検索関連結果

全ての検索結果 (0)
オーストラリア人高校生が体験した、日本での高校生活と日本文化

2019年6月に渡豪し、8年生から12年生(中学2年生から高校3年生)の日本語クラスを担当する黒沢 毅先生。日本では公立高校の英語教員をされていたので、英語で日本語を教えることの難しさを痛感されつつ、日々喜びと充実感も味わっておられます。そんな黒沢先生が、昨年の12月中旬に11年生と10年生3人を引率し日本へ。今回はその滞在についてです。

受け入れる側としておもてなし

以前にも書きましたが、昨年3月まで勤務していた埼玉県の公立高校と現任校は姉妹校提携を結んでおり、毎年7月下旬から2週間弱の研修プログラムを本校で受け入れています。20人の日本人高校生が本校で日本語を履修している生徒宅へホームステイしながら登校し、バディとともに一般の授業にも参加します。これまで日本から引率教員の一人として参加していましたが、昨年7月には、同プログラムをオーストラリアで受け入れる側としてお手伝いさせてもらいました。

一方で、本校からは隔年でのJapan Tripプログラムがあります。これは姉妹校を訪れて日本での学校生活、そしてホームステイをしながら日本の家庭生活を体験するだけでなく、東京をはじめ、京都、大阪、岐阜など、日本各地を訪れる中で広く日本文化に触れ、授業で学んだことを実際に体験してみるということに重きを置いているプログラムです。

今年は実施する年にあたり、12月に実施を予定するプログラムには既に非常に多くの生徒が参加への意欲を示してくれています。12月上旬に最終4学期を終え、1月下旬に新学期を迎えるオーストラリアでは、夏休みのこの時期に日本旅行を企画する学校が一般的のようです。

日本の高校生活を体験し、文化にもふれた10日間

黒沢先生7回目画像2

さて、今回の日本滞在はそれとは異なり、姉妹校と県内の私学中高一貫校の協力を得て、オーストラリアの4学期末(12月上旬)の10日間、やはりバディの家庭にホームステイをしながら通常の学校生活を体験するといったものでした。参加したのは、昨年度のJapan Tripに参加したことのある11年生2名と初めて日本を訪れた10年生1名。彼女たちは授業でも意欲的に学習し、家庭でも日本のアニメやゲーム、J-popから日本語を学んでいるという生徒たちでした。そんな生徒たちとは事前学習を重ね、その中で「To Do List」も提出してもらいました。中には「授業で覚えた日本語の歌をカラオケで歌う」「学校で掃除をする」「日本料理をたくさん食べる」「日本人の高校生とたくさん友達になる」「着物を着る」といったものがありました。

滞在中、お世話になっている生徒たちを見学に各校へ伺うと、やはり日本語だけの慣れない授業に緊張しつつも温かく迎えて下さるバディやクラスメート、そして各校の先生方のおもてなしに一生懸命応えようとしている様子がうかがえ、安心することができました。電車での登下校、教室で友達と食べるお弁当、ホームルーム後のそうじ、放課後みんなで参加する部活動など、日本では当たり前の学校生活のワンシーンが、彼女たちにとってはとても新鮮で興味深い体験だったようです。また、成田空港へ向かうシャトルバスに乗る前には、バディやホストファミリーとハグをしながら涙を流すシーンも見られ、改めて今回のプログラムを実施してよかったと感じることができました。

帰りの飛行機の中では、クラスメートからもらったお土産を見せてくれたり、今回の滞在中の思い出を楽しそうに話してくれたりしました。改めて、日本語の学習を頑張りたいと、3人とも強く決意したことはもちろん、日本で過ごした1週間を通して出会ったホストファミリーやクラスメートの皆さんの心温まるおもてなしに心から感謝し、ひとまわりもふた回りも大きく成長した彼女たちは、これまでと比べてとても逞しく見えました。

黒沢 毅(くろさわ・たけし)

黒沢 毅(くろさわ・たけし)

神田外語大学外国語学部英米語学科卒業後、米国ミズーリ州カンザスシティ・グランドビュー高校にて日本語教師として勤務。帰国後複数の高校に勤務。埼玉県の公立高校で英語教師をしているときに姉妹校でもあるオーストラリアのシャロームカレッジに20名の生徒を6回引率。その縁から、日本の高校教師を辞め、2019年から日本語教師としてシャロームカレッジで勤務している。

関連記事


日本語教師プロファイル吉田知恵さん―日本語教育に演劇や歌を取り入れた活動を続けていきたい

日本語教師プロファイル吉田知恵さん―日本語教育に演劇や歌を取り入れた活動を続けていきたい
今回の「日本語教師プロファイル」ではJICAでの活動を終え、派遣先のインドから帰られたばかりの吉田知恵さんにお話を伺いました。吉田さんは元々演劇を学び、役者として活動、ミュージックスクールのインストラクターも務めていたという異色の経歴をお持ちの日本語教師です。サモア、インドネシア、ラオス、モロッコ、エジプト、そして今回のインドと各地に滞在した経験を活き活きと語ってくださいました。

2024年9月・10月 日本語教師のためのセミナー情報

2024年9月・10月 日本語教師のためのセミナー情報
8月は地震が来たり、台風が来たりとなかなかしんどい状況が続いていますね。これを機に災害時の対応を授業に組み込んだりしている教師や学校も多いようです。学習者が日本でできるだけ安心して暮らせるように、日ごろから情報収集できるページなども伝えておきたいですね。2024年9月・10月のセミナー情報をお伝えします。

読むことをきっかけに、やりとりを深めてほしい―『「読む」から始める日本語会話ワークブック』著者インタビュー

読むことをきっかけに、やりとりを深めてほしい―『「読む」から始める日本語会話ワークブック』著者インタビュー
5月に発売した『「読む」から始める日本語会話ワークブック』。会話授業で使っていただける、テーマについて多角的な短いストーリーを三つ読んだ後で自分の考えを話したり、人と話をしたりするテキストです。今回はこのテキストの著者のお一人である吉川達さんに、テキストを作ったきっかけや作成過程などをお聞きしました。

日本語教師プロファイル岡宮美樹さん―「日本語」にこだわりすぎない日本語教師でいたい

日本語教師プロファイル岡宮美樹さん―「日本語」にこだわりすぎない日本語教師でいたい
今回「日本語教師プロファイル」でご紹介するのは長野県にお住いの岡宮美樹さんです。岡宮さんは長野工業高等専門学校の留学生に教えながら、長野県地域日本語教育コーディネーターや「にほんごプラス」の主催者としてもご活躍です。最近、草鞋を履き過ぎて忙しいとおっしゃる岡宮さんにこれまでのキャリアやこれからやりたいことについて伺いました。

日本語教師プロファイル北琢磨さんー人との関りを大切に、言語の楽しさを知って

日本語教師プロファイル北琢磨さんー人との関りを大切に、言語の楽しさを知って
今回の日本語教師プロファイルでは、東京両国にある「東京明生日本語学院」の学院長であり、日本語教師養成講座1 も担当されている北琢磨さんにインタビューさせていただきました。北さんと言えばX(旧Twitter)やYouTubeでご存じの方もいらっしゃるかと思います。日本語教育、とくに日本語学校をとりまく状況が大きく変わる2024年、日本語学校の当事者としてどのように考え、進めていらっしゃるのか興味深くお話を伺いました。