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日本語教師プロファイル西隈俊哉さん―日本語教育は楽しい!と思ってほしい

今回の日本語教師プロファイルでは愛知県在住の「くまーる先生」こと西隈俊哉さんにお話を伺いました。西隈さんは大学時代から一貫して日本語教育の道を進み、現在は日本語を教えるだけでなく教師養成、著作、講演、そして一般社団法人「日本語フロンティア」代表等多方面でご活躍です。また日本語教育の枠を超え、一般向け学習書としてベストセラーとなった『2分で読解力ドリル』(学研プラス)の著者でもいらっしゃいます。最近ではYouTubeも始められたそうです。

大学院修了後、「流しの日本語教師」に?

――日本語教師になったきっかけについて教えて頂けますか。

元々日本語専攻ではあったのですが、日本語を教えることをちゃんと勉強しないとなぁと思ったのは大学でエクスチェンジパートナーをした経験が大きいです。相手はアメリカ人の留学生で、英語ができるようになりたいという思いもあってこのプログラムに参加したんですが、相手から日本語について怒涛の質問攻めを受けまして。全然答えられなかったんです。そこで日本語教育に本気で取り組まねばと思いました。エンジンがかかるのが遅かったので、そのまま大学院に進んで勉強を続けました。

――大学院修了後に日本語教師になられたわけですね。

はい。ただその頃は阪神淡路大震災やオウムのサリン事件の影響もあり、留学生が減っていた時期でした。それで、国内で教えることは諦め、大学院の当時の指導教授の紹介で韓国・大邱の短大で日本語を教えることになりました。韓国では日本語を教えながら文法や言語習得について研究をしたり発表をしたりしていました。

――日本に帰国されてからは?

それからはずっと大学、日本語学校、日本語教師養成講座などで非常勤講師として教えることを繰り返しています。

――一つの学校の専任という形で働いていないのには何か理由がありますか。

うーん。初めはどこかで専任として働ければいいかなと思っていたんですが、この状態を続けていくうちにこっちのほうが楽だなーと思うようになって。書籍や講演などの仕事もありますし、いろいろ欲張りな面があるので。カッコよく言うと固定されずにやりたいことをやりたいからということでしょうか

――ということは、今、話題のフリーランス教師のパイオニアということですね!特に男性では珍しいかと思いますが。

いやいや、自分では「流しの日本語教師」って言っているんですけど…。

人はどこかで見ている!

――ご著書の『日本語ロジカルトレーニング』(アルク)について教えてください。

これは、前身となる『大学・大学院留学生のためのやさしい論理的思考トレーニング』(アルク)という本がありまして。それを作ろうと思ったのは、ちょうど大学の留学生を教えていた時、作文を書かせると剽窃が結構あったんですね。それでまず自分で考える練習をしてほしかったこと。それから近隣の分野、国語教育だとか英語教育を見ると、ちょうどフィンランドの考える教育というのが注目されていて、それらと日本語教育を繋げられないか、フィンランド式の自分で情報を集めて考えるという方法を日本語教育に取り入れられないかと考えていました。それで自分でプリントを作って授業で実践していたんですが、これを何とか書籍化したいと思って、アルクに直談判に行ったんです。「話を聞いてください」って。

――素晴らしい行動力!

アルクの担当の方は、私の話を聞くと、しばらく目を閉じて考えていましたが、「やりましょう!」と言ってくださったんです。それで本にしていただけました。

その後、この本を改訂することになり、中に使われていた新聞記事や漫画などの著作権の問題もあったので、内容を進化させオリジナルで作ったのが『日本語ロジカルトレーニング 中級』です。ここで無理を言って、初級編も作らせてもらいました。こちらの方は全くの新作でした。

――それから日本語学習者向けではない『2分で読解力ドリル』(学研プラス)のシリーズを出されていますね。こちらは書店の学習書コーナーでも平積みされていて、アマゾンでも高評価と伺っていますが。どういった経緯で出されたのですか。

実は突然、学研の方からメールが来てびっくりしました。あちらでドリルのシリーズを出すためにいろいろ調べていたようで、書店でいつもなら教育コーナーに行くのだけれど、たまには語学コーナーでも見てみようと思って、たまたま私の本(『日本語ロジカルトレーニング』)を見つけてくださったと。それで編集協力ならとお受けしようと思っていたんですが、いやいや著者として書いてくださいと言われて、思考が停止してしまいました。もしかしたらドッキリなんじゃないかと思って。東京まで行って直接お会いして、その仕事を引き受けることになりました。

――そんな経緯だったんですね。

いやあ、人はどこかで見ているものなんだなぁと思いましたよ。これを書くのはなかなか大変でしたが、ちょうどコロナでステイホームの時期だったので、家にひきこもって書くことができました。

――この本、私も持っていますが、中上級であれば、日本語学習者にも使えますね。

「日本語フロンティア」と「おきらく日本語教育」

――個人としての活動だけでなく法人も作られていますが、これはどういった意図でしょうか。

企業で日本語を教える話、日本語を教えることの大事さを話してほしいという話が来るようになりました。だんだん依頼数も増え、依頼内容が大きくなるにつれて、個人で行うことに限界を感じました。そこで手伝ってくれる方を募り、法人化をすることにしたんです。そうして出来上がったのが「一般社団法人日本語フロンティア」です。現在は主に監理団体とタッグを組んで、配属後の技能実習生への日本語教育や、外国人を受け入れる企業へのサポートを行っています。コロナでちょっとストップしていたんですが、この春から入国が始まったので、ようやくまた動き出したところです。

――YouTubeでの動画配信「おきらく日本語教育」を拝見しました。3人の日本語教師の方のリラックスした、まさにお気楽に聞ける、でも興味深い内容でしたが。

これも、前から動画配信をしたいとずっと思っていて、以前から知り合いだった日本語教師の林さん、ノゾミさんに声をかけていたのですが、なかなかできていなくて。で、今年こそやろう!と1年の計画に入れて、なんとか始めました。ここでは教え方とかテクニックではなく、日本語教育、日本語教師の「在り方」、「すがた」について発信していきたいと思っています。例えば採用面接や、日本語学校での仕事って何?という内容を既に配信しました。そういうところをもっと知りたいと思っている人もいるんじゃないかと思って。

日本語教育を楽しいと思える人がいなければ、業界が危ない

――そのほかにこれからやっていきたいと思うことはありますか。

「協業」ですね。仲間と一緒に何かを作り上げていきたい。私自身、いろいろな方に助けていただいて今があると思っています。一人では何もすることができません。ですから多くの仲間、特に若い方、日本語教育がこれからという方も巻き込んで一つの仕事をやって行きたいと思います。法人を作ったのもそういった思いからです。

幸い今はSNSを通じて仲間を募ることができます。実際、仲間とともに作った『介護のN3(仮題)』(ココ出版)という本がこの夏に出版される予定になっていまして。ちょっと宣伝になりますが、主に介護現場で働く外国人介護職員の人向けのJLPT風の問題集です。介護現場のことをイメージしつつ練習問題を解くことができ、施設で働く日本人介護職員の方にも使いやすいものになるんじゃないかと思っています。

他にもいくつかコラボの企画を進行中です。

自分の日本語教師人生も第三コーナーを回った頃かなぁと思っていて、仲間とつながって一緒に仕事をして、日本語教育を盛り上げていきたいと思っているんです。そしてこの仕事が楽しい、やりたい、続けたいと思える人を増やさないと業界自体が危ないんじゃないかと心配しています。確かに日本語教師は収入面で厳しいところがありますが、それぞれの得意な分野を活かして日本語プラスαという働き方ができればいいんじゃないか。それを語ってるだけじゃなくて実践していこうと思います。

――これから日本語教師になりたい方、経験の浅い方に向けてメッセージを。

ぜひ、仲間を増やしてください。日本語教育のことだけでなく他のことも話せる仲間を。仲間がいれば情報が集まりやすくなります。教えていると必ず壁に当たることがあると思いますが、仲間がいることで助けられる。また一つの教え方に凝り固まるのではなく、いろんな教え方があることに気づけると思うんです。

▼セミナー情報

『日本語ロジカルトレーニング』の使い方・生かし方

ー目的・目標を見据え、それに合わせてロジトレを使ってみようー

講師:西隈俊哉

日時:2022年8月27日(土)10時‐12時

形式:ZOOM

参加費:無料

詳細・申込:https://alc20220827-japanese.peatix.com/

・西隈さんの活動 https://aboutme.style/nkuma2490

・「おきらく日本語教育」 https://www.youtube.com/channel/UCL0OInXN2heYv7GaTGjP3VA

・『介護のN3』(仮題)ココ出版

取材を終えて

くまーる先生のお話は本当に楽しくてインタビュー中、ずっと笑いっぱなしでした。その楽しいお話を実際に聞きたい方はぜひ、YouTubeの「おきらく日本語教育」をチェックしてみてください。また「日本語ロジカルトレーニング」に興味をお持ちの方は、西隈先生個人の講座もありますし、アルクでも使い方セミナーが予定されているようです。他にも様々な企画が進行中のようですので目が離せませんね。

取材・執筆:仲山淳子

流通業界で働いた後、日本語教師となって約30年。6年前よりフリーランス教師として活動。

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