日本語教師にわからない日本語なんて……ある!この記事では、NJ編集者(妙齢)が「よく見るけど実はよくわかっていない」「今さら誰かに聞けない」流行語にあらためて向かい合ってみたいと思います。流行語=言葉の乱れ……などと思わず、日本語の奥深さや面白さを見つめるきっかけにしてください。
♯9 蛙と蛇
この記事では、いつも流行の周回遅れにあって、今さらすぎて誰にも聞けないような言葉について取り上げていますが、今回は現在進行形で流行している言葉を紹介します。みなさん、ついてきてくださいね!
★蛙化(かえるか)現象
Z世代を研究するシンクタンク組織・Z総研が独自で調査した「Z世代が選ぶ2023年上半期トレンドランキング」が発表され、1位に輝いた流行語は「蛙化現象」でした。
この「蛙化現象」という言葉、ニュースなどで見たり聞いたりしたことがあっても、意味がわからないという人も多いのではないでしょうか。
蛙化現象とは、特に女性が「好きな相手が自分に好意を持っているとわかったとたん嫌悪感を持ってしまう」という現象ですが、転じて「好きな相手のちょっとした行為によって、恋愛感情が冷めてしまう」こともいいます。
両想いになれたのは幸せなことなのに、嫌いになってしまうなんて気持ちがわからない、という人もいますが、同じような経験をしていて蛙化に共感する人も多いようです。
蛙化現象という言葉の由来は、グリム童話の「かえるの王さま」という話にあります。気持ち悪い蛙がステキな王子様に変わって好きになるのとは逆に、好きだった相手が嫌いな相手に変わるという状態が「蛙化」というわけです。
例1:
A:「この前のデートで、彼氏がSuicaの残高不足で改札引っ掛かってるの見たら、なんか情けなくて嫌いになっちゃった」
B:「蛙化、わかるー。」
★蛇化(へびか)現象
捨てる神あれば拾う神あり……。最近では蛙化現象とは反対の事象を表す「蛇化現象」という言葉が出てきました。
「蛇化現象」とは、好きな相手であれば、どんなことでも許してしまうことです。由来は「蛙化現象」からで、特に深い意図はなく「蛙に対抗するのは蛇」ということで名づけられたようです。
例2:
A:「私の彼氏、この前左右違う靴はいてデートに来たんだよね。あわてんぼうでかわいいでしょ?」
B:「蛇化ってやつ? いや、そりゃないわ~。私なら蛙化しそう……。」
★使い方の注意など
「蛙化現象」や「蛇化現象」は日本語学習者が普段使う機会はないと思いますが、興味深いことなので、話のタネになりそうです。中級以上のクラスなら、日本の若者事情として「蛙化現象」についてどう思うか、などのディスカッションをしても面白いかもしれません。自分の経験や考えも話すと盛り上がりそうです。
「好きな人が振りむいたら、急に嫌いになった」ということは昔もあったと思いますが、これに「蛙化」という名前を付けたZ世代のネーミングセンスは素晴らしいですね。蛙から王子様になる、王子様から蛙になる、どちらも魔法が解けたということでしょうか。
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