検索関連結果

全ての検索結果 (0)
やさしい日本語で伝えるコロナ対策

これから全国的に寒い冬を迎えます。気温の低下、空気の乾燥、あるいは寒さに伴う人間の免疫力の低下などに伴い、新型コロナ対策はこれまで以上に大切になってきます。そしてこの対策は、当然のことながら国籍や言語に関わらず重要であり、日本人と同様に外国人向けにも十分な情報発信をしていく必要があります。そんな中で東京都が、やさしい日本語でコロナ対策を伝えるチラシとポスターを作成しました。チラシとポスターは東京都のホームページから誰でも自由にダウンロードできるようになっています。(編集部)

チラシやポスターは以下からダウンロードできます。
https://tokyo-tsunagari.or.jp/news/?itemid=6&dispmid=415

ここではやさしい日本語に言い換えられたチラシを見ながら、どのように言い換えると分かりやすくなるか考えたり、元の文と言い換え文を比較してみましょう。9つのコロナ対策はどのように表現されているでしょうか。なお、実際のチラシやポスターの漢字には、すべて振り仮名が振られています。

漢語や難しい言葉を避ける

【原文】1、こまめに手洗いする

一見それほど難しい言葉がないようにも見えるかもしれませんが、「こまめに」というのがちょっと難しくて、抽象的かもしれません。それから「手洗い」というのも、このような複合語になってしまうと難しく感じるかもしれません。どのように言い換えたら易しくなるでしょうか。東京都はこのように言い換えていました。

→1日に何回も手を洗います

【原文】2、タオルや歯みがきのコップなどは共有しない

一般的に「共有」のような漢語は避けたほうがいいと言われています。ではそれをどう言い換えたらいいかを考えてみましょう。共有とは「みんなで一つのものを使う」といった意味なので、「みんなで一つのタオルやコップを使わない」でもいいのかもしれませんが、これを否定形ではなく肯定形で言ったほうがすっきりします。

→タオルや歯みがきのコップなどは自分のものを使います。

【原文】3、大皿料理は避け、一人分ずつ盛り付ける

これはどうでしょうか。「大皿料理」「避ける」「一人分」「盛り付ける」など、難しい言葉、漢語が並んでいますね。必ずしも難しい言葉を一つひとつ易しい言葉に言い換えるだけではなく、全体として伝えたいことを分かりやすく伝えるという観点も大切です。東京都のチラシはこのようになっていました。

→みんなで1つのお皿は使わないでください。自分の食べ物は自分のお皿だけ使います

言い換えられない言葉はそのまま使う

【原文】4、ドアノブや電気のスイッチなどはこまめに消毒する

外来語(カタカナ語)はできるだけ使わないのが原則ですが、その言葉以外にそれを表す適切な日本語がない場合は、その言葉をそのまま使います。「ドアノブ」「電気」などは別の言葉に言い換えようとすると、かえって難しくなりそうですね。ここでは「消毒」を分かりやすく言い換えていました。

→ドアノブや電気のスイッチなどはいつもきれいにします

【原文】5、定期的に換気する

これは日本語のあいまいさが、やさしい日本語によって分かりやすくなる好例だと思います。「定期的に」というのは、どのぐらいの頻度で空気を入れ替えればいいのか分かりません。人によっては1時間に一度と思うかもしれませんし、30分に一度と思うかもしれません。やさしい日本語にすることで、そんなことも解決できます。

→1時間に2回くらい窓を開けます

【原文】6、目、口、鼻などウイルスが入る部位をできるだけ触れないようにする

目、口、鼻は身体部位を表す基本的な単語ですし、別の言葉で言い換えようがないので、そのまま使います。「ウイルス」「部位」などは難しいですね。東京都のチラシはこのようになっていました。

→目、口、鼻などをできるだけ触りません

体言止めは避けて言い切る

【原文】7、会話をする時は家でもマスク

母語話者であれば「マスク」で終わっていても、「マスク(をする)」と自然に言葉を補って理解しますが、ちゃんと最後まで言い切ることで分かりやすくなります。東京都はこのように言い換えていました。

→家の中で話すときもマスクをします

【原文】8、対面では長時間話さない

これも「長時間話さない」を「長い時間話さない」とするだけではなく、否定形を肯定形にしたほうが伝わりやすくなると思います。「長い時間」「話さない」は、つまり「短い時間」「話す」ですね。

→人と会って話すとき短い時間にします

【原文】9、外出時は、虹のステッカーのお店で!

これも「お店で!」と言われても、外国人は「お店で何をするんだろう?」と思ってしまうかもしれませんので、「お店を使います」と言い切ります。ちなみに「虹のステッカー」とは、お店に貼ることができる東京都の感染防止徹底ステッカーのことですので、他道府県で使う場合は各道府県独自のものがあれば、それに差し替えるのがいいでしょう。

→お店は「虹のステッカー」がある店を使います

それでは皆さん、やさしい日本語のチラシやポスターも十分に活用して、周りの外国人と一緒に、健康に気を付けてこの冬を乗り切りましょう! 2021年はきっと明るい年になると思います。

関連記事


ベトナムにルーツを持つ子どもたちが気づかせてくれたこと―多様な言語・文化的背景を持つ子どもたちとともに学ぶ、これからの学校(2)

ベトナムにルーツを持つ子どもたちが気づかせてくれたこと―多様な言語・文化的背景を持つ子どもたちとともに学ぶ、これからの学校(2)

日本語も日本文化もわからないまま、家庭の事情等で来日し、日本の学校に通う子どもたち。その学習にはさまざまな支援が必要です。子どもたちの気持ちに寄り添い、試行錯誤を続ける近藤美佳さんの記事、後編です。


ベトナムにルーツを持つ子どもたちが気づかせてくれたこと―多様な言語・文化的背景を持つ子どもたちとともに学ぶ、これからの学校(1)

ベトナムにルーツを持つ子どもたちが気づかせてくれたこと―多様な言語・文化的背景を持つ子どもたちとともに学ぶ、これからの学校(1)
国内の小中学校では外国籍、外国にルーツを持つ子どもたちが増え続けています。子どもたちへの日本語教育の重要性がようやく注目され、母語・母文化継承についても少しずつ認識されるようになってきました。

木村宗男と平和のための日本語教育

木村宗男と平和のための日本語教育
2024年4月より日本語教育機関認定法が施行され国家資格「登録日本語教員」制度が開始されます。戦後の日本語教育の歩みの中でも大きな転換点をむかえ、とりわけ、日本語教員養成は新たなフェーズに入ったと言えるでしょう。一方で、現代の地球社会には、環境や災害、紛争、感染症など、多くの危機的な問題が横たわっていて、日本語教育や日本語教師に求められる役割を広い視野で考えることも求められています。今回は、戦中・戦後に日本語教育に従事し、日本語教育学会の設立や教員養成に寄与した木村宗男に着目し、その活動と志向された平和のための日本語教育をご紹介します。