検索関連結果

全ての検索結果 (0)
日本語教師のための 今さら聞けない流行語2022「陰キャ・陽キャ」

日本語教師にわからない日本語なんて……ある! この記事では、NJ編集者(妙齢)が「よく見るけど実はよくわかっていない」「今さら誰かに聞けない」流行語にあらためて向かい合ってみたいと思います。流行語=言葉の乱れ……などと思わず、日本語の奥深さや面白さを見つめるきっかけにしてください。

♯4 陰キャはネクラか?

今回のテーマは、性格に関する流行語についてです。時には差別的に使われてしまうこともありますが、ここでは言葉の意味に焦点をあてて考えたいと思います。

★「ネクラ」と「ネアカ」

性格を表す言葉として、まず思い出すのは「ネクラ」と「ネアカ」ではないでしょうか。由来は諸説あるようですが、1980年代にタモリが広めたというのは間違いないようです。人間の性格を2つに分け、表面的に明るく見えるが根の部分では暗い「ネクラ」と、反対に表面的には暗く見えるが根の部分は明るい「ネアカ」という、表面と内面の違いを表す言葉でしたが、だんだんとネアカは廃れてしまい、ネクラは「性格が暗い人」というマイナスの意味だけを持つ言葉になってしまいました。

★「陰キャ」と「陽キャ」

現在よく使われている、「陰キャ」(陰気なキャラクター)と「陽キャ」(陽気なキャラクター)は、ネットスラングとして生まれ、「ネクラ」「ネアカ」の現代版といわれています。

例1:「あいつ、陰キャだから誘っても無駄だよ。」

例2:A「日曜日ディズニーランド行かない?」

   B「オレ、陰キャだから家でゲームするわ。」

「陰キャ」「陽キャ」は他人に対してだけでなく、自分に用いることもできます。また、明るいイメージの「陽キャ」も「あいつ、陽キャだから面倒くさい。」のようにマイナスの意味にもなり、性格を表す使い勝手のよい言葉として使われているようです。

★チー牛

陰キャに関連して、「チー牛」という流行語があります。「チー牛」とは「チーズ牛丼」の略で、「チーズ牛丼を注文してそうな顔」のことを指します。ネット掲示板で出回ったイラストが発端と言われており、掲示板の書き込みが差別的な内容だったため、差別用語との指摘もありますが、一般的には「陰キャ」「オタク」の意味として使われることが多いようです。

例3:

A「この前チー牛テイクアウトしたんだけど、寂しいやつだと思われたくなくて二人前頼んだ。」

B「あんた、チー牛すぎる。」

★使い方の注意

どれもよく使われている言葉ですが、マイナスの意味になる場面では注意が必要です。特に「チー牛」のように差別的と言われる言葉は人を傷つける場合もあることを認識しておいた方がいいでしょう。ネットスラング全般の注意であり本記事の目的でもありますが、由来が複雑なために、学習者にそのまま説明しても理解が難しい言葉もありますので、教師は「なぜ使い方に注意が必要なのか」をしっかり説明できるよう知識を持っておきたいですね。

暗い・明るいで性格を考えるというのは意外と世界共通なのかもしれません。「自分の性格をクラスメートに説明する」など、うまく扱えば学習者とも盛り上がる話題にできそうです。

「陰キャはチーズ牛丼を頼んでいそう」という発想が共通認識になるのが、ネット社会の特徴を表していると思います。私は陰キャですが、牛丼はオリジナル派です。

次回→日本語教師のための 今さら聞けない流行語2022 「デレ」

関連記事


ベトナムにルーツを持つ子どもたちが気づかせてくれたこと―多様な言語・文化的背景を持つ子どもたちとともに学ぶ、これからの学校(2)

ベトナムにルーツを持つ子どもたちが気づかせてくれたこと―多様な言語・文化的背景を持つ子どもたちとともに学ぶ、これからの学校(2)

日本語も日本文化もわからないまま、家庭の事情等で来日し、日本の学校に通う子どもたち。その学習にはさまざまな支援が必要です。子どもたちの気持ちに寄り添い、試行錯誤を続ける近藤美佳さんの記事、後編です。


ベトナムにルーツを持つ子どもたちが気づかせてくれたこと―多様な言語・文化的背景を持つ子どもたちとともに学ぶ、これからの学校(1)

ベトナムにルーツを持つ子どもたちが気づかせてくれたこと―多様な言語・文化的背景を持つ子どもたちとともに学ぶ、これからの学校(1)
国内の小中学校では外国籍、外国にルーツを持つ子どもたちが増え続けています。子どもたちへの日本語教育の重要性がようやく注目され、母語・母文化継承についても少しずつ認識されるようになってきました。

木村宗男と平和のための日本語教育

木村宗男と平和のための日本語教育
2024年4月より日本語教育機関認定法が施行され国家資格「登録日本語教員」制度が開始されます。戦後の日本語教育の歩みの中でも大きな転換点をむかえ、とりわけ、日本語教員養成は新たなフェーズに入ったと言えるでしょう。一方で、現代の地球社会には、環境や災害、紛争、感染症など、多くの危機的な問題が横たわっていて、日本語教育や日本語教師に求められる役割を広い視野で考えることも求められています。今回は、戦中・戦後に日本語教育に従事し、日本語教育学会の設立や教員養成に寄与した木村宗男に着目し、その活動と志向された平和のための日本語教育をご紹介します。