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日本語学校における留学生の進路指導を考える① 進路選択・進路指導に感じる難しさとは

国内の日本語学校に来る留学生は、そのほとんどが日本の大学や専門学校に進学するか、就職を考えています。進路について自分の希望をしっかりと見つめ、キャリアプランを立てたうえで納得して次に進めれば理想ですが、様々な理由からそれが難しいのが現状で、進路指導を行う教師側も指導の難しさを感じているようです。㈱RENは留学生の進学・就職のサポ―トをしていますので、今回のコラムでは留学生の進路指導について考えてみたいと思います。第1回目では、㈱RENが考える、進路の選択・指導において問題となりうる点の整理を行います(執筆/㈱REN樋口広布)

悶々としてしまう進路指導

2022年以降、コロナ禍に伴う入国制限が緩和され、留学生の受け入れも再開されました。「春」の訪れを喜ぶ一方で、本来であれば受入れ定員の約半数の留学生を3月に見送り、4月に新入生を受け入れるという流れが崩れ、定員に近い留学生を一挙に1年生として受け入れることとなった日本語学校も少なくありません。また留学生の出身国がベトナムからネパール、バングラデシュ、スリランカ等の国に大きく転換した地域も多いです。そのような現状を踏まえた上で、留学生の進路選択や進路指導に難しさを感じる点について見てみましょう。

多くの留学生は、来日時に用意した留学理由書なども基に、日本語学校卒業後の進路について面談を受けたり、アドバイスを受けたりするなど、入学時から進路について考えていきます。そして、在日2年目の6月以降、例えば留学生のための合同進学説明会やオープンキャンパスへの参加を通して、具体的に学校情報を得て出願先を決めていく流れが一般的です。

もちろん、その流れの中でしっかり自分の進路を見つけられる留学生もいます。しかし、自分のキャリアを考えたり、学校を選んだりする時間が足りなくなって(考えるのがイヤになって?)、最終的には進路指導の先生や先輩留学生(アジアの留学生はよくお兄さん、お姉さんという表現を使いますよね…)がお勧めしてくれる進路先を選び、他人に「用意された道」を進んでいくというケースも少なくないように感じました。

私自身も㈱RENを立ち上げる前は日本語学校に勤務しており、日本語学校の中の立場から進路指導を行うという経験も積んだのですが、先述のような状況を目の当たりにして、本人たちが納得しているのであればそれはそれでよいのかも知れないと折り合いをつける一方で、せっかくならやりたいことを見つけて日本で活躍して欲しいと感じていました。そして何よりも進路指導を行う日本語教師が、時間が足りなくなってしまった一人一人の留学生に合う進学先を提案し、出願書類作成や面接、試験対策、入学手続きまで各学校によって異なるプロセスを1から10まで全て補助する方法では、日本語教師の負担が大きすぎて、このままでは立ち行かなくなるのではと悶々としていました。

在留資格についての理解の問題

ここからは、どうして留学生がキャリアについて考える時間が足りなくなってしまうのか3つの視点でお話ししたいと思います。

留学生が進路選択を考える上で忘れてはいけないのが、在留資格です。皆さんもご存じの通り、外国人が日本で働ける仕事、働けない仕事があるのです。例えば現状では、調理師や美容師としてでは「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は取れず、日本で働き続けることはできません。調理、美容分野に関しては、在留資格「特定技能」や国家戦略特区の登場で活躍の場が広がりつつありますが、留学生一人一人が、最長2年の日本語学校での学習期間の中で日本語を習得しつつ、変化していく在留制度への理解を深め、自分がやりたいこと、かつできること見つけるのは至難の業と言えるでしょう。

そしてこの在留資格に関する制度は、受け入れ先となる上級学校や企業の担当者も理解できていないケースも少なくないため、進路担当者がフォローすることも多いですよね。更に、進路指導目線で考えると、制度的にはできると分かっていても本当に在留期間更新ができるのか、安心して応援できる道なのか決めきれず、二の足を踏んでしまったことがある方も少なくないのではないでしょうか。

進路先と希望の仕事のアンマッチの問題

制度的にできる、できない仕事を見極めた上で留学生が次に考えないといけないのは希望の仕事に就くための進学先です。例えば介護福祉士と看護師の業務領域が母国とは異なり、日本における介護福祉士、看護師の区別ができていない留学生も少なくありません。仕事内容について誤解したままであれば、実際には看護師の仕事を希望していたのに介護福祉を学ぶ進学先を選んでしまうということも起こりえます。また、ビジネス系の専門学校について、「独立・経営系」のコースもあれば「事務・経理・販売系」のコースのみの学校もあるわけですが、それらの違いを理解しないまま、「独立・経営」の勉強ができると思い「事務・経理・販売系」のコースを選んでしまう場合もあります。

このような例から、留学生が文化の違いや言葉のニュアンスの違いを乗り越えて、卒業年度の6月以降で学校比較をするためには、それ相応の準備が必要になるなと感じています。先述の在留資格の理解の問題も含めて、自分ができると思っていた勉強や仕事ができないという事実を知り、驚愕したりモチベーションを失ってしまったりした留学生をたくさん見てきました。

これはつい最近起こったケースなのですが……通訳を希望している留学生に、彼女がイメージしている通訳と、進学先として考えている通訳系の学校で勉強し、実現できるキャリアが「本当に同じかどうか」を確認してもらったところ、実際はイメージしたものと違ったため、目指す進学先を専門学校から大学に変更することになりました。彼女は2024年卒業予定の留学生でまだ時間があるとは言え、必要な日本語の試験や入学試験対策が専門学校と大学では異なりますので、学習スケジュールの組みなおしは彼女にとって大きなストレスとなってしまいました。

進路選択に対する姿勢の問題

最後は留学生側の変化に焦点を当てます。コロナ前は中国やベトナムからの留学生が多かった学校でも、ネパール・スリランカ・バングラデシュ・ミャンマー等からの留学生が増えたのではないかと思います。㈱RENでは留学生紹介事業も行っていますので、直接、来日前の留学生と話をすることも多いのですが、とにかく受け身の留学生が増えたという印象です。もっと言うなら、日本に行けば周りの人たちが何とかしてくれる、そんな空気を最近の留学希望者たちから感じます。

このことについては、留学生が母国において例えば社会的、経済的な要因などから「自らの意思で選択をするという経験を積み重ねてこなかったもしくは、できなかった」ということが一因ではないかと推察しています。母国での進学先や就職先に関して選択肢少ないということはよく耳にしますし、留学先となる日本語学校選び一つとっても、現地の紹介機関の担当者が紹介してくれた学校で在留資格「留学」の申請を行うケースがほとんどです。そして、留学後は進路指導の先生や先輩(お兄さん、お姉さん)が言った通りにしていれば何とかなる、何とかしてくれるという流れにつながっているのではないでしょうか。まずはこの「何とかしてくれるという考え方」を何とかしなければ、進路指導の負担は増える一方だと考えて、改善に向けての取り組みを行っているところです。

おわりに

以上、第1回では㈱RENが考える留学生の進路指導における問題点をお話しさせていただきました。次回の記事では、こういった問題を解決するための㈱RENとしての取り組みをご紹介します!

執筆:樋口 広布(株式会社REN代表取締役)

大学・専門学校・日本語学校の学生募集や高校生、留学生の進路指導イベントの企画立案を行う代理店で6年勤務後、日本語学校で学生募集、進路指導の経験を2年積み、2019年6月に株式会社RENを立ち上げる。日本人と外国人が協力してよりよい日本社会を築いていけるよう、外国人の方の日本への留学、進学、就職のトータルサポートを中心とした事業展開を行っている。最近は年末年始にたるんでしまった体を引き締めるべく、必死にランニングとトレーニング中。

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HIROSHI HIGUCHI@株式会社REN(@REN_education)さん / Twitter

執筆協力:三上智里

日本語教師。教務主任として学校運営や進路指導にも広く携わり、これまで指導した学生の国籍は30か国を超える。木村拓哉をこよなく愛している。

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