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日本語教師になろう!―ベールに包まれた日本語学校での生活とは

今、注目の仕事、日本語教師。養成講座を終えたり、日本語教育能力検定試験に合格したのち、日本語学校で教えることになったら、どんな生活が待っているのでしょうか。日本語教師の「たまご先生」(現在養成講座、通信講座で勉強中の方や、教え始めて間もない方)のために、今回はベールに包まれた日本語学校の世界をご紹介します。(仲山 淳子)

日本語学校ってどんなところ?

日本語学校の1年は、日本の他の学校と同じように4月に始まり、3月に終わります。ただし留学生の新入生が入ってくるのは4月と10月です。ですので新しいクラスが始まるのはこの2回、教師の採用も4月、10月が一般的です。この時期以外に求人募集が出ている学校は、何らかの理由で教師が足りなくなったと考えていいでしょう。

学校では通常レベル別にクラスが編成されます。例えば初級、初中級、中級、上級など。このほかにビジネス日本語のクラスやサマーコースなど短期ビザの学生のクラスを持っている学校もあります。留学生の場合は1年、または1年半や2年間、日本語学校で日本語を学びます。

ちなみにまったく日本語を勉強したことのない学習者のことを「ゼロ初級」と言いますが、日本語学校の初級クラスには基本的には「ゼロ初級」はいないことになっています。なぜなら日本語学校入学の条件が日本語能力試験のN5以上または、国内で150時間以上日本語を学習していることとなっているからです(しかしながら実際にはゼロ初級では? と思える場合もありますね)。

日本語学校で教えることになった場合、上記のような留学生のクラスで教えることになるでしょう。未経験であれば、まずは非常勤講師として勤務するのが一般的です。たいていの日本語学校は週5日間、午前または午後に4時限の授業があります。一クラスの学生数は少ない場合で10人程度、多くても20人です。一つのクラスを一人の教師が受け持つことは少なく、2人や3人など複数で担当します。そのうちの一人が担任となり授業スケジュールを決めたり評価をしたりという役割を担います(手当が出ることもあります)。同じレベルのクラスが複数ある場合は、担任教師の上にさらにレベル全体のカリキュラムを決める主任がいたりします。学校全体の指導内容について責任を持つのが教務主任または主任教員と呼ばれる教師です。

新人教師は普通、いきなり担任になることはないので、とりあえず自分の授業のことに集中しましょう(逆に新人なのに担任を任されたり、授業コマ数をたくさん持つように言われたりする場合は教師不足が考えられ要注意です)。わからないことがあれば担任教師や主任教師に聞くといいと思います。なので、その学校が質問しやすい雰囲気かどうかはとても大切です(実は私が新人だった30年ほど前、教えていた学校の教員室は結構緊張感あふれる空間で、先輩の先生に気軽に質問などはできなかったのですが、先輩たちが話していることすべてが勉強になり、必死で耳をダンボにして聞いていました)。

日本語学校でも学べる?

教師になったばかりのときは、自分の授業に自信が持てず不安なものですが、学校によっては新人教師を指導する体制が整っているところもあります。職場となる学校を選ぶ際のポイントにしてもいいですね。教えながら指導が受けられるというのが日本語学校で教えることの最大のメリットかもしれません。フリーランスではそのようなことは考えられませんから。ただ、外国語教育のメソッドは日々進化しています。日本語教育も例外ではありません。そして教育へのICT導入は、もはや避けられない波だと思います。「新人指導」と言って、教師の個性を認めず画一的な指導法の枠にはめようとする学校は、私個人は好きになれません。学校全体で新しいことにチャレンジしながら、先輩も後輩も共に学び合う、そんな姿勢を持っている日本語学校をぜひ見つけてくださいね。

専任か非常勤か、それが問題だ

日本語学校で教える日本語教師には、時間講師と言われる非常勤講師と授業以外の時間も学校にいて教務作業やカリキュラム作りなどを行う専任講師がいます。

日本語学校で教え続けたい、将来はコースデザインや教材選定にも関わるような主任教師になりたいと考えるなら、ぜひ専任教師を目指してください。ある程度の事務能力やITリテラシーは必要になりますが、これは今どきのどんな仕事でも同じですね。専任教師は会社で言うと正社員と同じなので、月給制、各種保険にも加入します(非常勤講師でも勤務する時間次第で加入できる場合もあります)。

非常勤で働く場合はどうでしょうか。まずはデメリットから説明したいと思います。これは何と言っても収入の不安定さです。非常勤講師の収入は教えた授業に対するもののみです。時給2000円で週に4時限授業を5回担当しているとすれば8000円5回で週に40,000円。1か月では160,000円です。しかしこれは毎週授業があった場合のこと。日本語学校では4月と10月の2学期制であったり、3か月ごとの4学期制であったりする場合が多いのですが、その都度学期間に休みがあります。さらに夏休み、ゴールデンウィーク、お正月休みなど。休みの間は授業がないので当然収入もありません。その点を頭に入れ、学校の掛け持ち、プライベートレッスン、オンラインレッスン、または副業など対策を立てておく必要があります。

では非常勤講師にはメリットはないのでしょうか? 非常勤の場合は専任講師と違って、事務的な作業少ないので、教えることに集中できます。また収入がなくて辛い長期休暇ですが、自由な時間があると考えれば、見聞を広めるために旅行に出たり、ステップアップのために勉強したりという時間も取れます。子育てや介護があるのでフルタイムで働くのは無理という方にも非常勤での働き方は適していると思います。

どんな新人教師にもプラスポイントはある

日本語学校で教え始めると、授業準備に追われて疲れ果て、ベテランの先生方の授業と自分を比較し、落ち込んでしまうこともあるかもしれません。私もそうでした。でも、あなたにはあなたのプラスポイントが必ずあるはずです。私は長い間、新人教師の指導をしてきたので、新人の先生の授業をたくさん見せてもらいましたが、「お、このアイデアいいな、もらっちゃおう」と思ったことが度々ありました(もちろん失敗授業もたくさん見ましたが)。ITが得意とか、活動のアイデアが豊富とか、アニメに詳しいとか、それだけでなく若いというだけでもポイント1(学生と年齢が近くて学生の感覚がわかるので)、反対に年配の新人でもポイント1です(人生経験が授業に活かせるので)。そんな自分の強みを早く見つけて、あなたにしかできない唯一無二の授業を作っていってくださいね。応援しています!

執筆/仲山淳子

日本語教師歴30年のフリーランス日本語教師。非常勤講師として長きにわたり留学生への日本語指導や日本語教師養成講座に携わったのち、フリーランスに転身。現在は企業研修やプライベートでの日本語指導だけでなく、日本語ボランティア教師養成講座の講師、e-ラーニング教材の開発等、多方面で活躍中。最近は作成したオリジナル教材を用いてオンラインレッスンにも挑戦している。

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