「日本語教師の資格化」について編集部にたくさん質問が届いています。皆さんが気になるところだと思いますので、編集部ができるだけ分かりやすくお答えします。(地球人K)
Q:なぜ今、資格化なの?
日本語教師の資格化の話は最近よく耳にするようになりましたが、実はかなり前から議論の俎上には上がっています。2013年に報告された「日本語教育の推進に向けた基本的な考え方と論点の整理について(報告)」の中では、今後の日本語教育の推進に当たっての11の論点が示されましたが、この中の論点5でも取り上げられています。
http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/suishin_130218.pdf
その後、2016年に6月行われた文化庁の文化審議会国語分科会の第74回日本語教育小委員会で「日本語教育人材の養成・研修と資格の在り方について」が議事として上がっており、その後、日本語教育小委員会で検討が重ねられてきました。
http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/nihongo/
今後の外国人住民の増加により日本語教師の需要が見込まれることから、いよいよ日本語教師の資格化が具体化してくることになりました。
Q:資格化すると何が変わるの?
最近、日本語教師が足りないという声はよく聞くと思います。これにはいろいろな理由があると思いますが、分かりやすく言えば、外国人の増加に比べて日本語教師が少ない、日本語教師になろうとする人が少ないということがあります。
また、文化庁が毎年出している「国内の日本語教育の概要」や、日本語教育能力検定試験の受験者を見ると、日本語教師や教師のなり手の年齢が上がっていることが分かります。
http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/nihongokyoiku_jittai/h30/pdf/r1408679_01.pdf
では、なぜ日本語教師になろうという若い人が少ないのでしょうか。それは現在の日本語教師の社会的ステイタスや待遇面が十分ではないため、大学等で日本語教育の勉強をして日本語教師という仕事にやりがいを感じても、諦めて一般企業等へ就職してしまう人が多いからです(それでも諦めきれずに日本語教育の世界に戻ってくる人も多いのですが……)。
資格化をすることで、語学教育の専門家としての日本語教師という職業の社会的な認知やステイタスを上げ、もっと多くの人に日本語教師を目指してもらおうという狙いがあるわけです。
Q:資格化することで問題は起きないの?
先の文化庁の「国内の日本語教育の概要」を見ると、日本語教師の半分以上はボランティアの人たちだということが分かります。
地域の日本語教室で孤立しがちな外国人の居場所を作り、話し相手になり、日本語の勉強を見てあげているボランティアの方々の活動は、何物にも代えがたい尊いものです。今回の資格化によって、このボランティアの人たちのやる気や活動を削ぐようなことは決してあってはならないと思います。
語学教育の専門家は専門家として、ボランティアはボランティアとして、それぞれ大事な役割があります。お互いに協力し合って、日本全体の日本語教育を良くしていくことが大切だと思います。
Q:具体的にどうやって資格化の中身を決めていくの?
現在、この議論は文化庁の日本語教育小委員会で行われています。また小委員会の中に、日本語教育の判定に関するワーキンググループも作られており、どちらの議論も事前に申し込めば傍聴できます(私も傍聴しています)。
小委員会の議事録も公開されていますので、関心のある方はぜひご覧ください。
http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/nihongo/
また、11月には一般の人たちからの意見募集も行われる予定ですので、皆さんも奮ってご意見をお寄せください。
日本語教育を推進していくために日本語教師の資格がどうあるべきかは、皆で意見や知見を出し合うことで、より良い方向を目指していくべき課題であると思います。
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