な適格性を有するものに関する制度の整備の検討、検討結果に基づいた必要な措置の実施
また、外国人の子供に係る対策としては、「外国人児童生徒の就学機械の適切な確保等」が挙げられています。学齢簿において外国人の子供の就学状況を一体的に管理・把握することを促進するとしています。
さらに外国人材の受入れに関しては、「特定技能外国人のマッチング支援策等」の中で、「新型コロナウイルス感染症の影響により解雇等され、実習が継続困難となった技能実習生等に対する雇用維持支援措置の着実な実施」が挙げられています。現在、特例措置で仕事がなくなった技能実習生は在留資格を特定活動に切り替えることで異業種への就労が可能になっていますが、申請して許可が下りるまでにはかなり時間がかかるようです。「特定技能試験の円滑な実施、特定技能制度の周知・利用の円滑化等」の中では、「技能試験の受験機会の拡大等」が挙げられています。特定技能試験は4月から短期滞在の在留資格でも受験できるようになり、受験資格が拡大されました。これにより介護、ビルクリーニング、航空、宿泊、農業、飲食料品製造業、外食業など、幅広い分野の特定技能試験が日本国内でも行われる予定です。
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