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日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議6 ――新たな制度に必要な基盤整備

文化庁で2022年5月31日から月1回程度のペースで開催されている「日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議」は、日本語教師の国家資格の法制化に向けた詳細を検討する有識者会議です。2020年~2021年に「日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議」が取りまとめた「日本語教育の推進のための仕組みについて(報告)」をベースとしながら、日本語教員の国家資格などについて具体的な検討を進めています。

DX化の促進による基盤整備

日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議(以下、本会議)は、2022年11月17日(木)に第6回会議がオンラインで行われました。「有識者会議における検討の方向性に関する事項(たたき台案)」=全体プログラムの中で、今回は「新たな制度に必要な基盤整備」について議論されました。また、改めて全体を通しての意見交換が行われました。

たたき台の最終章に当たる「新たな制度に必要な基盤整備」では、以下の2点が示されました。

  • 必要な基盤整備
  • 新たな制度の活用促進

必要な基盤整備としては、日本語学習希望者や認定機関等との連携希望する者に対し、多言語による認定日本語教育機関、指定実習実施機関、指定日本語教師養成機関の情報など、日本語教育に係る一元的な情報発信の仕組みを検討するとしています。また、申請などの業務負担軽減、効率化の観点から各種申請を電子上で行うシステム構築について検討するとしています。いわゆるDX化の促進です。

具体的には、現時点の想定として対象別に以下のようなことが挙げられています。

【日本語教育機関】

・認定に係る申請について、サイト上の電子申請を可能とし、日本語教育機関及び国の各種手続きを簡素化するとともに、認定を受けた機関についての多言語での情報発信

【日本語教師養成機関】

・指定に係る申請について、サイト上の電子申請を可能とし、手続きを簡素化するとともに、指定を受けた機関についての情報発信

【日本語教師】

・試験の受験申請や合格証発行、資格取得証明書の電子化により、各種手続き等を簡素化

・資格取得後、自己研鑽のための研修を受講した際には、受講歴の証明のデジタル化を促進

・教育実習の修了や勤務経験、研修の履歴を一貫して記録・管理することが可能になり、各教員の勤務状況や学びの軌跡の可視化を通じたキャリア形成に資する仕組み

【日本語学習者】

・情報の一元化、及び認定機関の多言語情報発信により、情報アクセスの利便性向上。認定機関に直接アクセス可能となるような仕組みを検討

また、地域における日本語教師養成・研修の拠点整備、関係機関のネットワーク化を推進するとしています。さらに、せっかく情報が一元化されたサイトや便利なシステムができても、それが知られていなければ十分に活用されないことから、周知、活用促進などを積極的に進めるとしています。

関係省庁との連携

また、今回「認定日本語教育機関」「登録日本語教員」を新たに創設するという法案においては、留学はもとより就労や生活、留学生だけではなく技能実習や特定技能、さらには地方公共団体や海外なども広く関わることから、今後、関係省庁との連携が極めて重要になってきます。

そのため、「『認定日本語教育機関』及び『登録日本語教員』の活用にイメージ(関係省庁との連携)」という検討中の資料が新たに事務局から出されました。それを見ると、日本語教育が実に社会のさまざまな領域、そして省庁の政策に関わっていることがわかります。

【留学関係】

・在留資格「留学」付与の要件(法務省)

・日本語教育機関の認定に関する協議等(法務省・文科省)

・在外公館、独立行政法人(国際交流基金、日本学生支援機構等)等を通じた国内・海外発信(外務省・文科省)

【就労・生活関係】

・「技能実習」「特定技能」制度における活用(法務省・厚労省)

・地方公共団体、国際交流団体、経済団体、企業等との連携による日本語学習機会の提供(文科省・法務省・厚労省)

・「認定日本語教育機関」の複数言語による情報提供(法務省・厚労省・総務省・経産省)

こういったさまざまな省庁との調整は現在も今後も続いていくものと思われます。

現職日本語教師の経過措置

全体を通した意見交換の中では、前回に引き続き現職日本語教師の経過措置に対する意見が多く出されました。これは、特に現職の日本語教師の皆さんにとって関心の高いところかと思います。

第6回会議で出された「登録日本語教員の資格取得ルート(イメージ)【たたき台】」*1は、第5回会議の内容から大きな変更はありませんでしたが、現段階で気になるところは、以下の2点です。

1、平成12年以前の民間試験(日本語教育能力検定試験)合格者は、講習Ⅰを修了した上で、筆記試験②に合格しなければならないとされていること。

平成12年以前の日本語教育能力検定試験に合格している現職日本語教師は、キャリアが長く、各機関において重要な役割・責任を担っていることが多いという意見が会議で出されました。実際その通りだと思います。そのような各教育機関の中核人材が、改めて筆記試験に合格しなければ登録日本語教員として登録できないということになると、少なからず教育現場に混乱が起きる可能性はあるかもしれません。

2、今回の経過措置の対象の多くが「質が担保された機関で教える現職日本語教師」であること。

日本語教育能力検定試験は1986年の第1回試験以来、毎年実施されており、これまで多くの合格者を輩出しています。中には検定試験に合格はしていても、現在日本語を教えてはいないという人もたくさんいます。そのような方が過去の検定試験合格の実績を生かして登録日本語教員になりたいと思った場合は、まずは現職日本語教師にならなければならないということになります。

2022年3月の海外からの入国制限の緩和以来、幸い今のところは留学生等の日本語学習者の入国は予想以上に増えており、教育現場からは日本語教師不足の声も聞こえてきます。以前に日本語教育能力検定試験に合格されていて、登録日本語教員を目指すという方は、これを機に新しい一歩踏み出して、来春から日本語を教え始めるということも選択肢の一つとして考えてみてもいいかもしれません。

「日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議」を傍聴しよう

「日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議」は、事前に申し込めばオンラインでの傍聴が可能です。傍聴に関するお知らせは、文化庁のホームページの「新着情報」に、会議実施日の数日前から掲載されます。募集期間が短いので、関心がある人は定期的に文化庁のホームページを小まめにチェックするようにしてください。

なお、次回の第7回日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議は、2022年12月13日(火)に開催される予定です。

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*1:登録日本語教員の資格取得ルート(イメージ)【たたき台】」は、以下の「資料2:質の維持向上の係る仕組みの方向性(養成課程、実習)」の3ページをご覧ください。https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kondankaito/nihongo_kyoin/93787302.html

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