検索関連結果

全ての検索結果 (0)
月末には学校で飲み会?教師としての働きやすさ

勤務するオーストラリアのシャロームカレッジには、日本で行なっていたことを私の代わりに専門にやってくれるエキスパートがいます。その存在や勤務時間のおかげで、日本にいた時よりも、教師としての本来の本務である「教えること」により専念できる環境になっています。教師としてより働きやすいと感じる、その他の違いについて書きたいと思います。(日本語教師・黒沢毅)

小規模クラスで効果的な指導

こちらでは10週間4学期制となっており、10週間のみ必修の8年生(26名)2クラス、選択で2学期間学習する9年生(18名)、通年の10年生(24名)、11年生(8名)、そして12年生(6名)の授業を担当しています。

3月までは、日本で40人のクラスを5クラス担当していましたので、生徒一人ひとりと関われる時間、そして採点や課題、添削などにかけられる時間、さらにはそれによって授業でできる内容も大きく変わってきます。特に、11年生と12年生では、毎回の授業が10人以下で1コマ70分間ということもあり、生徒たちがゆっくり考えて理解する時間や作業する時間を十分確保しつつ、生徒同士、そして一人ひとりの生徒と僕のインタラクティブな活動の時間を確保することもできています。

これは圧倒的に小さいクラスサイズが成せる技であって、もちろん、日本の公立高校ではこうした指導は容易ではありませんでした。

40人で一斉に、はオーストラリアではあり得ない

実は、日本で長年英語を教えていたことを英語担当の同僚に伝え、オーストラリアでの一般的な指導、そして日本での英語教育事情についても意見交換をしたことがあります。すると、「1クラス40人を、しかも5クラスも担当しながらどうやって教えていたんだ!?」と驚かれてしまいました。

僕自身も答えが見つからず、様々な英語教育セミナーやICTセミナーなどに参加し、生徒が40人いてもより効果的に指導するために試行錯誤する毎日でしたが、今では、そもそも40人の一斉指導を止めるだけで、一定の教育効果を得られるような気がしてなりません。ICTやアクティブラーニング、入試改革も大事ですが、まずはクラスのダウンサイジングを優先してほしいなあ…と言うのが本音です。もちろん、それによってできた余剰時間で一人ひとりの生徒とより深く関わる時間を持てたり、生徒たちが英語を使って活動できる時間を確保したりするためです。さらに、ひとクラスの生徒数が減少することで教員の負担も大きく減ることは言うまでもありません。ただ、結局は教育にお金を使わない日本の政治によって、生徒たちの学びや先生たちの働き方など、未来を創る子供達への投資が優先されないのは本当に残念で仕方ありません。

そして他の同僚からも、「日本の1クラス40人の一斉授業で英語の授業を進めていると、生徒たちの英語力はどのくらい伸びるんだ?」「1クラスのサイズを半分にはできないのか?クイズやテストの採点が永遠に終わらないんじゃないか?」という鋭い質問も受けました。正直に答えると、みんなビックリしていました。「そんなことをやらされたらオーストラリアの教師はストライキおこすかもね〜。」と言っていた中堅の先生もいたほどです。

ハッピーフライデー

最後に、本校には毎月の最終金曜日の放課後に、任意で職員用のカフェテリアに集まり、冷蔵庫いっぱいに用意されたワインやビール、そしてもちろんソフトドリンクを飲みながら談笑してから帰宅するという、日本では考えられないユニークなイベントがあります。もちろん校長も参加していました。「日本の学校でハッピーフライデーやったらみんな免職だよ。」と同僚に伝えたら、「ここは日本じゃないし、オーストラリアでは一定量までならアルコールを飲んでも運転できるんだ。それも法律で認められている。」と教えてくれました。

最初は、学校の教員が職場でこのように1ヶ月間の労をねぎらい、週末を迎える前にお酒を飲んで冗談を言い合っているこの光景は何とも不思議でしたが、今ではもちろん僕自身もこの会になるべく参加し、これまであまり接点のなかった同僚とも親交を深めるようにしています。

黒沢 毅(くろさわ・たけし)

黒沢 毅(くろさわ・たけし)

神田外語大学外国語学部英米語学科卒業後、米国ミズーリ州カンザスシティ・グランドビュー高校にて日本語教師として勤務。帰国後複数の高校に勤務。埼玉県の公立高校で英語教師をしているときに姉妹校でもあるオーストラリアのシャロームカレッジに20名の生徒を6回引率。その縁から、日本の高校教師を辞め、2019年から日本語教師としてシャロームカレッジで勤務している。

関連記事


今後の日本語教育を見据えたカリキュラムのつくり方②ーコースフレームワークとモジュールボックス

今後の日本語教育を見据えたカリキュラムのつくり方②ーコースフレームワークとモジュールボックス
カリキュラムを一から構想するとき、具体的にどこから手をつければいいでしょうか。カリキュラム編成の考え方はわかったけれども、作業手順がわからない、ということもあるでしょう。そういう場合にぴったりの方法が「令和45年度 文化庁委託「日本語教育の参照枠」を活用した教育モデル開発事業【留学分野】」で日本語教育振興協会チームによって開発された「コースフレームワーク」と「モジュールボックス」というツールを利用する方法です。具体的な使い方を見ていきましょう。(竹田悦子・内田さつき/コミュニカ学院)

今後の日本語教育を見据えたカリキュラムのつくり方①-「日本語教育の参照枠」を手がかりに

今後の日本語教育を見据えたカリキュラムのつくり方①-「日本語教育の参照枠」を手がかりに</strong>
現在、認定日本語教育機関の申請を控え、「日本語教育の参照枠」に沿ったカリキュラム編成と言われても、どこからどう手をつければよいのか不安に感じていらっしゃる先生方も多いのではないでしょうか。教務主任や専任教員としての経験はあっても、これまで、前任者から受け継いだカリキュラムを、若干の手直しだけでほぼ踏襲してきたという場合や、新規校の主任を引き受けることになった場合など、自分で一から新たなカリキュラムを立てた経験がなく、途方に暮れている方もあるかもしれません。そんな先生方の心が少しでも軽くなるように、どこから始めればいいのか手がかりがつかめるように、いくつかの点から考えてみたいと思います。  (竹田悦子・内田さつき/コミュニカ学院)

日本語教師プロファイル田中くみさんー自分の強みを活かして自分に合った働き方を

日本語教師プロファイル田中くみさんー自分の強みを活かして自分に合った働き方を
今回「日本語教師プロファイル」でインタビューさせていただいた田中くみさんは、Language Plus Oneの代表として、日本語教育のみならず、キャリア教育や外国人への就職支援にも取り組んでいます。最近では学習アドバイザーの資格も取られたそうです。これからの働き方として、特定の組織に属さないフリーランスを考えている方に参考になるのではないでしょうか。

ベトナムにルーツを持つ子どもたちが気づかせてくれたこと―多様な言語・文化的背景を持つ子どもたちとともに学ぶ、これからの学校(2)

ベトナムにルーツを持つ子どもたちが気づかせてくれたこと―多様な言語・文化的背景を持つ子どもたちとともに学ぶ、これからの学校(2)

日本語も日本文化もわからないまま、家庭の事情等で来日し、日本の学校に通う子どもたち。その学習にはさまざまな支援が必要です。子どもたちの気持ちに寄り添い、試行錯誤を続ける近藤美佳さんの記事、後編です。


新装開店! 凡人社書店にお邪魔しました

新装開店! 凡人社書店にお邪魔しました
日本語教育の専門書店である、日本語の凡人社。東京千代田区麹町と大阪に店舗があります。ちなみに麹町店はこれまで月・水・金の12時から18時まで開店していましたが、10月1日から平日の月・火・水・木・金の営業となりました(土・日・祝休み)。また、大阪店はリニューアルオープンのため当面の間、休業とのことです。今回は改装した凡人社麹町書店に伺って、お話を聞いてきました。