日本語学習者が最も頼りにするのが日本語教師。ある時は日本語の使い方を教えてくれるインストラクター、ある時は若い学習者の人生の師匠に。また、学習者が初めて深く接する「日本人代表」のように見られることもあります。(NJ編集部)
信頼感から育まれる高い日本語力
ベトナムからの留学生、グエンさんとその先生である森節子さんにお話を伺いました。
- 学習者:グエン ティ キム フォンさん(ベトナム)
- 日本語教師:森節子先生
- 教育機関:イーストウエスト日本語学校(東京都・中野区)
積極的に日本語を使うキム フォンさん
Q: キム フォンさんのご出身はどちらですか?
A:ベトナム南部のキエンザン省の町です。両親はメコンデルタ地帯で稲作をしています。兄弟は弟が一人。今は地元の高校に通っています。
Q: なぜ日本へ来ようと思ったんですか?
A:高校を卒業して大学へは1年だけ行ったのですが、経済発展している日本へどうしても留学したくて、日本語を学ぶために昨年春にイーストウエスト日本語学校に入学しました。
Q: 卒業した後は、どうしますか?
A:大学か国際関係のことを学べる専門学校に進学して勉強したいと思っています。将来は日本語とベトナム語の通訳として、日本の会社で働きたいと思っています。
Q: 日本語の勉強は順調に進んでいますか?
A:日本語は漢字や敬語が難しいですね。日本語は使わなければなかなか話せるようにならないので、学校の勉強ももちろん大切ですが、地元の中野区の国際交流イベントに積極的に参加したり、授業が終わった後は居酒屋でアルバイトをしたりして、生きた日本語を学んでいます。
Q: アルバイトではどんな日本語を使いますか?
A:メニューを全部覚えて、お客様の注文を正確に取るのが大変です。「沖政宗」「富乃宝山」「酔鯨」「酔心」「南部美人」と、漢字のお酒の名前もずいぶん覚えました(笑)。お客さんは皆優しいのですが、間違えた時にはできれば訂正してもらえると、勉強になるのでありがたいです(笑)
「森先生は日本の私のお母さんです」
Q: キム フォンさんの好きな日本語の先生を紹介してください。
A:こちらにいらっしゃる森先生です。学校の先生は皆好きですが、中でも森先生には、とてもお世話になりました。
Q: 森先生にはどんなことを教えてもらいましたか?
A:昨年の秋に校内の日本語スピーチコンテストがあったのですが、その指導をとても丁寧にしていただきました。スピーチの内容や発音や細かいところをすべて教えてもらいました。また日本語を教えてくれるだけではなく、自分が興味のある大学や専門学校の情報をLINEで送ってきてくれたりもします。
Q: とても親切な先生なんですね。
A:はい。森先生は日本の私のお母さんみたいな存在です。
Q: スピーチコンテスト以外ではどうですか?
A:イーストウエスト日本語学校では「できる日本語」という教科書を使っていますが、とてもいい教科書だと思います。森先生には初級を習いました。初級/初中級/中級の各レベルの日本語とベトナム語の翻訳リストはとても役に立ちます。
Q: 日本語はかなり上達しましたか。
A:はい。今はM1クラスという一番上のクラスに在籍しています。クラスメートには中国や台湾から来た人たちが多いので、そういう人たちとも友達になれました。
「キム フォンさんは頑張り屋さんです」
Q: 森先生からご覧になって、キム・フォンさんはどんな学生ですか。
A:物静かで真面目な学生です。口数は決して多くはないのですが、その分、内に秘めた向上心は強く、毎回の日本語の授業を確実に理解しようとしているのが伝わってきます。
Q: スピーチコンテストでは、キム・フォンさんはどんなスピーチをしたのですか。
A:「将来の夢」というタイトルでした。ご両親の米作りのご苦労や、病気に強いイネの品種の開発など、ベトナム国家やご両親への思いにあふれた感動的なスピーチでした。日頃の日本語学習に対する態度もそうですが、時折、教師である私から見ても敬意を感じます。
Q: 森先生はイーストウエスト日本語学校は長いんですか?
A:16年ほどになります。
Q: もともとなぜ日本語教師になられたんですか?
A:私はもともとは大阪の出身で、都市銀行で働いていました。勤務先の支店が繊維関連の会社が多い船場という地域にあったのですが、そこで取引先の繊維の輸出入をしている会社のインドの方から「日本語を教えてほしい」と頼まれたのがきっかけで、日本語教師になりました。
Q: 日本語教師の勉強はどうされましたか?
A:NAFL日本語教師養成プログラムで勉強した後、日本語教育能力検定試験に合格しました。その後、教え方の研修を受けて日本語学校の教師になりました。イーストウエスト日本語学校は2つ目の職場になります。
Q: 今後は日本語教師として、どんな夢をお持ちですか?
A:これから日本に来る外国の方はどんどん増えると思うのですが、そうした方々に「日本に来てよかった」と言ってもらえるようなお手伝いを、日本語教育を通じてしていきたいと思っています。これまで教えてきた経験やノウハウを、若い日本語教師の方たちにも伝えていきたいですね。
森先生に対するキム フォンさんの信頼が厚いことが、ひしひしと伝わってくるインタビューでした。キム フォンさん、森先生、本日はありがとうございました。
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