検索関連結果

全ての検索結果 (0)
韓国の日本語学習者のことが気になる

皆さんが日本語を教えているクラスの中に韓国出身の方はいらっしゃいますか? 韓国の日本語学習者にとって、またその学習者に日本語を教えている日本語教師にとって、ここ数カ月の日韓関係は大変心配な状況になっていると思います。でも、情報は正しく伝わっているのか。誤解はないのか。日本の報道からは見えてこない韓国人の皆さんの生の声を取材しました。(地球人K)

日本に対する自粛ムードから関心は韓国内政治へ

国と国の友好関係や経済関係は、お互いの国を行き来したり、お互いの言葉を学んだりする人の増減に影響します。国際交流基金の2015年の海外日本語教育機関調査によれば、日本語教育機関数が世界で最も多い国は韓国でした。その数は実に2,862機関に及びます(ちなみに文化庁の調査では日本国内の日本語教育機関は2,290機関です)。韓国はまさに世界有数の日本語教育大国なのです。

7月以降、日韓関係がギクシャクしていることが韓国内の日本語学習者にも影響しています。特にこれから日本語を学ぼうという入門者がやや減っているようです。一方、これまで日本語を学んで来た中級・上級の人たちへの影響はあまりないようです。

ただ、これは一般の韓国人が、日本のことを嫌いになったとか、日本語学習を止めてしまったとかいうようなことではありません。どちらかというと、日本に親近感を持っているということを周りから批判されることを恐れて、日本に旅行したり、日本製品を購入したりといったことを、自粛したり控えたりしていると言ったほうが正しいでしょう。韓国では日本以上にネット上でそうした批判にさらされることがあります。社会の雰囲気が沈静化するのを待っている人が多いと思われます。

また、日本企業への就職の道が開けることも日本語を勉強することのモチベーションにつながっています。少し前までは、日本企業と就職を希望する韓国人を結びつける就職フェアも韓国内で頻繁に行われてきました。こういった就職支援活動も、政府から補助金が出ていることが多いので、随分とカットされています。ただ、政府と無関係の民間のリクルート活動は盛んです。働きたい韓国人と人手が欲しい日本企業にとっては、自然なことだと思います。

さて、8月ぐらいから韓国国内では新法相をめぐるニュースが増えました。人々の関心は専らそちらのほうに移ってきているように感じます。韓国国内では日本関連のニュースは相対的に減ってきています。韓国内の政治は韓国の国民が決めることですが、たとえどのような状況になったとしても、日本と韓国の交流が途絶えるようなことは決してないでしょう。日本と韓国の間には、国際結婚などで家族がいる人、ビジネスをしている人、留学している人、旅行する人、そしてお互いの文化が好きな人がとてもたくさんいるのですから。

日本に住む韓国人の皆さんから話を聞きました

①「就職先・旅行先として日本は魅力的です」~50代、男性、大学講師

韓国に行ったことがある人は分かると思いますが、韓国には名だたる日本企業がたくさん進出して、生活に密着しています。それらの日本製品の不買運動の様子が日本のテレビで繰り返し報道されますが、極端な例を取り上げ過ぎだと思います。不買運動が始まったとき、多くの韓国人も本音では「それほど長くは続かないのでは」と様子見なところもあったと思います。ところが、韓国でもとても知名度が高い日本企業の一つのユニクロが、そのことを口に出して言ってしまったんです。それで韓国の人たちが態度を硬化させてしまったところもあります。たとえ本心でそう思っていても相手からは言われたくはない、ということですね。

今の韓国国内は若者の失業率が高く、その一方、日本国内は人手不足です。日本企業への就職も選択肢に入れて日本語を学ぶ人もたくさんいます。特に若者は、冷静に考えて行動していると思います。周りが見ているところでは日本のことを大っぴらに言えなくても、自分の将来についてはきちんとリスクマネジメントしているんです。

日本を旅行する若者も多かったんです。韓国の若者が日本の奇麗な風景やかわいいデザインの商品をSNSにアップしているのをよく見かけましたが、最近は周りの目が気になってできない。それでも日本が好きで日本に来る人はいて、実際に来てみると日本人から優しくされて感動して帰国する人も多い。これは韓国に旅行に行って韓国人に優しくされた日本人も同様です。

日本人と仲良くしたいと思っている韓国人はたくさんいて、日本政府のやり方に反対しても、韓国に来る日本の人は温かく迎えなくてはと分別しています。日本と韓国は政治的にはしばらくは厳しい関係が続くかもしれませんが、もちろんそれが永遠に続くわけではない。そのためにも文化交流を途絶えさせないことが肝心です。ネットには心ない書き込みが散見されますが、そのような書き込みを無防備に見てしまい、大きく傷つく在日コリアンや日本語が分かる子供たちがたくさんいることを、日本の大人はよくよく心すべきだと思います。

②「メディアに踊らされずに冷静な対応をしましょう」~40代、女性、翻訳業

日韓関係と直接関係するかどうか分かりませんが、昨夏ぐらいからビザの更新などの際に日本の入管の対応が厳しくなったように感じています。加えて、東京・新大久保などでビジネスをしている人は今後のことが心配だとよく言っています。韓国人学校の警備も以前より厳重になりました。令和と言う新しい時代を迎え、日本ではナショナリズムが高まっているように感じます。これまでの歴史を見つめ直し、近隣諸国と新しい関係を結ぼうとしているようです。

韓国人の若者は基本的に日本のことが大好きです。私が若い頃は外国というとまず米国でしたが、今の若者にとっては日本です。日本製品は韓国社会の隅々まで入っており、普段何気なく使っていて、今回の件で初めて自分の使っていたものが日本製だと気づいた人も多いんです。

今、日本と韓国の関係がここまでこじれているのは、日本に裏切られたという思いが韓国人の中にあるからです。日本が好きで、日本製品を使っていて、日本に旅行もする若者にとって、どうして日本はこんなふうに韓国が困ることをするのだろうという戸惑いです。それが日本製品の不買運動にもつながっています。韓国から日本に来ている留学生は、日本語が分かるために日本のメディアに接する機会も多く、より複雑な感情を持っていると思います。

職業柄、韓国のメディアで日本語に翻訳されているもの、日本のメディアで韓国語に翻訳されているものの両方を見ますが、日韓関係の記事で意図的に過激に翻訳されているものを見かけます。これは注意しないと間違ったメッセージがお互いの国に流れてしまいます。韓国から日本に来ている留学生、韓国語を学んでいる日本人の皆さんは、原文と翻訳を照合してみるとよく分かると思います。

③「政治の関係が良くなくても私たちの友情は変わりません」~50代、女性、韓国語講師

今回、日韓が輸出管理について、お互いを「ホワイト国」のリストから除外するということがニュースになった時、私はそもそも「ホワイト国」の意味が分かりませんでした。お互いにお互いを優遇していたということを初めて知りましたが、それは私だけではなく、周りの韓国人も日本人も同様でした。日本と韓国はそれだけ信頼関係が厚かったという証拠です。

韓国での日本製品の不買運動のニュースがあまりにも騒がしいので、私は実際に韓国へ行って様子を見てきました。いくつかのコンビニを回りましたが、どこでも普通に日本のビールを売っていました。せっかくなので日本のビールを買いましたが、コンビニの店員からは何も言われませんでした。報道と実際は異なる部分があると思います。

私の周りには日本が好きで日本に住んでいる韓国人がたくさんいますし、韓国が好きで韓国語を学んでいる日本人もたくさんいます。そういう人たちは、口を揃えて「何も変わらない。これまでどおり仲良くやっていく」と言っています。騒いでいるのは一部の政治家とマスコミだけです。日本も韓国も一般の国民はもっと冷静で賢いのです。

韓国に住んでいる私の姪っ子は日本が大好きな中学生です。日本のゲームやアニメが好きで日本語の勉強を始めました。私がたまに韓国に帰ると日本語で話しかけてきます。今回の騒動があっても、彼女にとっては何も変わりありません。今日も彼女から日本語でSNSが来ています。

______________________________________________

いかがでしたでしょうか。

日韓関係が厳しい今だからこそ、交流を途絶えさせないことが重要です。これまで培ってきた友好の真価が問われる時です。日韓友好の第一歩として何をするか。今なら例えば、ラグビーワールドカップ2019の日本代表のスクラムの柱、具智元(グ・ジウォン)選手を応援してみるというのは、いかがでしょうか。自分より大きい相手チームの選手とぶつかり、ボール奪い合い、倒されてもすぐ立ち上がって走り出す姿を見ていると、前を向く勇気が湧いてきますよ。

関連記事


日本語教師プロファイル横山りえこさん日本語教育にユニバーサルデザインを

日本語教師プロファイル横山りえこさん日本語教育にユニバーサルデザインを
今回「日本語教師プロファイル」でご紹介するのは愛知県在住の横山りえこさんです。横山さんは現在、早稲田大学大学院日本語教育研究科の博士後期課程に籍を置きつつ、大学の非常勤講師、愛知・岐阜両県の地域日本語教育コーディネーター、支援教育専門士としてもご活躍中です。現在取り組んでいる研究に至るまでの歩みとその活動についてお話を伺いました。

「日本語教育機関認定法 よくある質問集(令和6年4月18日公開版)」を読む

「日本語教育機関認定法 よくある質問集(令和6年4月18日公開版)」を読む
「日本語教育機関認定法 よくある質問集」は、文化庁によって日本語教育の所管が行われていた時から改定が重ねられてきたものです。今回の改定版によりQA233にも及ぶ、大変充実した「質問集」になりました。この「質問集」の中から、新しく更新された情報を中心にピックアップしてみます。

日本語教師プロファイル京谷麻矢さん―言語マイノリティのサポートを目指して

日本語教師プロファイル京谷麻矢さん―言語マイノリティのサポートを目指して
今回の「日本語教師プロファイル」では京都府にお住いの京谷麻矢さんをご紹介します。京谷さんは現在、大学で留学生に日本語を教える傍ら、中途失聴や難聴の方のための要約筆記者の仕事、そして会話パートナーとして失語症者のサポートをされています。日本語教育での歩みとともに、要約筆記をするに至った経緯や、現在の活動、更には今後の展望までお話を伺いました。

登録日本語教員や日本語教員試験に関するご質問にお答えします 第2回:勉強法について

登録日本語教員や日本語教員試験に関するご質問にお答えします 第2回:勉強法について
 先日、編集部から「登録日本語教員や日本語教員試験に関する質問」を募集したところ、皆様から非常にたくさんのご質問が寄せられました。ここで皆様から寄せられたご質問について、これまで公表されている各種資料を基に、個人的な見解を可能な範囲でお答えしたいと思います。文化庁等には確認をしておりませんのでご注意ください。実際にはケースバイケースの可能性もあると思われますので、あくまで参考意見の一つとして聞いていただければと存じます。