「日本語教育機関認定法 よくある質問集」は、文化庁によって日本語教育の所管が行われていた時から改定が重ねられてきたものです。今回の改定版によりQ&Aが233にも及ぶ、大変充実した「質問集」になりました。この「質問集」の中から、新しく更新された情報を中心にピックアップしてみます。
日本語教育の所管は文部科学省へ
2023年5月に成立した「日本語教育機関認定法」により、2024年4月から認定日本語教育機関や登録日本語教員の制度が始まりました。同時に日本語教育を所管が文化庁から文部科学省に移管しました。この度、文部科学省の「日本語教育」のサイトに、「日本語教育機関認定法 よくある質問集(令和6年4月18日公開版)」が公開されました。
恐らく、文化庁や文部科学省には、認定日本語教育機関、登録日本語教員、日本語教員試験などについて、日夜さまざまな問い合わせが寄せられていることと思います。そのような中から、多く寄せられている質問が、「よくある質問集」としてまとめられていることと思われます。
現職者の定義
Q214. 登録日本語教員の資格取得に係る経過措置において、どのような場合に「現職者」に該当しますか。
A 平成 31 年4月1日から令和11年3月31日までの間に、以下のいずれかにおいて1年以上日本語教育課程を担当した場合、「現職者」に該当します。
・法務省告示機関で告示を受けた課程
・国内の大学
・認定日本語教育機関で認定を受けた課程
・文部科学大臣が指定した日本語教育機関(認定を受けた日本語教育機関が過去に実施した課程)
→今回の経過措置では、Cルート以外は「現職者」であることが前提になっています。但し、「現職者」といっても、いつ、どこで、どんな形態で、どのぐらい教えてきたのかは、いろいろなケースが考えられると思います。
ここでは、改めて「現職者」の定義が明確に示されました。上記の4つの場合が「現職者」に該当するということは、これらに該当しない場合は、基本的に「現職者」には該当しないということになると思われます。
海外での経験
Q217. 海外の大学で日本語を教えた経験は、現職者の要件である1年以上日本語教育課程を担当した経験に含まれますか。
A 海外の大学での経験は含まれません。
→これは気になる方が多いのではないかと思いますが、残念ながら海外での日本語教育経験は1年以上の経験には含まれないということが明言されました。経過措置を活用するのであれば、改めて、前述の4つの機関・課程のいずれかで1年以上の経験を積む必要があります。
現養成講座受講中の場合の基礎試験の免除
Q226. 経過措置 C ルートの課程を受講中であり、修了していない状態で、日本語教員試験の基礎試験の免除を受けられますか。
A 試験が実施された翌年の4月までに当該養成課程の修了の証明書を提出することができるのであれば、応用試験のみの受験をすることが可能です。ただし、試験結果が合格水準に達していたとしても、当該養成課程の修了の証明書が提出されるまでは仮合格の扱いとなり合格証書は発行されず、期限までに証明書が提出されなければ合格は取り消される点にご留意ください。
Q227. 経過措置ルート D-1、D-2、E-1 又は E-2 の対象者が、講習の修了前に日本語教員試験の基礎試験の免除を受け応用試験を受験することは可能ですか。
A 試験が実施された翌年の4月までに講習を修了し修了の証明書を提出することができるのであれば、応用試験のみの受験をすることが可能です。ただし、試験結果が合格水準に達していたとしても、講習の修了証が提出されるまでは仮合格の扱いとなり合格証書は発行されず、期限までに修了証が提出されなければ合格は取り消される点にご留意ください。
→Cルート、あるいはD-1、D-2ルートなどの養成課程を現在受講中の人は多いのではないかと思います。受講中であっても、基礎試験を受けずに応用試験を受けることが可能とのことです。もちろん、最終的に養成課程を修了できなかった場合は、仮合格が取り消しになるとのことです。
これに類するものに、以下のようなQ&Aがあります。
Q211. 養成課程に在籍中の者は無事に修了すれば基礎試験が免除されるはずですが、終了前の在籍中に応用試験のみ受験できますか。基礎試験も受験しなければならないのでしょうか。
A 養成課程を修了しておらず在籍中であっても、応用試験のみ受験することを可能とする予定です。この場合、日本語教員試験に合格するためには、試験実施後、翌年の4月までに、養成課程を修了し養成課程の修了証書を提出する必要があります。
→「可能とする予定です」という微妙な表現がやや気になりますが、移行措置ではなく「養成機関ルート」の場合も、基本的にはQ226.やQ227.と同じ考え方になるかと思います、
今後の予定
文部科学省の「日本語教育」のサイトでは、今後のスケジュールも更新されています。
5月1日~17日:認定日本語教育機関の申請
8月上旬:登録実践研修機関・登録日本語教員養成機関の申請
秋頃:認定日本語教育機関の認定、登録実践研修機関・登録日本語教員養成機関の登録
11月17日:日本語教員試験本試験実施
冬頃:日本語教員登録開始
2025年4月以降:認定日本語教育機関の開設
今後も、「日本語教育機関認定法 よくある質問集」は改定されていくと思いますので、関係される方は注意してください。
執筆:新城宏治
株式会社エンガワ代表取締役。日本語教育に関する情報発信、日本語教材やコンテンツの開発・編集制作などを通して、日本語を含めた日本の魅力を世界に伝えたいと思っている。
※アルクでは、7月中に日本語教員試験の概要や対策法がわかる試験ガイドの発行を予定しています。順次、詳細をお伝えしていきますので、乞うご期待!
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