編集者の一番の特権である「取材」のプロセスを、2019年9月に刊行予定の「復刊日本語」編集部がご紹介します。企画が通るまでの前回に続く、5回連載の第2回です。立法の動きを追って霞ヶ関へ、技能実習生の話を聞きに食品工場へと編集者は飛び回ります。(編集長)
取材、取材、取材
編集者の一番の特権は、自分が関心を持った人、会いたいと思った人、話を聞いてみたい・話をしてみたいと思った人に、正々堂々と仕事として「取材依頼状」を送り、取材ができるということだと思う。これは他の職業ではなかなかできないことだ。
書籍と異なり、特に雑誌を作る際には、数多くの人から話を聞くことになる。こんなことがなければ一生話をするようなこともない人から今まで全く知らなかった世界の話を聞く。自分の世界が広がり、多くの知人ができる。そしてそれが本という形になって世の中に生まれる。これが編集者の醍醐味と言ってもいいだろう。
取材の基本的な流れは以下のような感じになる。
- 取材先・取材者の当たりをつける、連絡先を調べる
- まずメールなりで連絡を取り、問題なければ取材依頼状を送る
- OKであれば日程を調整して訪問する。カメラマンが同行することもある
- 話を聞く、質問する、聞く、質問する、聞く、聞く、聞く、、、
- 聞いた内容を自分の言葉でまとめる。インタビューイーの本当に言いたかったことは何だったのかなどを振り返りながら
- 原稿を確認のためにインタビューイーに送り、最終的にまとまったものを入稿し、やがて本になる
6月の編集者日記
6月〇日 曇り
新橋の会議室で日本語教育のキーパーソンのインタビュー。飲み屋街を抜けたところにある雑居ビルの1室で、日本語教育推進法など日本語教育をめぐる国の動きの背景を伺う。終わった後に文化庁に移動して、日本語教育小委員会を傍聴。希望者は誰でも傍聴できる委員会だが、事前に申し込みをしなければならない。この申込期間が結構短いので、うっかり忘れないようにしている。
6月〇日 晴れ
アルクを退社してしばらくインドネシアで日本語教育をしていたMさんが一時帰国。お昼を食べながら、インドネシアを中心に海外の日本語教育事情について教えてもらう。アルクを退社して海外で生活している人はたくさんいるのだが、皆、日本にいた時より顔色がいい。先日、ベトナムで会ったOさんも同じだった。なぜだろう。
6月〇日 晴れ
中野にある日本語学校へ取材に伺う。ベトナムからの留学生と日本語の先生から話を聞く。留学生が心から日本語の先生を信頼している様子が見てとれて、とてもうれしい。故郷を離れ日本で一人で暮らす留学生はあれこれ心細かったり、困ったりすることもあるだろう。そんな時に心の支えになるのが日本語教師なのだ。
6月〇日 晴れ
今日は取材で山梨県へ出張。新宿7時発のあずさ1号で大月経由で塩山へ。あずさ2号ではなく、あずさ1号だった。どうでもいいが。
6月〇日 曇り
今日は取材で兵庫県へ出張。最近、出張ばかりしているので、隣の同僚が羨ましがっている。取材先は食品製造工場。こういった工場の取材は初めてだが、せっかくなので白衣に着替えさせてもらい、工場内にも入らせてもらう。技能実習生が黙々とパック詰めを行っていた。日頃食べているものも、こういうところで作られているんだなと思うと、感慨深い。
6月〇日 曇り
日本語教育推進法が成立したお祝いが新宿・歌舞伎町の怪しい中華料理屋であり、参加させてもらう。国会の会期中にぎりぎりで法案が通り、皆、顔が上気してうれしそう。美味しいお酒だった。
7月は原稿をまとめていきます。(次回に続く)
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