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知的好奇心をくすぐるgaccoの言語学講義

10年ほど前に米国で始まったMOOC(Massive Open Online Course=大学レベルの授業のオンラインでの無償公開)。アメリカのスタンフォード大学やコロンビア大学なども参加するCourseraなどが有名ですが、このMOOCの日本版の普及・拡大を目指してJMOOCが発足し、gacco(ガッコ)というサービスを株式会社ドコモgaccoが提供しています(会員数85万人)。2021年1月からスタートしたこの講座の中で、日本語教師の皆さんにもお勧めしたいものがありますのでご紹介します。

無料で視聴できる大学レベルの授業

gaccoのホームページのURLは以下の通りです。
https://gacco.org/

gaccoの特徴として、次の3つが挙げられます。

1、さまざまなジャンルの本格的な大学レベルの講義を無料で受講できる。
2、単に動画を見るだけではなく、掲示板で他の受講生とディスカッションができる。
3、クイズやレポートを提出し、所定の基準を満たすと修了証が発行される。

パソコンだけではなく、スマホやタブレットでも受講できますので、隙間時間を使って気軽に動画を視聴したり、クイズに答えたりすることができます。提供されている講義は実に多岐にわたります。一例を挙げると、2021年1月現在では「京都からおくる日本史研究の最前線」「心理学スパイラルアップ」「社会人のためのデータサイエンス入門」「銀河考古学入門~銀河の形成と進化を辿る~」「健康づくりのための運動と栄養摂取の実践」「生存学の企て~病い、老い、障害とともに~」などが開講されています。また、既に終了していますが、過去には「世界に日本語を広めよう!~”そうだったのか”の日本語教育学」という、日本語教師入門講座も開講されていました。2021年1月から始まる講座で、日本語教師の皆さんにもお勧めしたい講座をご紹介します。

教養としての言語論:言語は私たちをまやかし生きにくくさせる

・講師:山中司(立命館大学教授)

・学習期間:4週間

・開講日:2021年1月7日(木)

・閉講日:2021年3月17日(水)

開講日から閉講日までの間、いつからでも受講を始めることが可能です。非同期型の講義ですので、最初からでも気になったところからでも視聴することができ、空いている時間にクイズに取り組んだり、掲示板を見たりして、自分のペースで学習を進められます。

本講義は言語を用いたコミュニケーションがテーマですので、まさに日本語教育にも関係が深いのですが、言語の持つプラスの側面だけではなく、複眼的・横断的に言語とコミュニケーションについて考える内容です。日本語教師養成講座の言語学で学ぶような領域ですが、単に専門用語や人物名を浅くなぞるようなことではなく、専門家ならではの切り口で、深く楽しく学ぶことができます。

例えば第1週にはグライス(会話の公理、発話の含意)、オースティン(発話内行為)、サール(間接発話行為)、サピア・ウォーフの仮説(言語相対論)など、日本語教育能力検定試験でおなじみの人々が登場します。また第4週には近代言語学の父ともいわれるソシュール(通時態と共時態、能記と所記、ラングとパロール、二重分節性など)も登場します。

また、第2週は社会言語学をテーマに講義が行われますが、地域方言や社会方言、レジスター(register)、威信(prestige)、標準語の成立、母語と母国語、ピジンとクレオールなどを扱っています。日本語教育能力検定試験でこのあたりが不得手な方や、「興味はあるが敬遠ぎみ」という方には、特にお勧めしたい内容です。

言語学と言うと、どちらかと言えば実際の教育現場からはやや遠いものとして捉えられ、苦手としている人が多いように思われます。これは言語学の学習が、学生時代の世界史や日本史の授業のような用語の表面的な理解や暗記が中心になっているからではないでしょうか。講義の中で紹介されるさまざまな言語学者のエピソードや、専門家ならではのユニークな視点は、きっと受講者を言語学の深遠な世界に誘ってくれると思います。講師の情熱あふれる語り口にも引きつけられます。

gaccoを利用するには

基本的にgaccoの講義は無料で視聴できます。

1、まず、講座を受講する前に新規会員登録https://lms.gacco.org/register )をします。会員登録無料です。

2、次に視聴を希望する講座の受講登録をします。受講登録をすることができるのは「募集中」および「開講中」の講座です。受講登録完了すると、ログイン後に表示される「マイページ」に受講登録した講座が表示されるようになります。​

3、開講日になったら受講できるようになります。マイページから講座を選択し受講してください。​パソコン、スマホ、タブレットなどを使いオンラインで受講します。

4、各週の単元内に確認テスト(選択式の問題)があり、それらの得点率60%以上で修了証が発行されます。

コロナ禍の影響で、家にいる時間が増えていると思います。そのような時間を有効に活用するための方法として、今年はgaccoで興味ある分野を深く楽しく学んでみてはいかがでしょうか。

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