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日本とは違うオーストラリアの部活の概念

部活動についても、日本とオーストラリアではそのシステムや考え方が全く違っています。オーストラリアの高校での部活動についてご紹介します。

経験者でなくても指導者になる日本の部活動

日本の部活動については、まだまだ改善の余地がたくさんあるところですが、僕自身、部活動をなくしたほうがいいとは全く思っていません。ただ、現行システムに大きな問題があり、自分も含めて多くの先生や生徒たちがそのせいで苦しんでいると感じていました。

僕は中学校で野球、高校入学してすぐに野球部を挫折&無念の退部、そして大学と社会人でアメフトをやってきましたので、体育会系の人間です。そのため教員になってから任されたのは、野球部、柔道部、サッカー部、女子ソフトボール部、ハンドボール部、そしてダンス部でした。もちろん未経験の種目がほとんどです。そのため、生徒たちにとって適切な指導はほとんどできませんでした。

いま思うと、各スポーツの専門家でもない僕が、なぜ生徒たちを長時間拘束し、時には理不尽な指導もし、そして自分自身も無償で長時間拘束されなくてはならなかったのだろうかと改めて考えます。「生徒のために」と常套句のように言っていましたが、全く生徒のためになっていないことがよくわかります。

特に、「若いから」「独身だから」という根拠のない理由だけで未経験の種目を担当させられる教員の多くにとっては部活動の負担がとても大きいのです。専門家で有る無しにかかわらず、生徒に対して罵声を浴びせたり、時には体罰を加えたりという顧問も少なからず見てきましたが、それって教師個人の資質の問題もありますが、やっぱりシステムの問題なんじゃないかと。

オーストラリアの教師には理解されない日本の部活

オーストラリアの教師となった今、こちらの学校ではそのようなことは皆無です。そもそも、生徒たちに罵声を浴びせたり、体罰を加えたりする顧問は顧問のポストに就けませんし、訴訟を起こされてしまうはずです。また、指導できない教職員が、そもそも顧問になることはよっぽどのことがない限りありません。

オーストラリアでは、顧問には顧問手当が支払われるので、指導力と責任が求められます。もう15年以上も前の話ですが、「体格がいいから」という理由で未経験の柔道部顧問を任されたことがあります。オーストラリアでは、危険を伴う柔道のような部活を素人顧問が任されることはまずありません。生徒たちを危険にさらしていることを学校が容認していることになるからです。

さらに、ごく僅かな休日手当や、出張旅費、そして何より平日の勤務時間が終わった後の部活指導を公立学校の先生たちは無償でやっています。先生たちの自己犠牲と善意の上に成り立っている部活動はそもそもあり得ないのです。

実は、11年生の授業でアルバイトの内容を指導していて、「ジキュウ ハ イクラデスカ?」と質問したら、「ニチヨウビ ハ $23 デス 」と言われ耳を疑ってしまいました。物価の違いも多少ありますが、それでも休日手当がついて、高校生でも時給は$23(およそ¥1600)ももらっているというのです。自分がもらっていた土日の部活手当と比較してため息が出ました。

そんな話をこれまで何人もの同僚に話してきましたが、その度に、「なぜ専門家でないのに顧問になれるんだ?」「きちんとした手当をもらってないのに、なぜ勤務時間が終わってから働くんだ?」、「契約にないことをなぜやらされるんだ?」「断れないのか?」と聞かれました。

その場では、残念ながらうまく彼らを納得させることができませんでした。やはり、日本の教員の働き方は彼らから見ると異質なのだと思います。僕もそう思います。

シーズン毎にチームが組織され、顧問には元プロ選手も

本校には、地域でも強豪校とされるラグビー部があります。他にもネットボール、ボート、陸上などの体育会系部活動と、演劇や吹奏楽、ジャズバンドもあります。この強いラグビー部でさえ、シーズンの1〜2ヶ月前にセレクションがあり、練習は週に数回(1日2時間程度)。

シーズン中は試合が週1回あり、地域の大きな大会を最後に、その年のシーズンが終わりチームは解散してしまうそうです。日本のように、休みは盆と正月のみ、引退するまで毎日、長時間拘束されて、部活が学業、家族との時間、友人との時間、そして自分の時間よりも優先されてしまうようなことはありません。

また、本校のラグビー部顧問は5〜6名の教員とコーチで組織されていますが、もちろん全員が経験者で、そのうちの一人は身長190m、体重が130kg(胸囲も150cmくらいありそうです)はあろうかとういう元プロ選手で、一流を経験している素晴らしいアスリートです。そんなスタッフに恵まれた環境でラグビーに専念できる生徒たちは、本当に楽しそうに、でも真摯にラグビーに取り組んでいました。

「教師」を改めて思う日々

このように、現在勤務するオーストラリアの教育システムを通して、日本での経験を振り返ると、たくさんの「???」と「モヤモヤ」が浮き彫りになってきます。もちろん日本とオーストラリア、それぞれの強みや弱みがありますので、一概にどちらが良い悪いというつもりはありません。

ただ、年度末になるたびに次年度の顧問の希望調査を元に管理職が調整に苦慮したり、門外漢の顧問が専門外の部活を嫌々任せられて困惑したりしているのをたくさん見てきましたので、何とかならないものかなあとずっと悩んでいました。

いま、オーストラリアで日本語教師をしながら、日本で18年間勤務してきた僕が追い求めてきた「教師としてのあるべき姿」や「求められる教師の役割」とは一体何だったのだろうかと、ときどき考えます。そして、「部活動のあり方が変わったら日本の先生たちはもっと楽に働けるのになあ。」、そして「生徒たちは、部活動はもちろんですが、そのほかにも自分の好きなこと、熱中できることに十分な時間を費やすことができたらいいのになあ」と強く実感しています。

黒沢 毅(くろさわ・たけし)

黒沢 毅(くろさわ・たけし)

神田外語大学外国語学部英米語学科卒業後、米国ミズーリ州カンザスシティ・グランドビュー高校にて日本語教師として勤務。帰国後複数の高校に勤務。埼玉県の公立高校で英語教師をしているときに姉妹校でもあるオーストラリアのシャロームカレッジに20名の生徒を6回引率。その縁から、日本の高校教師を辞め、2019年から日本語教師としてシャロームカレッジで勤務している。

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