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日本語学習サイト「つながるひろがる にほんごでのくらし」を活用しよう

皆さんは、2020年に文化庁が「生活者としての外国人」のための日本語教室空白地域解消推進事業の一環として開発した、日本語学習サイト 「つながるひろがる にほんごでのくらし」をご存じですか? ICTを活用し、日本のどこに住んでいても独学で学べる日本語学習教材ですが、地域の日本語教室などで日本語ボランティアの方が活用することもできます。その中身をご紹介します。(編集部)

日本語学習サイト「つながるひろがる にほんごでのくらし」

https://tsunagarujp.bunka.go.jp/

教材開発の背景は空白地域の解消

日本には2020年6月現在、約288万人の外国人が住んでいます。そのような外国人が日本語を学ぶ場として、日本語ボランティア教室が全国各地にありますが、当然のことながら外国人が住んでいる全ての町や村に日本語教室があるわけではありません。そのような日本語教室がない市区町村(日本語教室空白地域)には約45万人の外国人が生活していると言われています。文化庁はこのような日本語教室空白地域を解消するために、地域日本語教育スタートアッププログラムを通して、地方公共団体等に対して日本語教育に関する専門家を派遣するとともに、今回ご紹介する「生活者としての外国人」のための日本語をICTを活用し独学できる学習コンテンツの開発およびその提供を行っています。

居住地に関わらず、外国人が等しく日本語を学ぶ機会を享受できるということは非常に大切なことだと思います。その場合に必要な日本語は、進学やビジネスといった特定の目的ではなく、日常生活で必要なこと――電車に乗ったり、道を聞いたり、病院や役所へ行ったり、あるいは地震や台風の時に落ち着いて対応できるための日本語です。そのような日本語を、スマホやパソコンで、多言語で、動画で、しかも無料で誰でも学習できるのが「つながるひろがる にほんごでのくらし」です。

概要

〇内容:日本語を初めて学ぶ外国人を想定し、身近な生活の場面で使用する日本語の学習が可能となるよう、動画中心の日本語学習教材として設計

○対象:日本国内に在住する外国人等

○公開日:2020年6月1日

○提供言語:6言語――英語、中国語(簡体字)、ポルトガル語、スペイン語、ベトナム語、日本語 
※2020年度中を目途に4言語(インドネシア語、フィリピン語(タガログ語)、ネパール語、カンボジア語)を追加

○その他:無料登録不要。パソコンの他、スマートフォン表示にも対応。

レベル別の充実した動画コンテンツ

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「つながるひろがる にほんごでのくらし」は全18シーン、54の場面で日本語学習ができるようになっています。それらは3つの日本語レベルに分けられています。

レベル1:

よくある生活の場面で必要となる、日本語での日常的な表現や基本的な言い回しを学ぶことができます。(電車に乗る、道を聞くなど)

レベル2:

生活の中で知っておくとよい知識や制度、より便利に暮らすための日本語の表現や言い回しを学び、目的を達成することができます。(病院へ行く、役所へ行くなど)

レベル3:

生活の中であまり遭遇しない場面での、目的を達成するために効果的な日本語の表現や言い回しを学び、やりとりをすることができます。(防災について、引っ越しをするなど)

もし私たちが、その国で使われている言葉を十分に理解できていない状態で、何かの事情でその国に住むことになった場合、非常に不安になると思います。電車に乗るのは何とかできそうですが、体調が悪くなって病院へ行ったり、役所に手続きに行ったりするのは、かなり精神的負担が重いです。ましてや地震や台風はあまり一般的ではないような国から来日したとしたら……。そんな時に、必要な語彙や表現を事前にこのサイトで確認できたら、あるいは動画を見て事前練習ができたら、かなり気持ちは楽になるでしょう。「つながるひろがる にほんごでのくらし」で扱われているシーン・場面は、2018年度に行われた事前の調査研究*1をもとに構成されていますので、日常生活に必要で、かつ外国人が困る場面が選ばれています。

また、「つながるひろがる にほんごでのくらし」では、単に動画を見て自己学習するだけではなく、学習したことを家族や友達、周りの日本人などに使ってみて日本語を身に付けていくことを推奨しています。言葉を学ぶだけではなく、それを通して周りとコミュニケーションが取れて、地域社会で人間関係が作れていくのは理想的だと思います。

動画以外にも、以下のような日本語の基本的な特徴についての理解を深めるためのコンテンツも揃っています。初めて日本語を学ぶ人には、まずこれを見てもらうといいでしょう。

日本語の「おと」:
日本語には特徴的な音のルールがあります。日本語で会話をするときや、日本語で書かれたものを読むときに注意するとよいことをまとめてあります。(音の数、拍、特殊拍など)

日本語の「もじ」:
日本語は文字の種類が多い言語です。その種類について、それぞれの文字の特徴についてまとめてあります。(平仮名、カタカナ、漢字、書き方など)

日本語の「かたち」:
日本語の基本的な構造(かたち)やルールについてまとめてあります。(品詞、文の構成、普通体と丁寧体など)

日本語ボランティア・日本語教師の活用法

日本語ボランティアや日本語教師の皆さんにとっても「つながるひろがる にほんごでのくらし」はいろいろと活用しやすいコンテンツです。「つながるひろがる にほんごでのくらし」に掲載されている動画や表現・言葉のリスト等は、特に断りなく自由に日本語教室などで使用することができますので安心です。

日常生活で必要な日本語使用場面を教室で取り上げる場合は、動画でシーンや場面を見せる、語彙や表現を確認する(多言語訳あり)、実際のやりとりをロールプレイで練習してみるなど、いろいろな活用法が考えられます。また、日本語の音や文字、基本文法などについては、動画を流して皆で一緒に見ながら、適宜解説を加えたり、質問に答えたりするような形で授業を進めていくことも可能です。もちろん、「つながるひろがる にほんごでのくらし」だけで全て完結させる必要はなく、例えば学習者の目的に応じて必要な他の教材を組み合わせたり、必要な語彙を追加したりしていくといいでしょう。

知り合いの外国人に「つながるひろがる にほんごでのくらし」の存在を教えてあげるだけでも、外国人にとっては貴重な情報になると思います。各シーンでは、「役に立つ情報」として関連情報や教材のサイトのURLを紹介しています。外国人にとっても日本人にとっても、「つながるひろがる にほんごでのくらし」の中だけで完結してしまうのではなく、日本社会のさまざまな情報とつながり広がっていくことで、地域での生活がより充実していくことが望ましいのではないしょうか。

これからの展開

「つながるひろがる にほんごでのくらし」は2020年6月に公開されましたが、その後11月にサイト活用促進パンフレット、使い方ガイドブック、広報用動画などの広報ツールが公開され、一般向けに活用説明会が行われました。広報ツールは以下の文化庁のサイトからダウンロードできます。

https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/ICT_kaihatsuteikyo/index.html

また、2020年度中にインドネシア語、フィリピン(タガログ)語、ネパール語、カンボジア(クメール)語が追加され、2021年度中にはタイ語、ミャンマー語、モンゴル語、韓国・朝鮮語の4言語が追加される予定です。これで提供言語は実に合計14言語と大変充実したものになります。さらにレベル1を中心に動画コンテンツも今後拡充の予定です。

*1:ICTを活用した「生活者としての外国人」のための日本語学習コンテンツの開発・提供に関する調査研究(平成30年度実施

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